国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2017年8月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第39号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

恐怖の歯型
恐怖の歯型(大下宇陀児
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2017年8月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2017年8月1日から2017年8月31日までに変更のあったレコードは28,676件であった*1

7月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは353,765件であったが、8月31日までの更新を適用したデータにおいては353,817件となっており、52件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 7月末 8月末
インターネット公開(許諾) 10206 10207 +1
インターネット公開(裁定) 著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開 裁定年月日: 2012/03/01 1 0 -1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 1 1 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 41397 41397 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10; 2017/02/06 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2017/02/06 32253 32253 0
インターネット公開(保護期間満了) 269866 269918 +52
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 551893 551773 -120
館内公開 86458 86526 +68
(総計) 992116 992116 0
(内、インターネット公開分合計) 353765 353817 +52

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

8月末 総計
許諾 保護期間満了 図書館送信 館内公開
7月末 裁定
2012/03/01
1*4 1
保護期間満了 107*5 107
図書館送信 121*6 1*7 122
館内公開 38*8 2*9 40
総計 1 159 2 108 270

この表は、例えば、7月末時点では図書館送信であった図書で、8月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが121件あると読んでほしい。

館内公開や図書館送信から保護期間満了へ

先月に引き続き、他機関デジタル化資料(米国議会図書館所蔵内務省検閲発禁図書)の一部が、対応する国立国会図書館所蔵の内交本とともに、前者は館内公開から、後者は図書館送信から保護期間満了へと変更されている。

これらに関連して、「移管」の受入印*10があるもの、「受入変更」*11や「帝国図書館消印」*12で受入印を消してあるものが見られた。

NDLデジコレで資料を読んでいると、見返しに「閲覧済」と押印された紙片が貼られているのをしばしば目にする。こうした紙片には、個人を特定しない閲覧印*13が押印されていることが多い印象だが、『新露西亜風土記』の紙片では個人名の印鑑が用いられている。また、今回公開されたものではないが、『家族制度』、『英国に於ける憲政の理論と実践』には国立国会図書館の貸出カード袋*14、『ソヴェート學生の日記』、『反清算主義』には「書物は大切に」のラベルが見られる*15。当時はどのような運用となっていたのか興味深い。

パブリックドメイン図書の増加

図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1966年に没し、2017年からパブリックドメインとなったものが含まれている。

ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)を中心として、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。

小説家・詩人・翻訳家など

この記事の冒頭で書影を掲げた、大下宇陀児『恐怖の歯型』(博文館)には、扉に「博文館 日記賞」の印が捺されている。「日記賞」とは、博文館の『当用日記』に付けられた「答案用紙」に解答すると、抽選で賞品がもらえるというものだったようだ*16。どのような来歴を辿って、今、国会図書館に収められているのだろうか*17

恐怖の歯型
恐怖の歯型(大下宇陀児
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

今回保護期間満了に変更された資料のなかには、古書店で購入したラベルが残っているもの*18や、差し押さえとは無関係と思われるものであって他の図書館の蔵書印に消印がないもの*19も見られるが、近年受け入れられた図書には、受入印も受入日の標示もないため、来歴が分かりにくくなっている*20

大下宇陀児鉄の舌』奥付には、「許可番号第九五号 東京府規格外許可」の記載がある。「東京府規格外許可」については、レファ協事例が詳しい。

また、著作者が1965年に没し、2016年からパブリックドメインとなったものとして、『日本探偵小説全集』(第2篇 (森下雨村集)第3篇 (江戸川乱歩集)第5篇 (谷崎潤一郎集))がインターネット閲覧できるようになった*21

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 7月末 8月末
インターネット公開(許諾) 8 8 0
インターネット公開(保護期間満了) 72713 72713 0
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17146 17146 0
館内公開 3 3 0
(総計) 89870 89870 0
(内、インターネット公開分合計) 72721 72721 0

