国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2014年12月)

2015年になったが、今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)公開範囲の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2014年12月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2014年12月1日から2014年12月31日までに変更のあったレコードは16,345件であった*1

昨年11月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは349,771件であったが、12月31日までの更新を適用したデータにおいては349,769件となっており、2件減少している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 11月末 12月末
インターネット公開(許諾) 6813 6813 0
インターネット公開(裁定) 著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開 裁定年月日: 2009/12/18 1 0 -1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 173 174 1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18; 2010/12/27 32 32 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 50452 50452 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 29 29 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 33850 33850 0
インターネット公開(保護期間満了) 258421 258419 -2
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 502984 502984 0
館内公開 63959 63961 +2
(未設定) 1 1*4 0
(総計) 916715 916715 0
(内、インターネット公開分合計) 349771 349769 -2

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報 (dcterms:rights)の変動 (11月末 → 12月末) 件数
インターネット公開(裁定) 著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開 裁定年月日: 2009/12/18 → インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 1 *5
インターネット公開(保護期間満了) → 館内公開 2 *6

裁定による資料の変動では、2014年9月に発生した表記揺れが解消している。

文化庁長官裁定による公開資料の利用期限

上で見たように、NDLデジコレには文化庁長官裁定による公開資料で「裁定年月日: 2009/12/18」の図書が174件ある*7

2014年8月の裁定制度の見直し前は、インターネット公開のための利用期間は5年が上限だったので、これらの図書の利用期間は満了していると思うのだが、ざっと確認したところ2015年1月現在も閲覧できるようだ(再裁定の申請を行って、申請中利用制度を利用しているのかもしれない)。

これらの図書のなかには、2015年1月現在となっては著作権保護期間が満了したもの*8もあるが、まだ保護期間が満了していないものもある*9

例えば、2014年夏の著作者情報 公開調査で「著者ID:YQ00063713、著者名:大月隆仗、著者別名:大月乗山;大月隆;鶴城生」とあった人物は、Web NDL Authoritiesのエントリでは没年の記載がないが*10、著作者情報公開調査では1971年没とされており、その著作は保護期間内である*11

調査結果には、「著作権者の連絡先が判明した件数: 1件」とあるが、どの著作者についてであるかの記載はない。同様に、「著作者の没年が判明した件数: 1件」とあるが、どの著作者であるかの記載はない。以前の公開調査の調査結果を見ても、具体的な結果は公表されておらず、どの著作者について裁定が不要となったのか知ることはできない。

よもや、多額の費用を掛けた著作者情報調査なので結果は自分たちだけで持っておきたいということでもないとは思うが、具体的な調査結果をなぜ公表しないのか不思議だ。

これまでのところ、裁定が行われると数か月後に官報で文化庁告示(著作権者不明の著作物の利用に関する裁定及び補償金の額を定める件)として裁定内容が掲載されている。

今回、どの程度、再裁定の申請を行ったのか、また、見直された裁定制度の下、利用期間をどの程度に設定して申請したのか等を知るには、今しばらく待たなければならないだろう。

資料タイトルの修正

毎月、図書資料の公開範囲変動を紹介しているが、タイトル*12の修正もある。その数は、2014年7月で33件、8月で150件、9月で66件、10月で38件、11月で114件、12月で42件であった。

タイトルの修正は、間違い探しのように細かい誤字の修正から、欧文タイトルの採り方の変更、処理の手違いによると思われるものまで、さまざまである。

後者の例としては、9月に『金松百人一首』が『正続文章軌範纂語字類 : 4巻』に修正されたケースが挙げられる。これは、請求記号W731-2の『正続文章軌範纂語字類 : 4巻』を、請求記号W73-12の『金松百人一首』と取り違えてしまったために発生した間違いであろう。

また、タイトルに〓(ゲタ)が含まれるケースは、7月の記事の時点では以下の通り4件であったが、9月に『〓田地方の古代文化 : 千葉県東葛飾郡』へとタイトル変更された資料があり、現在では5件となっている。

dc:titleに限定すれば4件。『〓応和尚と茂吉』(リュウ)、『新造〓奇談』(「ツリフネ」なのか「クロフネ」なのかという例のアレ)、『法華義〓』(ショ)、『』(アラ)。

http://d.hatena.ne.jp/npn2sc1815j/20140722/1406032207

『〓田地方の古代文化 : 千葉県東葛飾郡』のゲタは、「野」の異体字だろうが、謄写版資料ということで、いったいどんな字になっているのか気になるところ、図書館送信資料なので今すぐには分からない。

