国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2016年8月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第27号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

怪人二十面相


怪人二十面相
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)


国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2016年8月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2016年8月1日から2016年8月31日までに変更のあったレコードは269,462件であった*1

7月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは351,198件であったが、8月31日までの更新を適用したデータにおいては350,870件となっており、328件減少している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 7月末 8月末
インターネット公開(許諾) 7962 8011 +49
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 33913 33900 -13
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01; 2015/11/10 36 36 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 21 21 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 44986 44985 -1
インターネット公開(保護期間満了) 264277 263914 -363
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 503906 503533 -373
館内公開 124596 125297 +701
(総計) 979700 979700 0
(内、インターネット公開分合計) 351198 350870 -328

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

8月末 総計
許諾 裁定
2012/03/01
保護期間満了 館内公開
7月末 裁定
2012/03/01
2*4 46*5 48
裁定
2015/11/10
1*6 1
保護期間満了 681*7 681
図書館送信 46*8 35*9 269*10 23*11 373
館内公開 1*12 2*13 3
総計 49 35 318 704 1106

この表は、例えば、7月末時点では館内公開であった図書で、8月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが2件あると読んでほしい。

パブリックドメイン図書の増加

図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1965年に没し、2016年からパブリックドメインとなったものが含まれている。

ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)の中から、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。

小説家・詩人・翻訳家など

米川正夫の作品については、他に、『アルツイバアシエフ全集』(第1巻 最後の一線 上巻第2巻 最後の一線 中巻)(アルツィバーシェフ 著、米川正夫 訳)が文化庁長官裁定に基づいて公開された。

ついに谷崎源氏(旧訳)が保護期間満了として公開されたことは注目に値するだろう。

源氏物語. 卷一


源氏物語. 卷一
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

美術家

楽家

学者・宗教家など

他に、安藤尭雄(教育学者)などの著作物も公開された。

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 7月末 8月末
インターネット公開(保護期間満了) 70793 71110 +317
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17643 17326 -317
館内公開 4 4 0
(総計) 88440 88440 0
(内、インターネット公開分合計) 70793 71110 +317

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (7月末 → 8月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 317 *14

図書館送信から保護期間満了へと変更された古典籍資料には、活字史・印刷史好きには嬉しい資料や、多数の錦絵、彩色資料、自筆原稿が含まれていた。

まず、『法普戰争誌畧 8巻 [1]』。府川充男『聚珍録』によれば「最初期の本木系四号明朝と和様による組版」とのこと。これが白黒2値ではなくカラーで閲覧できるのは嬉しい。下に示したページについては、早稲田古典籍で公開されている画像では後ろから2行目や3行目に込め物の写り込みが見られるが、NDLデジコレのものでは後ろから4行目の行末に込め物の写り込みが見られる。
印刷史という点では、『百万塔陀羅尼』も、図書館送信から保護期間満了に変更されている。

法普戰争誌畧 8巻 [1]


法普戰争誌畧 8巻 [1]
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

また、井上安治(井上探景)、3代目歌川国貞、2代目歌川国輝、歌川芳虎、小林清親、昇斎一景などの錦絵、川瀬巴水の水彩画や風景版画、竹久夢二美人画などが保護期間満了に変更された。

彩色資料としては、『浴恩春秋両園梅桃雙花譜』も美しい。

自筆原稿については、芥川龍之介北京日記抄』、宇野浩二人心』、小川未明自分の造った笛』、久保田万太郎三つの望』、室生犀星萬華鏡』が保護期間満了に変更されている。

他に、少し珍しい資料として、紅型の布を貼り交ぜた『紅型 : 古琉球 [1]』や、絹織物の生地などを貼り交ぜた『諸織物縞本集帳』が見られる。

今後のデジタル化予定

8月23日付けで国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用停止について」が更新された。


利用を停止する資料(平成28年8月23日現在)

