国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年4月)

この月刊シリーズ記事も今回で第11号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2015年4月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2015年4月1日から2015年4月30日までに変更のあったレコードは43,748件であった*1

3月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは349,832件であったが、4月30日までの更新を適用したデータにおいては349,905件となっており、73件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 3月末 4月末
インターネット公開(許諾) 6995 6995 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 58 0 -58
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18; 2010/12/27 10 1 -9
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 48521 48522 +1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 28 28 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2015/02/09 0 8 +8
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 32493 32485 -8
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 0 53 +53
インターネット公開(保護期間満了) 261727 261813 +86
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 506788 506780 -8
館内公開 62990 62168 -822
(総計) 919610 918853 -757*4
(内、インターネット公開分合計) 349832 349905 +73

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。












4月末総計
許諾裁定
2010/12/27
裁定
2010/12/27;
2015/02/09
裁定
2012/03/01
裁定
2015/02/09
保護
期間
満了
図書館
送信
館内
公開
3月末許諾13*513
裁定
2009/12/18
5*653*758
裁定
2009/12/18;
2010/12/27
1*88*99
裁定
2012/03/01
6*103*119
保護期間
満了
2*122
図書館
送信
7*132*149
館内公開2*151*1681*171*1885
総計131815388120185

この表は、例えば、3月末時点では館内公開であった図書で、4月末にはインターネット公開(保護期間満了)になっているものが81件あると読んでほしい。

この表の他、3月17日に追加公開がアナウンスされたプランゲ文庫の資料757件(全て館内公開)について、4月6日付けで資料種別が「静止画資料」「図書」から「静止画資料」に変更され、ここでの集計対象に含まれなくなったことにより、「図書」としての館内公開の件数が減少している(20-85-757 = -822件)。

パブリックドメイン図書の増加

3月の公開範囲変更に引き続き、4月もパブリックドメイン図書の増加が見られた。

館内公開から保護期間満了に変更された図書は、著作者が1964年に没し、2015年にパブリックドメイン入りした次の図書であった。

小説家のみならず、軍人や実業家、政治家、学者などバラエティに富んだ顔ぶれになっている。野村駐米大使の名前なども。

また、上記の著作権保護期間が満了した著作者の著作物を含む『結局は人間の問題』(石山賢吉 序文)、『支那に在りて思ふ』(小杉放庵 寄せ書き・扉絵、辰野隆 跋)*20の2件が、館内公開から許諾に変更されている。

図書館送信から保護期間満了に変更された図書については、1964年没の著作者とは関係しないようだ*21

資料集・写真集『幕末、明治、大正回顧八十年史(第1輯)』は、カラースキャンで見やすく、眺めていて楽しめるだろう(一部グロい写真(刑場の写真)もあるので注意)。

文化庁長官裁定による公開資料の利用期限

以前の記事で、文化庁長官裁定による利用期間が満了した「裁定年月日: 2009/12/18」の図書について取り上げた。

官報にはまだ掲載されていないが、文化庁過去の裁定実績(平成27年3月4日現在)」には以下の記載がある。3月5日の官報(号外第47号)にNo.200から205(裁定年月日H26.12.19の分)の告示*22が掲載されていたので、今回の裁定(No.206)の告示が官報に掲載され、裁定内容の詳細を知ることができるのは今しばらく先になるだろう。

(追記:4月8日の官報(号外第81号)にNo.210と211(裁定年月日H27.3.4の分)の告示*23が掲載されていたことを見落としていた。No.206から209(裁定年月日H27.2.9の分)が飛ばされてしまったが、後日、告示されるのだろうか。)

申請
年月日
裁定
年月日
著作物等の題号等 著作物等
の種類
著作者等
の氏名
利用方法
206 H26.12.12 H27.2.9 「山守」等60件 言語 中島清等10名 国立国会図書館所蔵図書の「国立国会図書館デジタルコレクション」事業でのインターネット配信

http://www.bunka.go.jp/Chosakuken/c-l/results.html

著作権に関する情報」変動の内訳を見ると、裁定(裁定年月日: 2009/12/18を含むもの)から裁定(裁定年月日: 2015/02/09を含むもの)への更新は61件、裁定から許諾への変更は11件、裁定から館内公開への変更は3件あるが、裁定が不要となった(保護期間満了と明らかになった)ものはないようだ。