12月にタイトルが修正された『府県管轄郡区名一覧』は、11月にTwitterで指摘があったもの。

Twitterでの指摘でも修正してもらえるのなら、以前の記事で取り上げ、今も修正されていない以下の2件についてツイートしてみようか。

調べている過程で、NDLサーチのメタデータにはタイトルが未登録な資料(2件)があることに気づいた。


長崎料理史』の書誌情報、および『本朝陶器攷証 : 6巻. 六』の書誌情報には、資料タイトルが欠けている(7月18日現在)。それぞれ、国デコのページではタイトルが表示されるので、いずれNDLサーチのメタデータにも反映されるのだろう。

http://d.hatena.ne.jp/npn2sc1815j/20140718/1405695315

近デジ『大正新脩大蔵経』等公開停止問題の結論から1年

国立国会図書館により、近デジ『大正新脩大蔵経』等公開停止問題(以下、近デジ大蔵経問題)の結論が公表(2014年1月7日)されてから、もうすぐ1年が経とうとしている。

しかし、以前の記事でも触れたように、「インターネット提供を再開する」とされた『大正新脩大蔵経』は、未だインターネット提供が再開されていないし、その後の検討状況も公けにされていない。

そしてまた、2014年9月12日付けで国立国会図書館からアナウンスがあった次の資料も、インターネット公開は再開されていない。

観世流謡本(大成版)166点のインターネット公開を当面の間停止します。その間、図書館向けデジタル化資料送信サービスでご利用になれます。

http://dl.ndl.go.jp/information?targetInformationDate=2014-9

こちらは、なぜ「インターネット公開を当面の間停止」に至ったのかについての説明もない。

近デジ大蔵経問題の報告書「インターネット提供に対する出版社の申出への対応について」において、国立国会図書館は「当館として説明責任を果たすことが求められる」と記している。その説明責任は十分に果たされているだろうか。

今年の近デジ新規公開資料は

今年は近デジでどれくらい新規公開があるだろうか。

2015年1月1日をもってパブリックドメイン入りした資料や、著作権調査の結果インターネット公開が可能となった資料の他に、新規にデジタル化された資料の公開について考えてみる。

デジタル化完了からシステムへの登録には時間がかかることから、前年度(2013年度)の「デジタル化作業対象資料一覧(平成26年1月29日現在)」を見てみる。すると、次の資料が2014年3月末までを予定としてデジタル化されていたことが分かる。

資料区分 対象冊数 利用停止期間(予定)
和図書(戦前・戦後期刊行)(大型本等) 約1,700冊 平成25年10月末〜平成26年3月末
古典籍 約1,300冊 平成25年12月中旬〜平成26年3月末

これらは、「競争入札に係る情報の公表(物品役務等)」に記載のある、以下の役務に相当するデジタル化であろう*13

物品役務等の名称及び数量 契約を締結した日 契約の相手方の商号又は名称及び住所 契約金額 備考
戦前・戦後期刊行図書(大型本等)の原資料からの電子化 1式 平成25年10月16日 株式会社紀伊國屋書店
東京都目黒区下目黒3-7-10
97.20円 単価契約 36,741,600円
古典籍資料(貴重書等)の原資料からの電子化 1式 平成25年12月20日 株式会社インフォマージュ
東京都中央区勝どき2-18-1
198円等2件 単価契約 8,246,175円

和図書(戦前・戦後期刊行)(大型本等)については、作業対象資料一覧が提供されていないので、このとき具体的にどの資料がデジタル化され、それが既にデジタル化資料として提供されているのか否かは分からない。

一方、古典籍については、作業対象資料一覧(xlsファイル)が提供されており、既にデジタル化資料として提供されているか確かめることができる。

作業対象資料一覧のNo.1「請求記号が208で始まるものすべて」については、NDL-OPACでは788件該当したため、デジタル化資料として提供されているかの確認は省略した。

作業対象資料一覧のNo.2からNo.45については、『來禽圖彙』、『新聞雜誌 第156号』、『東洋自由新聞』、『大槌代官所書留』(上、下)、『三陸大海嘯岩手縣沿岸見聞誌一班』、『大海嘯各村別見取繪圖』、『岩手縣沿岸大海嘯部落見取繪圖』、『巖手沿岸古地名考』、『西洋衣食住』、『略画式』の10タイトル、11件が既にインターネット公開されていた(2014年9月)*14

このように既にデジタル化が完了した資料で、まだシステムに登録されていないものも存在する。今後、これらが登録され、公開されていくものと思われる。

古典籍資料のデジタル化実施割合

国立国会図書館年報 平成25年度』p.33によれば、古典籍資料室所管資料約30万冊のうち約9万冊のデジタル化が完了し(デジタル化実施割合は約1/3)、うち約7万冊はインターネット公開しているそうだ。

NDLデジコレのメタデータのうち、資料種別が「和古書」であるものについて、資料数内訳を確認すると、次のように2014年12月末時点で総計85,570件、インターネット公開分は67,413件と分かる。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 7月末 8月末 9月末 10月末 11月末 12月末
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定 年月日: 2010/12/27 13 13 13 13 13 13*15
インターネット公開(保護期間満了) 67387 67388*16 67399*17 67399 67399 67400*18
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 18158 18157 18157 18157 18157 18157
(総計) 85558 85558 85569 85569 85569 85570
(内、インターネット公開分合計) 67400 67401 67412 67412 67412 67413
明治・大正・昭和前期刊行図書のデジタル化実施割合