資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用停止期間(予定)
和図書 (1) 東京本館所蔵の和図書
  • 昭和62年までに整理された請求記号が AZ-1351〜AZ-1391で始まるものの一部
  • 請求記号がY994で始まるものの一部
約430冊 平成28年9月13日〜平成29年4月末日(予定)
和雑誌 (2) 東京本館所蔵の国内刊行和雑誌
  • (Z6-29、Z15-115ほか)
16タイトル(Excel: 16KB)
約200冊
(3) 関西館所蔵の国内刊行和雑誌
  • (雑45-1、Z051.7-M2ほか)
約40タイトル(Excel: 16KB)
約500冊
(4) 国際子ども図書館所蔵の国内刊行和雑誌
  • (Z32-122、Z32-138ほか)
約70タイトル(Excel: 16KB)
約300冊
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.html

国立国会図書館分類表(NDLC)をもとに対象の分類を見てみると、(1)で挙げられている資料は、例えば、AZ-1351:特定地方公共団体の警察、AZ-1391:特定地方公共団体地方自治、Y994:別置措置和資料に分類される資料の一部などであることが分かる。しかし、例によって「請求記号が〜で始まるものの一部」として示されているので、具体的資料名は確定できない。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:金融新体制と銀行の動向』、『見たまゝのブラジル

*5:素人詰将棋』、『日本大蔵経』(第2巻第3巻 宗典部 三論宗章疏第4巻第5巻第6巻第7巻第8巻 宗典部 曹洞宗章疏 1第9巻 宗典部 法相宗章疏 2第10巻 経蔵部 方等部章疏 3第11巻 宗典部 戒律宗章疏 1第12巻 経蔵部 方等部章疏 4第13巻 宗典部 戒律宗章疏 2第14巻第15巻 宗典部 戒律宗章疏 3第16巻 論蔵部 真言密教論章疏 下第17巻 宗典部 修験道章疏 1第18巻第19巻第20巻第21巻第22巻第23巻 論蔵部 諸大乗論章疏 1第24巻 経蔵部 密経部章疏 上 1第25巻 経蔵部 方等部章疏 5第26巻 経蔵部 密経部章疏 上 2第27巻 論蔵部 唯識論章疏 1第28巻第29巻第30巻 経蔵部 法華部章疏 3第31巻 経蔵部 理趣経釈章疏 1第32巻 経蔵部 密経部章疏 下 1第33巻 論蔵部 唯識論章疏 2第34巻 経蔵部 方等部章疏 6第35巻 経蔵部 般若部章疏第36巻第37巻 宗典部 修験道章疏 2第38巻 宗典部 修験道章疏 3第39巻第40巻 宗典部 華厳宗章疏 上第41巻第43巻 宗典部 天台宗密教章疏 1第44巻 宗典部 天台宗顕教章疏 1第45巻 宗典部 天台宗密教章疏 2第46巻 宗典部 天台宗顕教章疏 2第48巻 宗典部 天台宗密教章疏 3

*6:祭礼囃子の由来

*7:報告集、講演集、年報などの集合著作物。他に、昭和2年の『日本標準規格 第1輯』(旧JES)なども館内限定に変更された。

*8:感動と批評 : 未完成批評家の肖像』、『機械工作 第8講』、『行政法講義要鋼』、『行政法第二部 : 高文参考 各論』、『行政法第二部(各論) : 杉村章三郎先生プリント 1』、『極東は戦争か平和か : 外国から見た日本の現状』、『近世生活と国文学』、『研究社英米文学評伝叢書 7』、『原動機 第9講』、『国文学講座 第6巻』、『小ゆき』(前編中編後編続編)、『これからの新聞 : 戦時下の新聞人と読者の心構へ』、『財政学概論』、『財政学概論』、『財政学概論』、『財団法人啓明会講演集 第71回 世界經濟の動向と日本の金融』、『シェイクスピア襍記』、『シェイクスピア襍記』、『実録忠臣蔵 : 新編 前編』、『新判例と行政法の諸問題』、『新判例と行政法の諸問題』、『須磨子 : 一名呪はれたる恋』、『箋注倭名類聚抄』、『毒草』(お品の巻疑獄の巻お仙の巻)、『日本文学思潮 第6』、『秘中の秘 : 宝庫探険』(前編後編)、『ふたおもて 前編』、『文学の知識』、『北米合衆国経済事情』、『万葉佳品抄』、『万葉集 巻第1・2』、『万葉集 : 尼崎本』(〔本編〕解説)、『万葉集講話 〔正〕』、『万葉集序説』、『万葉集新釈 上巻』、『息子たちと恋人たち 第2』、『モウパッサン全集 第13巻』、『ユートピア』、『百合子画集

