国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2017年2月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第33号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

経済学説と社会思想
経済学説と社会思想(小泉信三
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

見返しに貼られたちょっとユーモラスな蔵書票。
「この図書は本館調査立法考査局主査 故能勢寅造氏の遺贈にかかるものである。(1957年12月)」*1

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2017年2月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2017年2月1日から2017年2月28日までに変更のあったレコードは32,642件であった*2

1月末時点のデータにおいては、「資料種別」*3が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*4に「インターネット公開」を含むものは352,570件であったが、2月28日までの更新を適用したデータにおいては352,666件となっており、96件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 1月末 2月末
インターネット公開(許諾) 9223 9231 +8
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 32461 32485 +24
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01; 2015/11/10 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 41770 41769 -1
インターネット公開(保護期間満了) 269075 269140 +65
館内公開 78162 78262 +100
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 554758 554562 -196
(総計) 985490 985490 0
(内、インターネット公開分合計) 352570 352666 +96

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

2月末 総計
許諾 裁定
2012/03/01
保護期間満了 館内公開
1月末 裁定
2015/11/10
1*5 1
保護期間満了 104*6 104
図書館送信 8*7 24*8 164*9 196
館内公開 4*10 4
総計 8 24 169 104 305

この表は、例えば、1月末時点では図書館送信であった図書で、2月末にはインターネット公開(保護期間満了)になっているものが164件あると読んでほしい。

パブリックドメイン図書の増加

図書館送信や館内公開からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1966年に没し、2017年からパブリックドメインとなったものが多数含まれている。

忍術からスパイ戦へ
忍術からスパイ戦へ(藤田西湖)
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)を中心として、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。

なお、今回保護期間満了に変更された図書の中には、1966年に没した人物による題字や序文などを含むため、これまで保護期間満了として公開されていなかったものが多数あるが(今月の例では、荒木貞夫による題字や序文を含むものなど)、そのような資料の列挙は煩雑となるので以後省略する。

小説家・詩人・翻訳家など

山中峯太郎の著作については、保護期間満了に変更された上記の図書に加え、『戦へ駆立てるもの : 国境第一戦の前後』、『戦に次ぐもの』が許諾に基づく公開に変更されている*11。また、上田広(小説家)の 『鉄道守備隊』が裁定に基づく公開に変更されている*12

他に、番匠谷英一(劇作家・ドイツ文学者)などの著作物も公開された。

美術家

楽家舞台芸術

学者・宗教家など

他に、板垣鷹穂(美術評論家・美術史家)、山崎靖純(経済評論家)などの著作物も公開された。

なぜ玄米でなければならぬか
なぜ玄米でなければならぬか(二木謙三
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

「立憲民政党政務調査館図書之印」「若槻礼次郎殿寄贈」

政治家・官僚・軍人・実業家など

荒木貞夫の著作については、保護期間満了に変更された上記の図書に加え、『戦争』が裁定に基づく公開に変更されている*14

資料の内容とは関係ないが、『犬養內閣成立祝賀新年宴會演說速記錄』(1932年*15)の裏表紙には、次の記載がある。

本「パンフレット」の寸法は商工省工業品規格統一調査会決定に係る「紙ノ仕上寸法規格」中のA列5番(148mm×210mm)に準拠したるものである

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1907613/17

日本標準規格第92号「紙ノ仕上寸法」(1929年12月4日決定)から約2年、寸法について特記していることには、どのような背景があるのだろうか。

その他

「最後の忍者」こと藤田西湖が晴れて返ってきた。藤田西湖については、以前の記事(12)を参照のこと。

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 1月末 2月末
インターネット公開(許諾) 8 8 0
インターネット公開(保護期間満了) 71209 71210 +1
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17220 17219 -1
館内公開 3 3 0
(総計) 88440 88440 0
(内、インターネット公開分合計) 71217 71217 0

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (1月末 → 2月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 1 *16

今月は、図書・古典籍資料ともに変動が少なかった。来月(3月の更新)は、例年通りであれば、2015年度のデジタル化分(古典籍資料については約1,400冊)などが新規追加されると思われるので、楽しみにしていよう。

今後のデジタル化予定

国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用停止について」は、「平成28年12月22日現在」のまま更新はなかった。

