国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2016年5月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第24号(2周年!)。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2016年5月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2016年5月1日から2016年5月31日までに変更のあったレコードは22,771件であった*1

4月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは350,917件であったが、5月31日までの更新を適用したデータにおいては350,998件となっており、81件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 4月末 5月末
インターネット公開(許諾) 7724 7807 +83
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 33923 33923 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01; 2015/11/10 36 36 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 21 21 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 44986 44986 0
インターネット公開(保護期間満了) 264224 264222 -2
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 506507 506325 -182
館内公開 63056 63157 +101
(総計) 920480 920480 0
(内、インターネット公開分合計) 350917 350998 +81

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

5月末 総計
許諾 保護期間満了 館内公開
4月末 保護期間満了 101*4 101
図書館送信 83*5 99*6 182
総計 83 99 101 283

この表は、例えば、4月末時点では図書館送信であった図書で、5月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが99件あると読んでほしい。

図書館送信から許諾へと変更された図書には、4月の変更と同様、鰭崎英朋(1968年没)による口絵のあるものや、鈴木朱雀(1972年没)による装幀であるものが多く含まれていた。

図書館送信から保護期間満了へと変更された図書99件は、資料種別が「図書」のみの資料53件と、資料種別が「和古書」「図書」の資料46件からなっている。前者は、中島竦の著作(『書契淵源』など)と囲碁関係の図書でほとんどが占められていた(該当しないものは2件)。後者は次で述べるように錦絵等を多く含む内容であった。

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 4月末 5月末
インターネット公開(保護期間満了) 70634 70687 +53
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17792 17739 -53
館内公開 4 4 0
(総計) 88430 88430 0
(内、インターネット公開分合計) 70634 70687 +53

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (4月末 → 5月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 53 *7

図書館送信から保護期間満了へと変更された古典籍資料には、錦絵等や彩色資料が多く含まれていた。

まず、錦絵等について。『(表紙)』、『(裏表紙)』は、タイトルだけ見ると何のことやらだが、山本昇雲 画『子供あそび』という錦絵集の表紙と裏表紙のみがインターネット公開されたもので、中身の錦絵自体は図書館送信のままとなっている。山本昇雲(1965年没)については、2月美人画『いますがた』48件が保護期間満了に変更されており、『子供あそび』についても今後保護期間満了に変更されるだろうか。

他に、石井柏亭木版画現代女人十二姿 : 舞踊』、井上安治(井上探景)の錦絵『京橋勧業場之景』『京橋松田の景』『吾妻橋』、川瀬巴水の水彩画『伊香保の夏の夕』『伊予川之江』『後志国せたかむゐ岩』『東海道薩埵峠』『京都上賀茂』、河鍋暁斎による巻物(粉本の貼り込み)『河鍋暁斎粉本』、野村芳国の錦絵『京阪名所図絵』、橋口五葉の版画『橋口五葉版画集』、楊洲周延の錦絵『千代田之御表』、横山大観の絵巻『輝く大八洲』なども、図書館送信から保護期間満了に変更されている。

橋口五葉版画集


橋口五葉版画集 髪梳ける女
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

次に、彩色資料について。博物学関係の彩色資料(『加州草木写生図 第1-4』、『鎌井氏勢州有機無機品物録』、『栗氏虫譜 2巻 [1]』)や『葵御祭供進之神饌諸品色目書』などが保護期間満了に変更されている。

その他、宇野浩二因縁事』や久保田万太郎花冷え』の自筆原稿、和田万吉嵯峨本考』の自筆稿本も、図書館送信から保護期間満了に変更された。

NDLサーチAPIの性能向上

5月11日付けで、NDLサーチより「OAI-PMHによるデータ提供機能のレスポンスが向上しました(2016年5月11日)」とのアナウンスがあった。

以下のツイートで述べたように、圧倒的な性能向上がなされており、使い勝手が良くなっている。今回の記事で対象とした5月分のNDLデジコレ更新データ(約2.2万件)の取得は1分で完了した。

また、上記のアナウンスでは直接触れられてはいないが、レポジトリがサポートする日付精度(granularity)が従来の「YYYY-MM-DD」から「YYYY-MM-DDThh:mm:ssZ」に変更されているのも、ありがたい変更点であった*8

ありがとう「近デジ」

5月31日夜、かねてアナウンスされていた通り、近代デジタルライブラリー(以下、近デジ)が、2002年10月1日の提供開始以来、13年半の歴史に幕を下ろした。

以前「『近デジ』ブランドの消滅」で取り上げた、近デジの「資料あれこれ」や過去の新規公開資料リスト等は、やはりNDLデジコレに移行されなかったようだ(リダイレクトされた上で「指定のページが見つかりません」となる)。

Internet Archiveには、近デジの静的コンテンツの一部がサービス開始当初の版から保存されており、往時の姿を偲ぶことができる。「資料あれこれ」については、今後も閲覧したい場合は、こちらで保存されているものを参照すればよいだろう。

一方、国立国会図書館自身が行っている国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(以下、WARP)では、「資料あれこれ」も保存はされている。保存はされているのだが、「国立国会図書館(東京本館、関西館、国際子ども図書館)で閲覧できます。」と館内限定公開の扱いになっており、インターネット公開はされていない。これでよいのだろうか*9。(追記:その後、公開範囲が更新され、現在は一部収集時期分についてインターネット公開されるようになっている。)