一方、国立国会図書館の方の解説によれば、2012年3月時点で、「年代別にみた場合,和図書については,明治期刊行図書,大正期刊行図書,昭和前期刊行図書のデジタル化をほぼ終え」ているそうだ。

しかし、これは「ほぼ」であって「すべて」ではないようだ。実際、明治元年の図書でNDL-OPACではヒットするがデジタル化されていないものもある(『草茅危言』など)。

こうした未デジタル化図書は、国立国会図書館の「「蔵書」の構築に関する指針」に挙げられている「明治期刊行図書(『国立国会図書館所蔵明治期刊行図書目録』第1期及び同第2期に採録されている図書をいう。以下同じ)」「全168,675冊(約3400万ページの分量に相当する)」に含まれるものなのだろうか。

含まれているがデジタル化されていない(すなわち、明治期刊行図書全168,675冊のデジタル化完了率は100%ではない)のか、明治期刊行図書に含まれず(その後受け入れた)ものでデジタル化されていないのか、どちらであるか分からない。

このような、明治期に刊行された図書(上記の「明治期刊行図書」に限らず)で、現在、国立国会図書館が所蔵しているもののうち、デジタル化されていないものがどの程度あるのか調べるのは意外に難しい。OAI-PMHで、NDL-OPACをデータプロバイダとして指定して全書誌情報を取得すれば可能だが、対象レコード数が膨大すぎて、相手方サーバへの負荷を考えると、さすがに気が引ける。


近デジファンとしては、近デジに期待するのは主に明治・大正・昭和前期刊行図書なので(個人的には古典籍も)、まだ1/3しかデジタル化されていない古典籍、「デジタル化をほぼ終え」たとのことだがデジタル化されていないものもある明治・大正・昭和前期刊行図書のデジタル化と、理由の良く分からない「国立国会図書館/図書館送信参加館内公開」状態からインターネット公開への変更が進むことを楽しみにしている。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:帝国図書館雑誌新聞目録』、注記に「図書館送信テスト」とあり。

*5:大阪の将来

*6:博物調査に関する集合著作物が1件。「著者」(dc:creator)項目は団体名義で採られているが、内容の一部に著作権保護期間が満了していない生物学者(1974年没)によるものを含んでいた。残りの1件は、相撲に関する団体名義の図書であるが、目次を見る限り、表紙、題字、序文に挙がっている個人の著作権保護期間はいずれも満了しているようで、館内公開に変更された理由は不明。もっとも、内田さんの記事にあるように、あるページに掲載されている発言の主が著作権保護期間中であるという粒度で公開範囲を判断しているのならば、書誌情報や目次からでは到底判断はできない。

*7:加えて、「裁定年月日: 2009/12/18; 2010/12/27」の図書が32件ある。

*8:著者が1964年没である『野葡萄 : 独詩』や『通俗福音物語』など。

*9:著者が1976年没である『那須国造碑考』など。

*10:青空文庫の富田さんも、生前、近デジで収集した没年情報をWeb NDL Authoritiesに反映して欲しいと願っていらしたが、3年経った今も実現していない(ツイート)。

*11:Web NDL Authoritiesには、大月隆仗(本名:大月隆)と大月隆(大月乗山、号:鶴城生、職業・経歴:文学同志会代表)の2エントリがあり、2014年夏の著作者情報公開調査には、「著者ID:YQ00063713、著者名:大月隆仗、著者別名:大月乗山;大月隆;鶴城生」と「著者ID:YC02022020、著者名:大月隆【版元】」の2エントリがあった。公開調査の著者別名情報に混乱があるように思える。

*12:dc:title

*13:国立国会図書館年報 平成25年度』p.223によれば、平成25年度に行った電子化のうち、図書は2,894点、427,879コマとのことである。落札者等の公示によれば、「戦前・戦後期刊行図書(大型本等)の原資料からの電子化」は36万コマ(予定)だったとのこと。

*14:このうち、『三陸大海嘯岩手縣沿岸見聞誌一班』、『大海嘯各村別見取繪圖』、『岩手縣沿岸大海嘯部落見取繪圖』、『巖手沿岸古地名考』については、以前の記事の「新規インターネット公開資料」で取り上げたもの。

*15:化学入門 10巻』の12件と『静軒詩鈔』の1件。

*16:稿本日本帝國美術略史』が「国立国会図書館/図書館送信参加館内公開」から「インターネット公開(保護期間満了)」に変更されたことによる増加(1件)。

*17:上で述べた10タイトルが新規公開されたことによる増加(11件)。

*18:本草綱目草稿. 小野蘭山寛政七年書簡下書』が新規公開されたことによる増加(1件)。