縦書きビューワ Ver.0.9.5.11を公開しました(EPUB対応拡充)

先週、「パブー」が登場し、青空文庫以外の日本語EPUBコンテンツ流通に弾みがついてきました。
EPUBファイルを投稿・共有するサイトとしては「epubs.jp」の方が先発ですが、パブーはブログのような操作でPDFやEPUBを生成できる手軽さに強みがあり、今のところパブーの方に多くの作品が集まっているようです。
読みたい作品を探す立場から見ると、epubs.jpは、作品名が最後まで表示されない点が改善されると使いやすくなると思います。また、青空文庫の作品については現状では強いてEPUBビューワで読む必要はないので、自分ならそうしたサイトに求めるものは青空文庫以外の作品です。「青空文庫XHTMLEPUBに変換しただけのファイルを除く」という表示フィルタリング機能なんてどうでしょう。

電子書籍というと、AmazonやiBookstoreのような画一的な「売り場」が思い浮かびます。しかし、実店舗では松丸本舗の試みがあるように、仮想電子書店であっても、「ただ棚に並べてあるだけ」ではない付加価値を持って陳列してくれるところが複数あると、キュレータごとの個性を出せて面白くなるのではないでしょうか。自分の注目する目利きが企画したチョイスと、Webcat Plusのように機械処理でできるオンデマンドな部分とで補い合いつつ、読書の世界が広がれば面白いですね。

最終的な決済はAmazonやらiBookstoreやらに飛ばしてもいいから、本と出会うワクワク感を提供する場が登場してきて欲しい。それは、もしかすると個人でも街の小さな本屋さんでもできるのかもしれません。

パブーでEPUBを公開される方へ

「縦書きビューワ」は、XHTML 1.1のSimple rubyに対応しており、EPUBでルビ表示も可能です。
ただし、Simple rubyの利用はEPUBの仕様としては確定したものではないので、他のEPUBビューワでも表示できるとは限りません(ルビ非対応のブラウザで青空文庫XHTMLファイルを表示させたときのようになると思います)。また、EPUBの仕様としては、HTML5 rubyが採用される可能性もあります
こうした状況でXHTML Simple rubyマークアップを進めて良いものかは判断が必要ですが、よろしければお試しください。
今後、他のEPUBビューワでのルビ表示サポート状況についてまとめたものが公表されると思いますので、そちらを参考に。ちなみに、現在「縦書きビューワ」のアクティブインストールユーザは約1万名です。

XMDF+.book?

総務省文部科学省経済産業省による「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の報告が公表されました。「中間(交換)フォーマットの統一規格」を、既存のXMDF(シャープの規格)と.book(ボイジャーの規格)を統一する方向で考えているとのこと(断言はしていませんが、資料技6−1を見ると、そういうことでしょう)。中間(交換)フォーマットという話が出たときには、JepaXのようなものを想像していましたが、そうなりましたか……。
2010年は国会で制定された「国民読書年」だそうですが、「文字・活字文化の振興」って、そういうことなのかなあ。

主な変更点

EPUB形式ファイルの対応拡充

EPUB形式ファイルが複数のXHTMLファイルに分割されているとき、最終ページや先頭ページでタップ/フリック/音量調整ボタンを押下することで、次のファイルや前のファイルに移動できるようになりました。
また、HTMLタグの処理を拡充し、読みやすく表示できるXHTML/EPUBの対象が広がりました。

Ver.0.9.5.14 (20100810)

  • EPUB形式ファイルの対応拡充
    • チャプタ間の移動を大幅に高速化
  • 挿絵まわりの改善
    • 青空文庫形式テキストで、キャプションによっては画像タグが認識されなかった点を修正しました。

Ver.0.9.5.13 (20100706)

  • 挿絵まわりの改善
    • 文章の終わりが表示されたページに挿絵が収まりきらない場合の挙動を改善しました。
    • imgタグでalt=""になっていると挿絵が表示されなかった点を修正しました。

Ver.0.9.5.12 (20100701)

  • ディレクトリ名やZipファイルによっては挿絵が表示されなかった点を修正
    • ファイルパスに空白が含まれている場合やZipファイル内の深いディレクトリ階層に画像ファイルが格納されている場合に、画像の取得ができていなかった点を修正しました。

Ver.0.9.5.11 (20100629)

  • EPUB形式ファイルの対応拡充
    • チャプタ間の移動をシームレスに
    • 処理対応タグの拡充

スクリーンショット

パブーのEPUBの表示例
小形克宏さんが公開されている「電子書籍が普及した未来/ぼくの大好きな符号化文字」のEPUBファイルを表示したところ。


EPUB中の図版の表示例
(コミックや写真集など、図版がメインのものには向いていません。)


青空文庫の「暗黒星」(黒岩涙香訳)
明治の古典SFとして知っている人は知っている黒岩涙香訳の「暗黒星」が青空文庫に追加されたので、キャプチャ。
入力に用いられた底本(ペンギンカンパニー・平成5年)は未見だが、近デジに収蔵されているもの(朝報社・明治37年)と比べてみて驚いた。
近デジでは「通過して呉れかし」「立ち去れかし」となっている箇所が、青空文庫では「通過してくれよ」「立ち去ってくれ」となっている。
同様に「気が付かなんだ」が「気が付かなかった」となっていたり、下二段活用動詞が下一段活用にされていたりする箇所もあって、相違点がぞろぞろ(下二段活用のままで残っている箇所もあるのが不思議)。


誤入力とは思えないので、底本の編集者が現代語風に書き換えたのだろうが、旧字旧仮名を新字新仮名に改めましたというレベルを超えた改変で、それを「黒岩涙香」の名のみ冠して公開するのはまずい気が。
ファイルの終わりに「※底本は、一部、現代語風に書き換えられています。」といった注記を入れておいた方が良いのでは。