先月に引き続き、今月も変化はなかった。

2017年8月のNDLデジコレ追加資料

9月1日現在、国立国会図書館からのアナウンスはないが、8月には以下の資料が追加されている。

  • 雑誌135件(図書館送信108件、館内公開27件)

雑誌については、NDLデジコレの検索結果*22からは、何種類の雑誌が追加されたのか簡単に知ることはできないが、国立国会図書館サーチに登録された書誌情報から集計すると、15誌*23追加されていた。

今後のデジタル化予定

8月31日付けで国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用休止について」が更新され、以下のカセットテープ、ソノシートがデジタル化作業対象に加わった。


利用を休止する資料(平成29年8月31日現在)

資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用休止期間(予定)
カセットテープ (7) 請求記号が YL11、YL21、YL31で始まるカセットテープ 約120件(約500巻) 平成29年9月19日〜平成30年3月末(予定)
ソノシート (8) 請求記号が YMF、YMG で始まるソノシート 約200件(約700枚)
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.htmlより抜粋

また、以下のように洋雑誌のデジタル化対象が広げられており、(1) 東京本館所蔵のものについては1タイトルのデジタル化対象年度範囲が拡大、(2) 関西館所蔵のものについては4タイトルが追加されている。


利用を休止する資料(平成29年8月31日現在)

資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用休止期間(予定)
洋雑誌 (1) 東京本館所蔵の国内刊行洋雑誌
  • (Z61-E496、Z63-A335ほか)
約120タイトル(Excel: 26KB)
約470冊
平成29年8月7日〜平成30年3月末日(予定)
(2) 関西館所蔵の国内刊行洋雑誌
  • (Z51-P132、Z53-A178ほか)
約190タイトル(Excel: 35KB)
約1710冊
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.htmlより抜粋

一般競争入札公告にみる電子化予定

国立国会図書館一般競争入札公告のうち、デジタル化に関わるものを見ると、8月には新たな掲載はなかった。

先月号の補遺

7月3日の国立国会図書館デジタルコレクション書誌情報データセット更新について、先月の記事で取り上げた際、歴史的音源のtsvファイルは、なぜかシフトJISでの提供となっていることに触れ、他の資料種別のtsvファイルと同じく、UTF-8での提供が望ましいのではないだろうかと述べた。現在はUTF-8での提供となっている*24

