国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年6月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第13号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2015年6月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2015年6月1日から2015年6月30日までに変更のあったレコードは139,242件であった*1。これまでの月間変更レコード数と比べ、非常に多くのレコードの変更がなされている*2

5月末時点のデータにおいては、「資料種別」*3が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*4に「インターネット公開」を含むものは350,401件であったが、6月30日までの更新を適用したデータにおいては350,444件となっており、43件増加している。1年前の6月末と比較すると、514件の増加であった。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 5月末 6月末
インターネット公開(許諾) 7456 7509 +53
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 46741 46739 -2
インターネット公開(裁定) 著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開 裁定年月日: 2010/12/27 0 1 +1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010-12-27 1 0 -1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 27 27 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2015/02/09 8 8 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 31287 31287 0
インターネット公開(裁定) 著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開 裁定年月日: 2012/03/01 0 423 +423
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012-03-01 416 0 -416
インターネット公開(裁定) 著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012-03-01 7 0 -7
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 53 53 0
インターネット公開(保護期間満了) 264405 264397 -8
館内公開 62442 62419 -23
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 506767 506747 -20
(総計) 919610 919610 0
(内、インターネット公開分合計) 350401 350444 +43

文化庁長官裁定を受けて公開している資料について、5月に発生した表記揺れの一部が解消されている。

ただし、裁定年月日の区切りを「-」から「/」に変更する際に別の表記揺れが混入していたり*5、後ほど取り上げる新規公開静止画資料*6では丸括弧が半角になっていたりと、表記揺れは依然として残っている。

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

6月末 総計
許諾 保護期間満了 館内公開
5月末 裁定
2010/12/27
2*7 2
保護期間満了 34*8 34
図書館送信 20*9 20
館内公開 53*10 4*11 57
総計 53 26 34 113

この表は、例えば、5月末時点では館内公開であった図書で、6月末にはインターネット公開(保護期間満了)になっているものが4件あると読んでほしい。

裁定に関する表記揺れにより全体の傾向が掴みにくくなるため、実質的に同内容のもの(裁定年月日の同じもの)同士の変動は省いた。

比較的変化の少なかった図書とは対照的に、他の資料種別では多数の新規公開資料(静止画資料399件、和古書431件、博士論文1,001件)が見られた。

新規公開の静止画資料

静止画資料については、憲政資料から書簡1件、米国戦略爆撃調査団文書398件*12が新規公開された。

新規公開された書簡1件は、斎藤実関係文書からの「村上俊蔵書簡 斎藤実宛」であり、インターネットで閲覧できる*13

これは、ミニ電子展示「本の万華鏡」の第19回「白瀬矗、南極へ〜日本人初の極地探検」に向けてデジタル化されたもののようで、デジタル化日が2015-05-13、利用可能日が2015-05-29となっており、デジタル化されてから異例の速さで公開されている*14

また、村上俊蔵(濁浪)が幹事に名を連ねた、南極探検後援会編纂による図書『南極記』も、6月8日付けで図書館送信から保護期間満了に変更され、インターネット閲覧できるようになっている。写真も多く、本の万華鏡第19回が公開されれば、その解説とともに読んでみると楽しいのではないだろうか。19コマには「祝壮挙」と朱書きされた乃木希典の名刺が見える。前後のページの様子を見ると、名刺の複製が実際に貼ってあるように見えるが、どうなっているのだろう。

新規公開の古典籍資料

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 5月末 6月末
インターネット公開(許諾) 0 48 +48
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 13 13 0
インターネット公開(保護期間満了) 68652 69084 +432
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17679 17679 0
館内公開 447 390 -57
(未設定) 0 8*15 +8
(総計) 86791 87222 +431
(内、インターネット公開分合計) 68665 69153*16 +488

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (5月末 → 6月末) 件数
館内公開 → インターネット公開(許諾) 48 *17
館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 9 *18
新規 インターネット公開(保護期間満了) 423 *19
新規 (未設定) 8 *20

1月22日付けで図書館送信から館内限定に変更されていた資料の一部が、6月8日付けでインターネット公開*21として返ってきている。

その他、公開範囲変更ではなく、新規に追加された古典籍資料が431件あった。

便利のため、この新規公開資料431件の一覧(tsvファイル)を共有する。なお、この一覧には、館内公開からインターネット公開に変更された57件は含んでいない。

新規公開された資料には、2014年度のデジタル化分の一部*22や、電子展示会「錦絵でたのしむ江戸の名所2」に向けた錦絵資料などが含まれている。

2013年度のデジタル化分が2015年3月に新規公開されたことを以前の記事で取り上げたが、2014年度のデジタル化分の一部が早くも公開された(デジタル化日2015-03-20、利用可能日2015-05-29)ことは喜ばしい。