上記の裁定実績に挙げられている「『山守』等60件」については、裁定(裁定年月日: 2009/12/18を含むもの)から裁定(裁定年月日: 2015/02/09を含むもの)への更新61件のうち『文章軌範釈 : 普通用文』(正・続)2冊を1件として数えた件数と一致する。「中島清等10名」は、おそらく、大月隆、大月隆仗、岡本米蔵、佐川春水、長井氏晸、中島清、西村才介、西村文則、森永規六、脇田登摩の10名であろう。

裁定から許諾へ変更された11件については、大島宝水、栗原基、車田秋次、山内金三郎(山内神斧)によるもの。

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 3月末 4月末
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 13 13 0
インターネット公開(保護期間満了) 68645 68652 +7
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17686 17679 -7
館内公開 447 447 0
(総計) 86791 86791 0
(内、インターネット公開分合計) 68658 68665 +7

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報 (dcterms:rights)の変動 (3月末 → 4月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 7 *24

5月1日に掲載された「国立国会図書館月報 649号(2015年4/5月)」の「今月の一冊 国立国会図書館の蔵書から」で紹介されている『元朝秘史』などがインターネットで閲覧できるようになっている。また、同記事で紹介されている那珂通世訳注『成吉思汗実録*25白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』も以前からインターネット公開されており、あわせて読むことができる。

1月に保護期間満了から館内公開に変更された452件は、2月に保護期間満了に戻った資料が5件あったものの、3月に続いて4月にも変化はなかった。

「大規模デジタル化再び?」その後

以前の記事で取り上げた「大規模デジタル化再び?」のその後について落ち穂拾い。

1月27日、官報および国立国会図書館サイトに、「国内刊行図書の原資料からの電子化1式 約1,115万コマ(予定);国内刊行雑誌の原資料からの電子化1式 約93万コマ(予定)」の意見招請に関する公示が掲載された。

3月20日官報および国立国会図書館サイト(その1その2)に、「国内刊行図書及び国内刊行雑誌の原資料からの電子化一式 約533万コマ及び約30万コマ(予定)」「国内刊行図書の原資料からの電子化一式 約407万コマ(予定)」の入札公告が掲載された。


次のとおり一般競争入札に付します。

平成27年3月20日

支出負担行為担当官

国立国会図書館総務部会計課長 藤本 和彦

  1. 1 調達内容
    1. (2) 購入等件名及び数量
      1. ア) 国内刊行図書及び国内刊行雑誌の原資料からの電子化一式 約533万コマ及び約30万コマ(予定)
      2. イ) 国内刊行図書の原資料からの電子化一式 約407万コマ(予定)

http://www.ndl.go.jp/jp/supply/nyuusatsu/ippan/1209704_817.html

意見招請の段階と比べるとやや規模は縮小しているものの、図書約940万コマ、雑誌約30万コマを予定する大規模なデジタル化になりそうだ。

以前の記事では、意見招請に関して「5〜10億円規模になるだろうか」と予想したが、2月3日に成立した平成26年補正予算第1号で国立国会図書館業務庁費に約10億円の予算が付いており*26、雑役務費のうち「所蔵資料のデジタルアーカイブ整備経費」(1,008,317千円)が繰越明許費として繰り越しされている*27

この費用は、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策の一環として災害・危機等への対応を図るため行う所蔵資料のデジタルアーカイブ整備」*28、「災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ整備費」*29と説明されている*30

平成26年補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)等の説明」では、以下の項目に記載されている。

  1. 第2 一般会計
    1. (A)歳出
      1. 3 災害・危機等への対応関連経費
        1. (1) 災害復旧・災害対応の強化
          1. ② 自然災害リスクが高い地域・施設等における緊急防災対応等関係経費
            1. (チ) その他
              1. 災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ整備費 1,008(単位 百万円)