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:無機製造工業化学 中巻

*5:研究報告集、論集、年報等の集合著作物など。

*6:Natural resources of Japan : International Studies Conference』、『赤い靈魂』、『如何すれば小売商は繁栄するか』、『絵の消えた絵馬 : 武二第三句集』、『往覲偈講話』、『科學的社會主義序論』、『覚信尼公と大谷廟堂』、『監獄部屋 : 地獄に呻く人々』、『頑張る力』、『恐怖の歯型』、『句集』、『愚禿親鸞』、『愚禿親鸞』、『経済倶楽部講演』(92第97輯)、『建皇堂拓本』、『興亜精神と仏教』、『皇軍を慰問して』、『鋼鉄はいかに鍛へられたか 第1部』、『殺人技師』、『散文時代 : 句集』、『潮騒 : 舟川栄次郎詩集』、『歯牙充填学』、『歯科薬物学』、『「史的唯物論」大系』(第1輯(總論之部)第2輯(イデオロギー論及宗教論之部))、『自然法爾章講話』、『思慕の樹』、『社会主義と帝国主義』、『社會主義の發展 : 空想から科學へ : 新譯・増補・註釋』(1930年版1931年版)、『宗教思想戰全亞細亞推進協會設立趣意書並會則 : 案』、『昭和拾二年の経営』、『昭和十三年の経営 : 日支事変第二年』、『昭和十四年の経営』、『昭和十五年の経営』、『昭和八年の経営』、『新露西亜風土記』、『真実の救ひ』、『真実の救ひ』、『真宗講説』、『真生流伝書 美之巻』、『新體制下の經濟機構』、『新文詩』(1,23,4,56,791011,1213)、『親鸞聖人御消息講義 第1輯』、『スターリンの水車へ水を運ぶ国民主義者』、『スターリンの水車へ水を運ぶ国民主義者』、『生活必需品の切符制に就て』、『聖鑑』、『聖鑑』、『一九一七年』、『戦時青年の進路』、『戦争文学全集 第9巻 (水野広徳傑作集)』、『善隣叢書 第1巻 (蒙古とはどんな処か)』、『第一次歐洲大戰より見たる今次大戰判斷』、『對外宗教思想戰實行概要』、『大恐慌とその政治的結果』、『大恐慌とその政治的結果』、『大建設の促進に就て岸商工大臣に与ふ』、『大衆罷業、党及び組合』、『大日本仏教全書』(133134135136137第138巻 本光国師日記 第1(崇伝撰)139第140巻 本光国師日記 第3(崇伝撰))、『凧 : 探偵小説傑作集 [他八篇]』、『鉄の舌』、『電力の話』、『投入盛花講座 : 別名盛瓶花講習録』、『日本イデオロギー論 : 現代日本に於ける日本主義・フアッシズム・自由主義・思想の批判』、『日本探偵小説全集』(第1篇 (小酒井不木集)第2篇 (森下雨村集)第3篇 (江戸川乱歩集)第4篇 (甲賀三郎集)第5篇 (谷崎潤一郎集)第6篇 (岡本綺堂集)第7篇 (松本泰集)第9篇 (大下宇陀児集)第9篇 (大下宇陀児集)第11篇 (夢野久作集)第14篇 (平林初之輔・橋本五郎集)第15篇 (山下利三郎・川田功集)第17篇 (長谷川伸・山本禾太郎集)第18篇 (国枝史郎・渡辺温集)第20篇 (佐藤春夫・芥川竜之介集)第20篇 (佐藤春夫・芥川竜之介集))、『農民の無産政党の国際的形勢』、『歯の常識と衛生』、『花と絵馬と気球 : 句集』、『花骨牌鬼語』、『春の通った道 : 句集』、『罷業統計に就いて』、『平易なる自動車学』、『奉公の大道』、『法然上人』、『マルクス主義芸術理論叢書 第5』、『三菱財閥論』、『民族と階級』、『「無神論」教程』(第1部(科學と宗教)第3部(宗教の起源及其役割))、『無神論と反宗教運動』、『無神論の基礎』、『明解受験算術』、『山田忍三選集』、『聊斎志異 1』、『聊斎志異』、『レーニンの反宗教思想』、『レニン綱領案及その解説』、『恋愛詩集』、『勞賃・價格および利潤』、『ロシアに於ける資本主義の發達 下卷』、『吾等の戦ひ

*7:つくえのうえのうんどうかい : なかまにはいれる子にする童話

*8:赤い靈魂』、『監獄部屋 : 地獄に呻く人々』、『皇軍を慰問して』、『鋼鐵はいかに鍛へられたか』、『壺中我觀』、『「史的唯物論」 体系』(第1輯第2輯)、『社會主義と帝國主義』、『社會主義の發展 : 空想から科學へ : 新譯・増補・註釋』(1930年版1931年版)、『從軍雜詠』、『新露西亞風土記』、『スターリンの水車に水を運ぶ國民主義者 : フランス殖民地守備軍附アルベ-ル・ガレンヌ大佐の警告』、『生活必需品の切符制に就て』、『一九一七年』、『戦争文学全集 9巻』、『大恐慌とその政治的結果』、『大衆罷業、 黨及び組合』、『日本イデオロギ一論 : 現代日本に於ける日本主義・フアッシズム・自由主義・思想の批判』、『農民の無產政黨の國際的形成』、『罷業統計に就いて』、『マルクス主義藝術理論』、『民族と階級』、『「無神論」 敎程』(第1部(科学と宗教)第2部(宗教の起源)第3部(宗教の役割))、『無神論と反宗教運動』、『無神論の基礎』、『蒙古とはどんな處か』、『聊齋誌異 第1巻』、『靈か肉か 上篇』、『レーニンの反宗敎思想』、『レニン綱領案及その解說』、『レニン綱領案及その解說』、『戀愛詩集』、『勞賃・價格および利潤』、『ロシアに於ける資本主義の發達 下卷』、『ロシヤ革命運動史 4

