国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年3月)

この月刊シリーズ記事も今回で第10号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2015年3月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2015年3月1日から2015年3月31日までに変更のあったレコードは42,673件であった*1

2月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは349,820件であったが、3月31日までの更新を適用したデータにおいては349,832件となっており、12件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 2月末 3月末
インターネット公開(許諾) 6995 6995 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 58 58 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18; 2010/12/27 10 10 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 48521 48521 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 28 28 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 32493 32493 0
インターネット公開(保護期間満了) 261714 261727 +13
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 506789 506788 -1
館内公開 60113 62990 +2877
info:ndljp/pid/1681530 1 0*4 -1
(総計) 916722 919610 +2888
(内、インターネット公開分合計) 349820 349832 +12

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報 (dcterms:rights)の変動 (2月末 → 3月末) 件数
インターネット公開(保護期間満了) → 館内公開 24 *5
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 1 *6
館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 32 *7
info:ndljp/pid/1681530 → インターネット公開(保護期間満了) 1 *8
新規 インターネット公開(保護期間満了) 3 *9
新規 館内公開 2885 (後述)
パブリックドメイン図書の増加

2月の公開範囲変更に引き続き、3月もパブリックドメイン図書の増加が見られた。

館内公開から保護期間満了に変更された図書の中には、著作者が1964年に没し、2015年にパブリックドメイン入りした次の図書が含まれている。

このうち、帰山教正『映画の性的魅惑』は、2006年に復刻版が出版されている資料で、映画好きには嬉しい公開かもしれない。

その他、公開範囲変更ではなく純粋に新規にインターネット公開(保護期間満了)となった図書が3件あった。

そのうちの1件、『三遊亭新作滑稽噺』は、デジタル化日が2015-02-20となっており、デジタル化されてから異例の速さで公開されている。三遊亭というと、3代目三遊亭金馬の著作物が2015年にパブリックドメイン入りしたことが記憶に新しいが、この図書については関係ないようだ*10。ところで、この書籍の序文を書いている「夢幻散士」は、『絵本朝鮮軍記』や黒岩涙香美人の獄』の序にも名前が見えるが、誰の筆名なのだろうか。

また、新規にインターネット公開された残りの2件は、後述のように、ラジオ脚本資料であった。

保護期間満了から館内公開へ

インターネット公開(保護期間満了)から館内公開に変更された図書24件のうち多くは、いつものように集合著作物であったが、その他に田中逸平による『白雲遊記 : イスラム巡礼』が含まれていた。これは2004年に復刻版が出版されているようだが、その点と館内公開への変更は関係があるのだろうか。と、つい疑問に思ってしまったが、この書籍は別のデジタルアーカイブで現在も閲覧でき、アラビア語序文をクルバン・ガリエフ、中国語序文を唐柯三が寄せていることが分かる。クルバン・ガリエフ(=クルバンガリー)は1972年没、唐柯三は1950年没なので、クルバン・ガリエフの著作権保護期間内であるため*11館内公開に変更されたのであろう。

また、先月に引き続き今月もアコーディオン楽譜1件が、保護期間満了から館内公開に変更された(先月館内公開に変更されたものと同じ出版者によるもの)。こちらは著作権保護期間内であるジャズ曲のアコーディオン楽譜が含まれていたための公開範囲変更と思われる。

資料タイトルの修正

細かい点だが、昨年7月の記事から折に触れて指摘していた、メタデータにタイトルが未登録な資料2件*12について、ようやくタイトルが設定され、名無し図書の存在が解消された。

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 2月末 3月末
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 13 13 0
インターネット公開(保護期間満了) 67410 68645 +1235
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17700 17686 -14
館内公開 447 447 0
(総計) 85570 86791 +1221
(内、インターネット公開分合計) 67423 68658 +1235

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報 (dcterms:rights)の変動 (2月末 → 3月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 14 *13
新規 インターネット公開(保護期間満了) 1221 (後述)

図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)に変更された14件は、NDLデジコレの詳細検索条件(和古書/漢籍)では「漢籍」に該当する図書であった。

1月に保護期間満了から館内公開に変更された452件は、2月に保護期間満了に戻った資料が5件あったものの、3月には残念ながら変化がなかった。

2015年3月のNDLデジコレ追加資料

3月17日、国立国会図書館ウェブサイトにおいて以下の資料追加がアナウンスされた。

国立国会図書館は、2015年3月10日及び17日に以下の約17,500点を「国立国会図書館デジタルコレクション」に追加しました。

コレクション 追加数 公開
日本占領関係資料 連合国最高司令官総司令部GHQ/SCAP文書 約600点 インターネット(一部館内限定)
米国戦略爆撃調査団(USSBS)文書 約6,800点 インターネット(一部館内限定)
極東軍文書 約500点 館内限定
日本軍戦史 約200点 インターネット
プランゲ文庫 図書 約800点 館内限定
雑誌 約5,300点
(約700タイトル)
館内限定
図書 約2,100点 館内限定
古典籍資料 約1,200点 インターネット
脚本 35点 館内限定(一部インターネット)

http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2014/1209490_1829.html

これに先立ち、3月10日にはNDLデジコレの「お知らせ」において、図書約2,100点および古典籍資料(貴重書等)約1,200点が追加された旨、3月17日には上記の表の資料に加え、雑誌「海と空 = Sea and sky」約500点を公開した旨*14、アナウンスがあった。

この記事の前半で見たように、3月の書誌メタデータ変動からは、図書と古典籍資料について以下の新規追加件数が見られる。

  • 図書
    • 新規 インターネット公開(保護期間満了) 3件
    • 新規 館内公開 2,885件
  • 古典籍資料
    • 新規 インターネット公開(保護期間満了) 1,221件