余談だが、運営終了とWARPといえば、2015年3月末をもって国立公文書館の歴史公文書探究サイト「ぶん蔵」が運用終了となった*10。その後、「ぶん蔵」のドメイン「bunzo.jp」は登録切れとなって業者の手に渡り、「ドメイン bunzo.jp は 999 USDで売り出し中です!」などの内容がWARP保存され続けている。現在は全く無関係なサイトが構築されているが、このまま次回の収集時期(7月)以降も収集保存され続けるのだろうか。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:論文集等の集合著作物など。他に、叢書や全集などで、書誌情報上の著者は団体名義になっているが、図書には個別の著者個人名や講演者名等が明示されているものなど。

*5:明の空』、『赤穂四十七士』、『あしたに夕へに : 芭蕉随想』、『荒川熊蔵』、『一茶読本』、『岩波講座世界文学 第3』、『印度洋』、『印度洋』、『魚と人生』、『魚の随筆』、『疑 後編』、『海と人』、『皆懺悔 : 荻原井泉水俳句集』、『廻船式目の研究』、『怪談青灯集』、『篝火』、『かたおもひ』(2巻3巻5巻)、『家庭お伽文庫 第2集』、『家庭お伽文庫』(第一篇第二篇第三篇第四編第五篇第六號第七篇第八篇第十三篇第十六篇第十九篇)、『奇魚珍魚』、『聞くもの見るもの』、『子故の闇 : 悲劇』、『魚の研究』、『参宮日記』、『三万両五十三次 上巻』、『不知火日記』、『深海魚 : 研究室周辺』、『新生』、『井泉句集 第4』、『世界戦争と船舶問題』、『大将の家』、『大東亜の魚』、『大東亜の魚』、『太平洋の島と探検 : その歴史と地理』、『太平洋の地図』、『旅人芭蕉 続』、『談話売買業者』、『誓』(前編中編後編)、『鳥のゆく空 : 酒井仙酔楼句集』、『生さぬなか』、『生さぬなか』(前巻中巻下巻後編)、『南方発展の知識』、『南洋の歴史と現実』、『日本海防史料叢書 第1巻』、『日本海防史料叢書 第1巻』、『日本民族海外発展史』、『日本民族海外発展史』、『日本産魚類図説』(自第1巻 至第15巻第41巻第42巻第43巻第44巻第45巻第46巻第47巻第48巻)、『俳壇傾向論』、『芭蕉の心』、『母』(前編後編)、『春の鼓笛 : 長篇小説』、『ブレーク選集』、『豊分居雑筆』、『万葉のこころ』、『眼を捜して歩く男 : 怪奇小説集』、『礼讃 : 野村朱鱗洞遺稿句集

*6:囲碁独習』(第一卷第二卷第三卷第四卷第五卷第六卷第七卷第八卷第3巻第7巻)、『今様職人尽百人一首』、『棋界秘話』、『古碁枢機 : 4巻』(巻一巻二巻三巻四)、『上下水道用塩素滅菌機解説』、『書契淵源 : 3綱』(第一帙上第一帙中第一帙下第二帙上第二帙中第二帙下第三帙上第三帙中第三帙下第四帙上第四帙中第四帙下第五帙一第五帙二第五帙三第五帙四第五帙五)、『書契淵源』(第1帙上第1帙中第1帙下第2帙上第2帙中第2帙下第3帙上第3帙中第3帙下第4帙上第4中第4帙下第5帙1第5帙2第5帙3第5帙4第5帙5)、『清朝史談』、『蒙古通志』、『葵御祭供進之神饌諸品色目書』、『吾妻橋』、『伊香保の夏の夕』、『伊藤圭介先生之碑』、『伊予川之江』、『因縁事』、『奥之細道』(上巻下巻[3])、『輝く大八洲』、『加州草木写生図』(第1第2第3第4)、『鎌井氏勢州有機無機品物録』、『河鍋暁斎粉本』([1][2][3][4][5][6][7])、『京都上賀茂』、『京橋勧業場之景』、『京橋松田の景』、『京阪名所図絵』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10])、『現代女人十二姿 : 舞踊』、『皇嗣例』、『御生母例』、『嵯峨本考』、『後志国せたかむゐ岩』、『千代田之御表』、『東海道薩埵峠』、『桐布之説』、『橋口五葉版画集』、『花冷え』、『みどりのやなぎ

*7:(表紙)』、『(裏表紙)』、『花壇綱目』、『花壇綱目』、『佐伯文庫献書総目』、『栗氏虫譜 2巻 [1]』、『蒙古源流考 8卷』、『葵御祭供進之神饌諸品色目書』、『吾妻橋』、『伊香保の夏の夕』、『伊藤圭介先生之碑』、『伊予川之江』、『因縁事』、『奥之細道』(上巻下巻[3])、『輝く大八洲』、『加州草木写生図』(第1第2第3第4)、『鎌井氏勢州有機無機品物録』、『河鍋暁斎粉本』([1][2][3][4][5][6][7])、『京都上賀茂』、『京橋勧業場之景』、『京橋松田の景』、『京阪名所図絵』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10])、『現代女人十二姿 : 舞踊』、『皇嗣例』、『御生母例』、『嵯峨本考』、『後志国せたかむゐ岩』、『千代田之御表』、『東海道薩埵峠』、『桐布之説』、『橋口五葉版画集』、『花冷え』、『みどりのやなぎ

*8:その他、リポジトリの削除済みレコードに対する処理法(deletedRecord)が「transient」から「persistent」に変更されている。詳しくは、「国立国会図書館サーチ 外部提供インタフェース仕様書(第1.16版) 2016.05.11」を参照のこと。

*9:許諾や裁定に基づく公開資料の書影が含まれている可能性を考慮してのことかとも思ったが、「近代デジタルライブラリーのあゆみ」でさえも館内限定公開になっているので、そういったことではないのだろう。

*10:WARPに保存されている「『ぶん蔵』からのお知らせ」とトップページ