*9:現代の書道 第2 (行書 第1)』、『ぷーくまはなぜ : 自主性のある子にする童話

*10:監獄部屋 : 地獄に呻く人々』、『社会主義と帝国主義』など

*11:鋼鉄はいかに鍛へられたか 第1部』、『生活必需品の切符制に就て

*12:聊斎志異 1』。より判読しやすいものとして『不謹愼な寶石』が挙げられる(ツイート)。こちらは内交本だが、帝国図書館の蔵書印と受入印の上に「帝国図書館消印」が押捺されている。

*13:例えば、『永遠の良人』の紙片では、「閲十」などの漢数字のタイプ、「日付+閲1」などのタイプ、日付のみ?のタイプが用いられている(ツイート)。

*14:ツイート

*15:ツイート

*16:鄭罇旭「植民地農村青年と在日朝鮮人社会 : 慶尚南道咸安郡、周氏の日記(1933)の検討」による。

*17:4コマ目のバーコードラベルが「第128回常設展示 印の継承譜−国立国会図書館の印と印影−」にいう「標示Iラベル」であるならば、2003年以降に受け入れられた資料なのかもしれない。それ以前のように受入日が分からないのは不便なのだが、資料貼付IDから受入日が分かる方法はあるのだろうか。

*18:東京都立大学前 都立書房」(『科學的社會主義序論』)、「東京都立大学隣 都立書房」(『民族と階級』)、「早稲田大学前 敬文堂書店」(『民族と階級』)、「早稲田 神田 河鍋書肆」(『赤い靈魂』)、「道頓堀千日前南 天牛東店」(『殺人技師』)など。

*19:山田忍三選集』。蔵書印「平田市立平田図書館之印」に消印はない(追記:古狂生 @kokyose さまより、印文は「半田市立半田図書館印」ではないかとご指摘いただきました。ありがとうございます。)。

*20:蔵書印の関係では、『建皇堂拓本』は、書誌情報では出版者不明となっており、印記について注記は採られていないが、「馬嶋杏雨図書記」の蔵書印がある。

*21:改造社『日本探偵小説全集』全20巻(昭和4年)のうち14巻が今回インターネット公開に変更されている。『日本探偵小説全集』(第1篇 (小酒井不木集)第2篇 (森下雨村集)第3篇 (江戸川乱歩集)第4篇 (甲賀三郎集)第5篇 (谷崎潤一郎集)第6篇 (岡本綺堂集)第7篇 (松本泰集)第9篇 (大下宇陀児集)第9篇 (大下宇陀児集)第11篇 (夢野久作集)第14篇 (平林初之輔・橋本五郎集)第15篇 (山下利三郎・川田功集)第17篇 (長谷川伸・山本禾太郎集)第18篇 (国枝史郎・渡辺温集)第20篇 (佐藤春夫・芥川竜之介集)第20篇 (佐藤春夫・芥川竜之介集)

*22:OAI-PMHで取得できるメタデータに資料追加が反映されるまでにはタイムラグがあるため、サイト上での検索結果とメタデータの集計結果に差異が生じている。

*23:『藝備教育』、『向上』、『神戸商工会議所所報』、『國際畫報 = The international pictorial』、『芝居とキネマ = Stage and screen』、『寫眞科學』、『釀造雜誌』、『電氣 : 通俗文化雜誌』、『東亜聯盟』、『南洋群島貿易月表』、『日刊海外商報』、『日本商業雑誌』、『日本證券取引所統計月報』、『婦人日本』、『野球界』

*24:タイムスタンプは2017年8月10日。記載内容そのものに変化はない。ファイル名が変更されている点に注意。