国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2017年10月)
「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第41号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。
国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2017年10月の変動
NDLデジコレのメタデータについて、2017年10月1日から2017年10月31日までに変更のあったレコードは18,674件であった*1。
9月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは353,812件であったが、10月31日までの更新を適用したデータにおいては353,825件となっており、13件増加している。
資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 9月末 | 10月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 10180 | 10183 | +3 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 | 1 | 1*4 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 | 19 | 19 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 | 3 | 3 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 | 39833 | 37358 | -2475 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10; 2017/02/06 | 19 | 19 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2017/02/06 | 32182 | 32157 | -25 |
インターネット公開(保護期間満了) | 271575 | 274085 | +2510 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 551666 | 551570 | -96 |
館内公開 | 86640 | 86681 | +41 |
(総計) | 992118 | 992076 | -42*5 |
(内、インターネット公開分合計) | 353812 | 353825 | +13 |
さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。
10月末 | 総計 | ||||
---|---|---|---|---|---|
許諾 | 保護期間満了 | 館内公開 | |||
9月末 | 裁定 2015/11/10 |
2475*6 | 2475 | ||
裁定 2017/02/06 |
25*7 | 25 | |||
保護期間満了 | 3*8 | 100*9 | 103 | ||
図書館送信 | 95*10 | 95 | |||
館内公開 | 60*11 | 60 | |||
総計 | 3 | 2655 | 100 | 2758 |
この表は、例えば、9月末時点では図書館送信であった図書で、10月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが95件あると読んでほしい。
今月は公開範囲の変動が多かったので、便利のため、リストを作成して共有する。
- 2017年10月にインターネット公開(保護期間満了)に変更された図書2,655件の一覧(tsvファイル)
この表の他、9月末のメタデータには存在せず、10月に登録された図書が1件(館内公開*12)あった。一方、図書42件(保護期間満了*13)の資料種別が「図書」から「古典籍」に、図書1件(図書館送信*14)の資料種別が「図書」から「雑誌」に変更され、ここでの集計対象に含まれなくなったことにより、「図書」としての件数が減少している。これらから総計では42件の減少となっている。
館内公開から保護期間満了へ
館内公開から保護期間満了へと変更された図書には、活字史の上で興味深い、横浜活版社の活版印刷資料が含まれていた*15。
香港巡邏章程(明治5年)(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)
この『香港巡邏章程』の他、『邏卒勤方問答』(明治5年)も、館内公開から保護期間満了へと変更されている。
パブリックドメイン図書の増加
図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1966年に没し、2017年からパブリックドメインとなったものが含まれている。
例えば、漱石全集刊行会『漱石全集』*16(解説の小宮豊隆が1966年没)や、山根菊子『光りは東方より : [史実]キリスト、釈迦、モーゼ、モセスは日本に来住し,日本で死んでゐる』*17(題字を寄せている荒木貞夫が1966年没)などが挙げられる。
ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)を中心として、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。
小説家・詩人・翻訳家など
古典籍資料の公開範囲変更
資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 9月末 | 10月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 8 | 8 | 0 |
インターネット公開(保護期間満了) | 72778 | 72820 | +42 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 17081 | 17081 | 0 |
館内公開 | 3 | 3 | 0 |
(総計) | 89870 | 89912 | +42 |
(内、インターネット公開分合計) | 72786 | 72828 | +42 |
さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。
「著作権に関する情報」の変動 (9月末 → 10月末) | 件数 | 注 |
---|---|---|
資料種別変更 インターネット公開(保護期間満了) | 42 | *18 |
保護期間満了として公開されている図書42件の資料種別が「図書」から「古典籍」に変更され、ここでの集計対象に含まれるようになったことにより、「古典籍」としての件数が増加している。