昨年8月の「平成29年度 国立国会図書館予算概算要求」では、重点事項の一つとして「デジタルコンテンツの拡充」を挙げており、要求内容には、「科学技術情報整備のためのデジタルコンテンツの拡充」として「科学技術文献等約6,000点」、「保存のためのデジタル化」として「図書等約6,000点」、「視覚障害者用録音図書のデジタル化」として「学術文献録音図書約170点」が挙げられている。

平成29年度予定経費要求書では、若干の減額が見られるが、大枠としては上記のようなデジタル化が想定されているものと考えて良いだろう。

*1:能勢, 寅造, 1902-1957。NDLデジコレには、国立国会図書館調査及び立法考査局『故能勢寅造氏遺贈図書目録』や、能勢文庫委員会『能勢寅造 : その仕事と思い出』という資料があるようだ。『国立国会図書館における露文資料 : その概要と紹介』によれば、故能勢寅造氏の遺贈図書からなる「能勢文庫」の図書には、「故人の風貌によせて「なまず」の図柄を配した「能勢寅造蔵書」という蔵書票が貼られている」とのこと。

*2:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*3:dcndl:materialType

*4:dcterms:rights

*5:日本楽府

*6:商工会議所関係資料等の集合著作物など。

*7:青イクツ』、『戦へ駆立てるもの : 国境第一戦の前後』、『戦に次ぐもの』、『七人の子供』、『将来の海運』、『南京城総攻撃』、『二つの真心』、『ぶつぶつ屋 : そのほか

*8:海国男子』、『輝く海軍魂』、『学童健康読本』、『眼前に迫る世界大戦と英米赤露の襲来 : SOSの日本』、『経済学全集 第5集 社會政策研究 第五分冊』、『警視総監物語』、『国防常識』、『小学武道読本 : 文部省要目準拠 全』、『世界少女くらべ』、『戦時下日本の思想動向 : 支那事変をめぐる国際思想戦』、『戦陣訓述義』、『戦争』、『鉄道守備隊』、『同志社大学不祥事件の真相』、『南海の決死隊』、『日○もし戦はば?』、『日本の剣 : 武道の話』、『呪はれたロシア』、『花咲くビルマ戦線 : 上級向』、『防空教育空中戦時代』、『要目準拠小学武道講話』、『歴史的に観たる日本女性』、『我等の大陸空軍』、『我等の飛行隊 : 空は危し