*9:『アルツイバアシエフ全集』(第1巻 最後の一線 上巻第2巻 最後の一線 中巻)、『イエスと人類愛の内容』、『色づく蕾 : 歌集』、『黄金』、『かぐや姫物語』、『教練の指針』、『教練の指針』()、『銀行業とその責務』、『串原発電事業誌』、『細目を主とせる図画学習指導の実際』、『事業と人物』、『児童芸術粘土彫塑と木彫』、『自由表現水彩画の新学習』、『自由表現パステル画の新学習』、『宗教法衍義 : 文部省案』、『少女詩集』、『信心のために』、『青年団の適切なる競技とページェント』、『長州之天下』、『通人物語趣味の東京』、『投入盛花百撰集』、『残されたる刺 : 逆境への福音』、『花の鍵』、『』、『モウパッサン全集』(第9巻寝室の一隅第10巻第11巻第12巻第14巻)、『ラヂオと飛行機』、『陸上競技の研究』、『霊鐘 後編』、『労働保険論

*10:青森県蟹田』、『悪魔』、『衣食住諸職繪解錦画』、『英國歩兵練法号令詞 : 紀州新宮練兵所蔵』()、『王将聯盟』、『大番頭小番頭』、『雄鹿半島竜ケ崎』、『お隣の英雄』、『鬼の面』、『音楽心理学』、『音楽適能診断の理論と実際』、『音響心理学原論』、『音響心理学原論』、『女十題』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10])、『怪人二十面相』、『怪盗追撃 : 富士夫少年探偵物語』、『上総興津』、『賀茂真淵全集』(巻1巻一巻2巻二巻3巻三巻4巻四巻5巻五巻6巻六巻7巻七巻8巻八巻9巻九巻10巻十巻11巻十一巻12巻十二)、『苧麻製法一覽』、『神田川夕景』、『議会制度七十年史』(第1第11)、『木曽川と飛騨川と合流する美濃の河合』、『奇文欣賞』()、『癸酉記』、『警察と犯罪の秘密』、『源氏物語』(卷一卷二卷三卷四卷五卷六卷七卷八卷九卷十卷十一卷十二卷十三卷十四卷十五卷十六卷十七卷十八卷十九卷二十卷二十一卷二十二卷二十三卷二十四卷二十五卷二十六)、『現代日本文学全集』(第2篇 (坪内逍遥集)第9篇第18篇 (徳田秋声集)第59篇 (賀川豊彦集))、『現代ユーモア小説全集 第1巻』、『恋を知る頃』、『厚生白書』(昭和31年度版昭和33年度版昭和34年度版昭和35年度版昭和36年度版昭和37年度版昭和38年度版昭和39年度版)、『興風後集 : 近世名士遺草』、『国民学校経営原論』、『固陋談』、『金色の死』、『三郎の飛行船』、『色紙考』、『志州海藻圖譜』、『氏族考』、『祀典例彙』、『支那書史学』、『自分の造った笛』、『住所篇 巻1-3』、『順正書院記并詩 順正書院詩 完』、『駿藩各所分配姓名録』、『匠家故實録 : 棟上釿始諸式禮格』()、『諸織物縞本集帳』、『植物記載』、『職官考』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20])、『新音楽論』、『新吉原夜桜之景』、『新規造掛永代橋往來繁華佃海沖遠望之圖』、『人心』、『人生の年輪』、『人生の年輪』(前篇後篇)、『新撰日本歴史』、『神童』、『崇忠祠』、『スフィンクス』、『青春夢』(前篇後篇)、『世界大衆文学全集 