NDLデジコレ資料数の変化

NDLデジコレの毎月の変動を追って1年になるので、1年前の資料数と今年の資料数を資料種別ごとに比較してみた。

資料種別 (dcndl:materialType)2014年6月末2015年6月末
映像資料206261+55
雑誌12039301233926+29996
視覚障害者向け資料||点字2657+31
新聞660
図書899671901751+2080
図書||静止画資料12+1
図書||和古書02+2
政府刊行物||官公庁刊行物20950209500
政府刊行物||国立国会図書館刊行物336333630
政府刊行物||国立国会図書館刊行物||立法情報5535530
静止画資料2137630045+8669
静止画資料||雑誌05341+5341
静止画資料||図書1297713733+756
博士論文140904145986+5082
録音資料48732487320
和古書8143983098+1659
和古書||図書41194122+3
(未設定)748860+112
(総計)24390012492788+53787

総計では、この1年間で約5万4千件の資料数増加になっている。

ここで、一つの資料に複数の資料種別が設定されている場合は「||」でつないで表示した。例えば、「図書||静止画資料」の数は、「図書」や「静止画資料」の数には含んでいない。従って、資料種別が図書に設定されているものの数は、上の表では「図書」「図書||静止画資料」「図書||和古書」「静止画資料||図書」「和古書||図書」の和となる。また、例えば「図書||和古書」と「和古書||図書」の違いは、メタデータのデータベースからの出力次第なので区別する意味はないが、そのままにした。

「災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ

国立国会図書館が進めている「災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ整備」*23について、6月に調達情報が公開された。

競争入札に係る情報の公表(物品役務等)」に記載された以下のそれぞれが、3月20日入札公告での「ア) 国内刊行図書及び国内刊行雑誌の原資料からの電子化一式 約533万コマ及び約30万コマ(予定)」と「イ) 国内刊行図書の原資料からの電子化一式 約407万コマ(予定)」に相当すると考えられる。

物品役務等の名称及び数量 契約を締結した日 契約の相手方の商号又は名称及び住所 契約金額 備考
国内刊行図書(NDLC等)及び国内刊行雑誌の原資料からの電子化 平成27年5月29日 株式会社ムサシ
東京都中央区銀座8-20-36
53.3円等2点 単価契約:342,456,120円
国内刊行図書(NDC等)の原資料からの電子化 平成27年5月29日 三井倉庫ビジネスパートナーズ株式会社
東京都港区海岸3-22-23
56.8円 単価契約:249,670,080円

6月5日には、国立国会図書館ウェブサイトに「資料のデジタル化に伴う原資料の利用停止について」のニュースが掲載され、対象となる資料の概要が明らかになった。

利用を停止する資料
対象 冊数等
(1)東京本館所蔵の昭和62年末までに整理された和図書の一部
  • 請求記号が以下で始まるものの一部

    026〜921、AZ-1311〜AZ-1792、EG77、GC、M91、M93、ME
  • 請求記号がUL又はUPで始まる当館刊行物の一部
約45,000冊
(2)請求記号がY111、Y121で始まる官庁等が発行する小冊子の一部 約2,100冊
(3)請求記号がY95、Y111、Y991で始まる原子炉設置(変更)許可申請 約2,200冊
(4)国内刊行学会誌・紀要類の一部(和雑誌・洋雑誌)
うち洋雑誌7タイトルは関西館所管
約90タイトル(Excel: 52.5KB)
(5)国・地方公共団体の各種報告書類(「白書」類も含む)の一部(和図書・和雑誌) 約70タイトル(Excel: 45.0KB)
(6)国の機関が発行する公報の一部 9タイトル(Excel:28.5KB)

http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2015/1210600_1830.html

国立国会図書館分類表(NDLC)をもとに対象の分類を見てみると、(1)で挙げられている資料は、例えば、AZ-1311:特定地方公共団体の行政一般、EG77:災害,災害救助、GC:地方史・誌、M91:自然災害誌、M93:防災科学一般、ME:地球科学に分類される資料の一部などであることが分かる*24