このうち、図書については、新規インターネット公開(保護期間満了)の3件には、3月17日に新たに加わった脚本コレクションのインターネット公開分2件(ラジオ脚本『隧道』、『アイスクリーム』)が含まれている。

また、新規館内公開の2,885件は、3月10日に新規追加された2,095件に加え、3月17日に加わった脚本コレクションの館内公開分33件と、同じく3月17日に追加されたプランゲ文庫の図書757件からなっている。

古典籍資料については、新規インターネット公開(保護期間満了)の1,221件は、3月10日に新規追加された1,221件である。

新規公開資料の公式リスト未提供と非公式リスト提供

今回の資料追加では、恒例の新規公開資料リストの提供がなく、追加資料点数は示されたものの、具体的な資料名は公式には示されなかった。

古典籍資料については、以前の記事で予測していたように、2013年度のデジタル化作業対象資料一覧(xlsファイル)から追加資料が推測できた。

3月10日に追加がアナウンスされた資料は、その後、3月16日付けで国立国会図書館サーチ(以下、NDLサーチ)に書誌情報が追加され*15APIで取得した書誌情報に基づいて非公式ながら新規公開資料リストを作成、共有することができた。

新規公開の古典籍資料

今回追加された古典籍資料はすべてインターネット上で閲覧できるので、便利のため、新規公開資料1,221件の一覧(tsvファイル)をここに改めて共有する。

新規公開された古典籍資料には、上で引用したツイートでも取り上げている『悉曇字記』や、別ツイート*16で取り上げた興味深い資料が含まれている。

例えば、曲亭馬琴ら好事家が「耽奇会」に持ち寄った珍品のカタログ『耽奇漫録』は、カラフルな図が楽しい。

国立国会図書館で貴重書に指定されている古活字版4点、『太平記 40巻』、『[源氏物語] 54巻』(伝嵯峨本)、『増續會通韻府群玉 38卷』、『雜問答』については、「国立国会図書館月報 630号(2013年9月)」の「新たな貴重書のご紹介」に詳しい資料紹介がある。

また、同記事で紹介されている準貴重書の絵本2点のうち、北尾政美画『來禽圖彙』は先行して2014年9月に公開されていたが、喜多川歌麿画『絵本百千鳥』は今回公開されている。

今後、公開される古典籍資料としては、2014年度のデジタル化分(約1,200冊予定)が2015年度末までに追加されるのではないだろうか。作業対象資料一覧(xlsxファイル)を見ると、「国立国会図書館月報 642号(2014年9月)」の「新たな貴重書のご紹介」で取り上げられている貴重書『妙法蓮華經 8卷』(WA3-36)、『妙法蓮華經 8卷』(WA3-37)、『[本朝古今銘尽]』(WA7-282)、『栄花物語 40巻』(WA7-283)、『仙傳抄』(WA7-284)、準貴重書『万年帳 3巻』(WB17-3)、『[春の]色』(WB36-7)などが作業対象に挙げられている。鬼が笑うが公開を楽しみにしよう。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:Saito's idiomological English-Japanese dictionary = 熟語本位英和中辭典』であったが、3月9日付けで「インターネット公開(保護期間満了)」に訂正された。訂正内容は、先月の記事で推測した通りであった。

*5:市史、校友会雑誌、講座集、短歌集、図鑑、画集などの集合著作物や、歌集であって歌人著作権保護期間は満了しているが巻末記の著者の保護期間が満了していなかったもの、文章の書き方についての図書で文例として著作権保護期間が満了していない作家の文章が使われていたものなど。その他、田中逸平の『白雲遊記 : イスラム巡礼』やアコーディオン楽譜1件など。

*6:斗南存稿

*7:2015年にパブリックドメイン入りした図書31件(本文参照)および峯玄光『禅学観

*8:Saito's idiomological English-Japanese dictionary = 熟語本位英和中辭典

*9:三遊亭新作滑稽噺』、『隧道』、『アイスクリーム

*10:三遊亭圓遊、橘家橘之助、三遊亭金朝、三遊亭圓右三遊亭圓馬三遊亭圓左、三遊亭圓三、三遊亭圓生三遊亭圓朝の口演を収めている。

*11:出版当時(1925年)、クルバン・ガリエフは日本に亡命していたようなので、日本の著作権法が適用されると考えるならばである。

*12:長崎料理史』、『本朝陶器攷証 : 6巻 六

*13:黄忠端公遺稿』([1][2])、『春在堂全書稿本』([1][2][3][4])、『聖謨治河全書24卷』([1][2][3][4][5][6][7][8]

*14:NDLデジコレでインターネット公開されている雑誌は貴重で、「Official gazette」(英文官報)を除けば、権利者の協力によって公開されているものに限られている。従来は、2011年11月に公開された「醫學中央雜誌」(医学中央雑誌刊行会)と、2014年8月に公開された「科学技術文献速報」(科学技術振興機構)の2種類であったが、今回、「海と空 = Sea and sky」(海洋気象学会)が加わって3種類となった。

*15:NDLサーチ「当館作成書誌の利用」によれば、NDLサーチのAPIで取得できる書誌情報の更新頻度は原則として週1回であり、NDLデジコレで毎週金曜日までに更新されたデータが翌週の火曜日〜水曜日にNDLサーチへ反映される。

*16:『耽奇漫録』について古活字版4点について小野家旧蔵「[小野蘭山書]」について十偏舎一九『初登山手習方帖』について