*9:D・ANOYパミールを征服す : 独逸の冒険的な探索飛行』、『Memoirs of the College of Engineering, Kyushu Imperial University = 九州帝國大學工學部紀要 第四冊第七號』、『アダム・スミス伝』、『アメリカ恐慌の見透し』、『アメリカ恐慌の見透し』、『異国叢書』(〔第1〕〔第3〕〔第11〕續 豊後篇上巻續 豊後篇下巻)、『大蔵大臣井上準之助君商工大臣俵孫一君招待新年宴会演説速記録 犬養內閣成立祝賀新年宴會演說速記錄』、『外国為替新読本』、『外国為替新読本』、『外国為替新読本』、『外国為替の見方』、『外国為替の見方』、『加賀藩勤王殉難士伝』、『学芸会国史劇』、『学芸会人形劇選集』、『各國憲政發達史概要』、『観想の玩具』、『教行信證概説』、『行政警察学』、『虚弱児童養護施設論 : 養護実施プログラム一案』、『近代思想と軍隊』、『グスターフ・ヴァーザー』、『国分日本金石年表』、『軍人勅諭謹解』、『軍人勅諭謹觧』、『経済学説と社会思想』、『経済協同体の進展』、『経済参謀本部論』、『経済参謀本部論』、『経済参謀本部論』、『経済学全集』(第5集 社會政策研究第5集 社會政策研究 第二分冊第5集 社會政策研究 第三分冊第5集 社會政策研究 第四分冊)、『芸術の国と自然の国』、『古英雄と宗教』、『皇国の軍人精神』、『巷塵抄』、『巷塵抄』、『国営と民営』、『国営と民営』、『国際私法 : 江川英文先生講義プリント 1 (総論)』、『国防の基礎』、『国民更生の根本義』、『国民更生の根本義』、『古事記新講』、『古事記新講』、『古代支那研究』、『これからの経済は如何に動くか』、『コンドル博士遺作集』、『最新昭和公民読本』、『坐高と比坐高とに就て : 坐高測定の実際問題に就て』、『佐藤信淵』、『産業統制史論 第1冊 (企業集中論)』、『時局に対する所感』、『時代と文化』、『支那事變貯蓄債券パンフレット 第3輯』、『支那事変と日清戦争』、『司馬江漢』、『自由と統制』、『自由と統制』、『自由と統制』、『壽々 [第3期] 2』、『荘園志料 上卷』、『宵二童謡集』、『昭和日本の使命』、『職員健康保険法詳解並運用手続総攬』、『女性と宗教』、『初等露西亜語文法』、『新経済全集 第1』、『信仰と生活』、『眞宗の教旨とその實践』、『青年之宗教』、『西洋美術主潮』、『世界陰謀と日本共産党』、『世界経済と合理化運動』、『世界経済と合理化運動』、『世界経済の合理化』、『世界経済の合理化』、『世界経済の常識』、『世界経済の趨向と通貨問題の将来 : 殊に米国の通商及通貨政策に就て』、『世界の動向と日本』(12)、『セメント聯合会年鑑』(昭和6年度昭和7年度昭和8年度昭和9年度昭和10年度昭和11年度昭和12年度昭和13年度昭和14年度)、『戦争はどうなる : 時局と国民の覚悟』、『大将の少年時代』、『大東亜維新の今後』、『大日本仏教全書』(第42巻 大日経疏鈔(観賢撰) 他3部第43巻第44巻第45巻 覚禅鈔 第1第46巻 覚禅鈔 第2第47巻 覚禅抄 第3第48巻 覚禅抄 第4第49巻 覚禅抄 第5第50巻 覚禅抄 第6第51巻 覚禅抄 第7第52巻第53巻 無量寿経集解(白弁述)第54巻 観経秘決集(証空撰)第55巻 観門要義鈔 第1第56巻第57巻第58巻第59巻 観経疏楷定記 第2第60巻第61巻第62巻第63巻 当麻曼荼羅註(証空撰) 他6部第64巻第65巻第66巻 一遍上人語録(知真) 他4部第67巻 他阿上人法語(真教) 他5部第68巻 防非鈔(解阿撰) 他6部第69巻 一遍上人念仏安心鈔 他5部)、『魂の故郷』、『中華民国に於ける外国人の地位 第1』、『朝暮抄』、『出島蘭館日誌 上卷』、『鉄鋼業発展史論』、『東亜経済論』、『東亜重工業論』、『なぜ玄米でなければならぬか』、『南州先生詩文鈔 巻上』、『南洋南支を観察して』、『日本金融資本論』、『日本金融資本論』、『日本工業経済通話』、『日本戦時経済読本 : 封鎖経済と日本経済の前途』、『日本戦時中小工業論』、『日本と和蘭』、『日本の憲法政治とは : 自由主義は思想的反逆 民主々義は反国体思想』、『日本列島に於ける熱帶性並亞熱帶性植物の自生北限』、『忍術からスパイ戦へ』、『巴黎国立図書館蔵敦煌遺書所見録 第1-9』、『非常時局に対して所信を述ぶ』、『氷河時代と埃及芸術』、『標準学芸会 5年用』、『福沢諭吉』、『武将夜話明日の海』、『北支経済読本』、『北支經濟讀本』、『本庄氏の興亡』、『無用語』、『孟子・荀子』、『モーツアルト』、『唯信鈔文意講義』、『楽山雑稿』、『竜子自選集 第1冊』、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』、『我が大陸経営失敗の真相』、『我らの陸軍

*10:東京市史稿』(市街篇附圖第一市街篇附圖第四)、『忍術とは?』、『契約各論 完

*11:挿画の鈴木御水(1982年没)が著作権保護期間内であるため。

*12:共著者の金親清を「著作者等の氏名」とする裁定を受けている(裁定データベースでの通番102-003147)。

*13:同一資料の重複デジタル化(マイクロからのデジタル化、原資料からのデジタル化(白黒2値)、原資料からのデジタル化(グレースケール))と思われる。

*14:編者の大久保康夫を「著作者等の氏名」とする裁定を受けている(裁定データベースでの通番102-020048)。

*15:書誌情報では出版年月日は1931となっているが、これは『大蔵大臣井上準之助君商工大臣俵孫一君招待新年宴会演説速記録』(1931年)と合綴されているためと思われる。この資料単独では1932年(昭和7年)であろう。

*16:日本列島に於ける熱帶性並亞熱帶性植物の自生北限