今回のデジタル化対象は近年の資料が多く*25、ほとんどはまずは館内限定での公開になるだろうが、国・地方公共団体の報告書等は許諾に基づいてインターネット公開される可能性もあるかもしれない*26

また、6月19日に決定された「知的財産推進計画2015」の工程表では、このデジタル化についての言及もあり、国立国会図書館は2015年度に「平成26年補正予算(第1号)による、災害対応力強化に資する資料のデジタル化を実施する。また、デジタル化データを活用した検索機能の拡張を進める。デジタル化データの復刻・翻刻等の利用の促進に向けた取組を進める。」(項目番号114)としている。

「デジタル化データを活用した検索機能の拡張を進める」という部分は、どのような機能拡張になるのだろうか。関係者協議次第と思われる全文検索の実現とは、まったく別の切り口の拡張だったりするのだろうか。いろいろ想像してみると面白い。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:「資料種別」(dcndl:materialType)の内訳では、雑誌118,528件、静止画資料8,000件、図書5,752件、博士論文4,293件、和古書2,719件となっている。ただし、一つの資料に複数の資料種別が設定されているものもあるので、資料種別の合計件数は変更レコード数と一致しない。

*3:dcndl:materialType

*4:dcterms:rights

*5:「(裁定)」と「著作権法」の間に半角スペースを入れている。

*6:村上俊蔵書簡 斎藤実宛

*7:欧洲民力史論 第1,2巻』、『婦人病者の心得 : 子宮病血の道自宅病法

*8:講演集や論文集、記念誌、図鑑、大系などの集合著作物。

*9:海舟先生氷川清話』、『南極記』、『福沢全集』(第1巻第2巻第3巻第4巻第5巻第6巻第7巻第8巻 時事論集 第1第9巻 時事論集 第2第10巻 時事論集 第3)、『福沢全集』(苐一卷第二卷苐三卷苐四卷苐六卷苐七卷苐八卷苐十卷

*10:モダン化粧室』、『佐井村誌』、『神ながらの道』、『神ながらの道』、『難訓辞典』、『いますがた』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31][32][33][34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44][45][46][47][48]

*11:『明治財政史』(第1巻第2巻第3巻)、『流布本平家物語抄』(野村宗朔 編)

*12:館内公開64件、インターネット公開(保護期間満了)334件。

*13:著作権に関する情報は、「インターネット公開(保護期間満了)」として、丸括弧が半角になっている。

*14:利用可能日は5月29日となっているが、国立国会図書館サーチのメタデータ原則として週1回の更新であり、当該資料のメタデータは6月8日付けで登録されている。このため、前回の記事では新規公開資料について触れられていない。

*15:実際にインターネットで閲覧できているので、インターネット公開のいずれかであろう。

*16:未設定の8件を含めた。

*17:『いますがた』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31][32][33][34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44][45][46][47][48]

*18:『青梅町古證文』([1][1]紙背[2][2]紙背[3][3]紙背[4][4]紙背[5]

*19:本文中記載のtsvファイル参照。

*20:『魁本大字諸儒箋解古文眞寶』(12)、『御用留』(享和元酉年ヨリ文化七午年迄自文化七午年至文政二夘年)、『文章軌範 正7巻続7巻』(文章軌範序續文章軌範百家批評註釋巻之四續文章軌範百家批評註釋目録正文章軌範百家評林註釋巻之四

*21:インターネット公開(許諾)48件、インターネット公開(保護期間満了)9件。

*22:2014年度の作業対象資料一覧(xlsxファイル)のうち、『長崎諸御役場絵図』、『千両橋廻留』、『[小野家系図]』、『蘭山先生秘伝花鏡訳 : 2巻』や、『魁本大字諸儒箋解古文眞寶』、『御用留』、『文章軌範 正7巻続7巻』の公開が確認できた。他にも公開されているものがあるかもしれないが未確認。

*23:以前の記事で、意見招請入札公告などから分かる規模について取り上げている。

*24:「請求記号が〜で始まるものの一部」として示されているので、具体的資料名は確定できない。

*25:対象の(4)に挙げられた「東京帝国大学地震研究所地震観測報告」や、(5)に挙げられた「気象要覧」の一部など、戦前の資料も含まれている。

*26:前回の記事で見たように、環境庁による報告書等で「インターネット公開(許諾)」のものが多数ある。