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2014/sy270126/sy270126h.pdf

項目を見ると、ちょっと無理矢理感があるというか*31、防災対策推進東日本大震災アーカイブシステム業務庁費は東日本大震災復興特別会計の方で別にあるわけで、それとは別に「災害・危機等への対応を図るため」「災害対応力強化のため」というからには、どのような内容になるのだろうか。1968年より後に受け入れた図書で災害対策関係のものなどのデジタル化に着手するのであろうか。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:プランゲ文庫の資料757件について、資料種別が「静止画資料」「図書」から「静止画資料」に変更され、「図書」の集計対象に含まれなくなったことによる減少。

*5:根岸佶『華僑襍記』、『華僑襍記』、『華僑襍記』、『支那ギルドの研究』、『支那ギルドの研究』、『支那特別関税会議の研究』、『清国商業綜覧』(第1巻第2巻第3巻第4巻第5巻)、大村欣一『支那之実相』、『山東及膠州湾

*6:車田秋次『聖潔のバプテスマ』、山内金三郎『大津絵集』、栗原基『人間修養論』、『英国文学史』、大島宝水『現代都々逸集

*7:銀行盗賊』、『御苦難之黙想』、『山守』、『プッシング講義』、『修学行商日記』、『商工界の七十日』、『紐育市内外の地所』、『英語読本界名所案内』、『英文法実習書』、『正則英作文』、『正則英作文』、『和文英訳と書取』、『英文和訳問題選』、『湖上の怪物』、『旅の恥 : クリスマス奇譚』、『解剖せる台湾』、『軍隊の側面』、『橋本左内』、『高等記事論説文』、『青年の将来』、『家の宝』、『臥竜梅』、『廻国雑記』、『勤学日記』、『自然界の審美』、『実業の宝』、『人間学』、『人生の悔悟』、『人生の気力』、『人生の初旅』、『人生の情事』、『人生の審美』、『人生の裏面』、『人物の裏面』、『美妙』、『文学の審美』、『文学の調和』、『旅の佳人』、『拳骨百話』、『古哲格言』、『吾家の憲法』、『吾家の憲法』、『人生の片影』、『成功百話』、『禅画百譚』、『文章軌範釈 : 普通用文』()、『兵車行 : 兵卒の見たる日露戦争』、『大阪の将来』、『人生と山水』、『入学試験英語問題詳解』(明治40年度明治41年度)、『解析幾何学問題解』)

*8:滑稽不如婦

*9:そくらてす : 純美文学哲学の鼻祖』、『道と人』、『新体軍人書翰』、『讃岐めぐり : 一名・琴平道中記』、『女傑俳諧伝』、『琴平道中記』、『風采と審美学』、『理想的学生

*10:大島宝水『新作落語十八番』、『江戸紫』、『向三軒両隣』、『諸国俚謡傑作集』、『腰弁長屋 : 滑稽小説』、山内神斧『古大津絵集 : 五月庵蔵版

*11:岡野一朗『支那経済辞典』、『支那経済辞典』、山本修平『支那に於ける鉄道利権と列強の政策

*12:詩集や複数の寄稿者による講座の集合著作物。

*13:軍事法令判例類集 : 加除自在』、『幕末、明治、大正回顧八十年史(第1輯)』、『大日本鉄道発車之図』、『慶尚道全羅道旅行記事並農商況調査録』、『売茶翁茶器図』、『社会科概論』、『陸軍軍法会議法講義