第10巻』、『戦時刑事民事特別法義解 : 並裁判所構成法戦時特例戦時領事裁判ノ特例ニ関スル法律』、『宣伝の偉力』、『葬祭儀草』、『草木乾[セキ]法』、『そだてぐさ』、『外櫻田陸軍調練之圖』、『宝島探険 : 冒険小説』、『滝の川の図』、『旅みやげ』(第1集第1集第2集第2集第3集第3集第3集)、『団欒集 坤』、『徴古年表 [2]』、『筑紫遺愛集』(1,213,14)、『佃島雨晴』、『帝国議事堂炎上之図』、『貞丈祭典の扣』、『展覽會品物目録 : 於金澤兼六園 第2号』、『陶器辨解』、『東京神田萬世橋賑之圖』、『東京詞』、『東京名所三十六戯撰』、『東京名所繁榮之内江戸橋之圖』、『東台大戰爭圖』、『豆腐集説』、『東洋美術大観』(第1冊第2冊第3冊第5冊第6冊第7冊第8冊第9冊第10冊第11冊)、『銅椀龍[キン] 卷1』、『常盤橋内紙幣寮之図』、『トルストイ戯曲全集』、『南梁遺稿』([1][2][3][4][5])、『日本音楽理論 第1編』、『日本帝國憲法論』([早稻田大學第二十九回法律科講義録][早稻田大學第三十回法律科講義録][早稻田大學第三十一回政治經濟科講義録][早稻田大學第三十二回政治經済科講義録])、『日本風景選集』(1234567)、『日本名勝図会』、『ニュージーランド』、『野山獄読書記 二十一回猛乕』、『博物書一覽』、『博覧會諸人群集之圖 : 元昌平坂ニ於テ』、『花守』、『榛名摺臼岩』、『百万塔陀羅尼』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10])、『紅型 : 古琉球』([1][2])、『吹上訪古録』、『物価奔騰と労働争議』、『佛教渡來年代考』、『仏国軍法規教兵家必携』()、『船津傳次平考述太陽暦耕作一覽』、『フランツ・リスト伝』、『フリヂャ : 小唄集』、『兵器模型 : 少年科学工作』、『北京日記抄 [1]』、『奉使琉球始末抜萃』、『法普戰争誌畧 8巻 [1]』、『北満の二大古都址 : 東京城と白城』、『北海道石狩川札幌地形見取圖』、『萬華鏡』、『満洲交通の展望』、『無水岡田開闢法』、『三つの望』、『美濃梨子譜 拾八種』、『明治二己巳年改正東京大繪圖』、『明治三庚牛暦』、『明治太平記』、『明治二己巳暦』、『明治八年乙亥太陽略暦』、『山寺名勝志』、『ユーモア小説傑作全集 第1』、『百合子 前編』、『浴恩春秋両園梅桃雙花譜』、『夜の潮来』、『類聚伝記大日本史 第十四卷』、『ローベルト・シューマン伝』、『和漢年表 : 銅製懐宝』、『和訳英辞書

*11:『アナトオル・フランス短篇小説全集』(第1巻第2巻第3巻第4巻第5巻第6巻第7巻)、『アナトオル・フランス長篇小説全集』(第8巻第8巻第12巻第16巻第16巻)、『イプセン名作集』、『シェイクスピアとエリザベス朝演劇』、『西域探検紀行全集』(第2第5第7第11第12)、『デカルトと合理主義』、『プロテスタントの歴史』、『ヘディン中央アジア探検紀行全集 第10』、『舞姫タイス

*12:通俗経済講座 追補

*13:Fisher-boy Urashima』、『國際私法

*14:tsvファイル参照のこと。