*14:星をたべた馬』、『中国社会に於ける指導層 : 中国耆老紳士の研究

*15:支那に在りて思ふ』、『結局は人間の問題

*16:教育社会の裏を覗く

*17:世界資本主義の安定より危機へ』、『今年の株式界』、『国体明徴と宗教』、『岩波講座地理学』、『カメラと映写機の作り方』、『シネ・ハンドブツク』、『映写技術教科書』、『戦へる姉』、『美し魚 : 生産小説集』、『財団法人啓明会講演集』、『缶詰及製缶業から工作機械製造業に』、『缶詰輸出年額四億円達成十ケ年計画の提唱』、『岩波講座日本歴史』、『問題を掴みて』、『現代日本小説全集』、『海兵』、『大番頭小番頭』、『歯科治療学』、『狐火記』、『非常時に於ける国民の覚悟』、『時局国民読本』、『皇室の御敬神』、『聖上陛下御日常の一端』、『聖上陛下御日常の一端に関する謹話』、『聖上陛下御日常の御一端に就いて』、『山居』、『草画随筆 : 満鮮と支那』、『日本の十和田湖と青森の山水』、『琵琶湖をめぐる』、『』、『北支綿業事情報告』、『農村貧窮論 : 一名・百姓はなぜ貧乏するか?』、『国史講座』、『忠孝論』、『提要日出る国』、『日本政体史論』、『日本文学大系』、『ヨハネ黙示録講解』、『支那文学概説』、『日本の経済的実力』、『戦費怖るゝに足らず : 日清日露両戦役の経験』、『日本産業の再編成』、『こんな事では鉄価は下らぬ : 日鉄当局者の猛省を促す』、『株式会社経営分析』、『紀行満洲・台湾・海南島』、『金持に学ぶ』、『決算報告の見方』、『創刊苦心』、『利益が多くて配当の少い独逸の会社』、『社訓』、『勝利の生産』、『女子新動物学』、『工業初等英語』、『工業初等数学』、『印象と追憶』、『地理学講座』、『情話新集』、『神風連』、『時局下の苹果栽培特に袋の問題に就て』、『こころのかて : 故楢崎猪太郎一周記念』、『バカやなぎ』、『悪太郎』、『鬼になる眼』、『人生読本』、『人生読本』、『世紀の夜』、『相撲随筆』、『闘魂録』、『悲劇を探す男』、『悲風千里』、『文学論』、『霧と銀貨』、『洋車の大将』、『赤石渓谷』、『基地』、『熱帯の風』、『非常時と我が国防』、『禅門曹洞宗典』、『漢口陥落後の事変はどうなる』、『新民主義 : 新興支那指導精神』、『岩波講座物理学及び化学

*18:松浦武四郎

*19:今なお『メカニズムの事典』として読み継がれている『機械の素』の著者。

*20:「後記」を記している阪本勝は1975年没なので、図書としてはパブリックドメイン入りしていない。

*21:日高巳雄による『陸軍軍法会議法講義』、『軍事法令判例類集 : 加除自在』も保護期間満了に変更されたが、1947年没なので今年パブリックドメイン入りしたものではない。同著者による『軍機保護法』などは図書館送信、『戒厳令解説』などは保護期間満了と、同じ著作者による図書であっても公開範囲が異なるのはいつものこと。

*22:著作権者不明の著作物の利用に関する裁定及び補償金の額を定める件(文化庁四〜九)

*23:著作権者不明の著作物の利用に関する裁定及び補償金の額を定める件(文化庁二二、二三)

*24:元朝祕史10卷續2卷』([1][2][3][4][5][6])、『大日本鉄道発車之図

*25:表紙に「東京築地活版製造所にて印刷し」と大書されていて面白い。ところどころページスキャンに異常があるのが惜しい。

*26:ある記事によれば、1月7日時点で「10億円ほどがついた」と言える状況だったようだ。

*27:平成26年度第1号補正 一般会計(PDF: 37KB) 」p.5(ノンブルp.3)

*28:平成26年度一般会計補正予算(第1号)」p.126(ノンブルp.118)

*29:平成26年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)等の説明」p.17(ノンブルp.14)

*30:平成21〜23年度に実施された大規模デジタル化の元になった平成21、22年度の補正予算では、「最近の経済情勢等にかんがみ、経済危機対策の一環として『底力発揮・21世紀型インフラ整備』の推進を図るため行う所蔵資料のデジタルアーカイブ整備等」(「平成21年度一般会計補正予算(第1号)」p.77(ノンブルp.71))、「最近の経済・雇用状況等にかんがみ、円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策の一環として地域活性化の推進を図るため行う地域の雇用創出に資する所蔵資料のデジタルアーカイブ整備」(「平成22年度一般会計補正予算(第1号)」p.87(ノンブルp.80))と説明されていた。

*31:担当の方が豪腕ということかもしれない。