今月の蔵書印
今月は、図書館送信から保護期間満了に変更された『Sammlung der zusammengesetzten deutschen Wörter』より、東京書籍館の蔵書票。「東京書籍館」「明治五年」「文部省創立」「TOKIO LIBRARY FOUNDED BY MOMBUSHO 1872」「THE PEN MIGHTIER THAN THE SWORD」の表示が見られる。NDLデジコレでは東京書籍館の蔵書印は良く目にするが、蔵書票は珍しいのではないだろうか。
Sammlung der zusammengesetzten deutschen Wörter(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)
2017年10月のNDLデジコレ追加資料
11月1日現在、国立国会図書館からのアナウンスはないが、10月には以下の資料が追加されている。
- 図書1件(館内公開)
- 雑誌242件(図書館送信12件、館内公開230件)*20
今後のデジタル化予定
国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用休止について」は、「平成29年8月31日現在」のまま更新はなかった。
一般競争入札公告にみる電子化予定
国立国会図書館の一般競争入札公告のうち、デジタル化に関わるものを見ると、10月には次の1件が新たに掲載されている。
一般競争入札の公告
http://www.ndl.go.jp/jp/supply/nyuusatsu/ippan/index.htmlより抜粋
通番 区分 件名 公告日 入札日 16 東京本館 日本占領関係資料の16mmマイクロフィルム資料のデジタル化 1式(PDF: 131KB) 2017年10月17日 2017年11月29日
NDLデジコレのIIIF対応
10月17日、原田久義氏(国立国会図書館)による講演「IIIFと国立国会図書館」(IIIF Japan シンポジウム)において、国立国会図書館デジタルコレクションのIIIF対応について、公開は平成30年度半ばごろを想定、実装するAPIはIIIF Image APIおよびPresentation API、対象資料は古典籍資料(インターネット公開分)を想定しているとの紹介があった。
以前の記事で取り上げた、7月27日、奥田倫子氏(国立国会図書館)による講演「IIIFへの期待:より豊かな情報資源への協働」では、IIIF Search APIにも対応予定と紹介されていたが、今回の原田氏の講演によれば、Search APIは検索の前提となるテキストデータの整備が完了していないため今後検討とのことであった。
古典籍資料からIIIF対応を進めるのは妥当な方針だろう。ジャパンサーチでのIIIF利用に関する点を含め、引き続き、詳報を楽しみに待ちたい。
*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。
*2:dcndl:materialType
*3:dcterms:rights
*4:『山梨初等教育者』。2017年11月1日現在、国立国会図書館サーチの著作権処理情報では「裁定年月日: 2012/03/01」となっているが、NDLデジコレの公開範囲 (rights)では「裁定年月日: 2017/02/06」に更新されている。変更が国立国会図書館サーチに反映されるには一定のタイムラグがあるので、いずれ反映されるだろう。
*5:新規に追加された図書による増加(1件)、一部図書の資料種別が「古典籍」や「雑誌」に変更され、「図書」の集計対象に含まれなくなったことによる減少(43件)からなる。
*6:tsvファイル参照。
*7:『宇治郡誌』、『改正衆議院議員選挙法正解』、『改正衆議院議員選挙法正解』、『株式期米相場の活顧問』(上巻、下巻)、『財政学』、『実地応用相場商機提要』、『支那正観』、『諏訪氏系図 正編』、『相場易 : 米穀株式応用自在自先大勢百発百中』、『統制経済法規違反事件に関する研究 : 統制経済犯の本質』、『読史余焔』、『奈良県磯城郡誌』、『ニユー・カレドニヤ : 南洋之大宝庫』、『晩晴楼詩鈔 第3編』、『富国論』、『不動産登記法・同法施行細則・登録税法』、『山中幸盛』、『ユートピヤ』、『林業試験報告』(第21号、第22号、第23号、第24号、第25号、第26号)
*9:講演集、研究報告集等の集合著作物など。
*10:『[Deutsch-japanisches Taschenwörterbuch, von S. Oda, S. Fudji und Sakurai』、『Notice sur l'empire du Japon et sur sa participation à L'Exposition universelle de Vienne, 1873 / publiée par La Commission impériale japonaise ; accompagnée d'un album photographique』、『Sammlung der zusammengesetzten deutschen Wörter』、『ウェークフィールドの牧師』、『英文世界名著全集 第33巻』、『英和字彙 : 附・音插図』、『英和対訳辞書』、『大鏡新抄』、『陽炎』、『陽炎』、『株式利殖の理論と実際』、『伎芸天』、『伎芸天』、『伎芸天 : 歌集』、『紀行文集山海記』、『虞列伊氏解剖訓蒙圖』([乾]、坤)、『訓蒙窮理問答』(巻一、巻二、巻三、巻四、巻五、巻六)、『啓蒙養生訓』、『高等教育波動論・音響学・光学』、『高等教育物理学計算問題集』、『高等教育力学・物性・熱学』、『国初聖蹟歌』、『国文学講座 第7巻』、『国文法備要』、『国文法備要』、『サーティ・フェィマス・ストーリズ』、『最新力学』、『鵲 : 満鮮歌鈔』、『鵲 : 満鮮歌鈔』、『山海経』、『山海経 : 歌集』、『史歌太平洋戦』、『史歌熱帯作戦』、『守国公御伝記 3』、『植物界表解』、『青淵』、『青淵』、『西洋時計便覧』、『山海経』、『漱石全集』(第2卷(短篇小説集)、第3卷(虞美人艸・坑夫)、第5卷(彼岸過迄・行人)、第2巻、第7巻、第10巻、第11巻、第12巻、第13巻、第14巻、第15巻、第16巻、第17巻、第19巻)、『祖国の山河 : 長篇小説』、『其粉色陶器交易』(上、中、下)、『大日本仏教全書』(97、149、150)、『太陽太陰両暦対照表』、『大陸に明星ありき』、『中等學校入學及第一學年受驗書豫備算術』、『徴兵令 : 官版』、『日講筆記 別冊』、『日本地理』、『日本地理』、『日本地理表解』、『日本文学大系 第13巻』、『祝詞宣命 : 校註』、『万国通商往来 : 頭書・挿画』、『光りは東方より : [史実]キリスト、釈迦、モーゼ、モセスは日本に来住し,日本で死んでゐる』、『光りは東方より』、『光りは東方より』(キリストの巻、釈迦の巻)、『病院経験方府 : 2巻附1巻』(上、後帙)、『評釈日本歌集』、『藤原定家』、『物理學』(前編、後編)、『風土記と古代日本』、『文化の物理学』、『無機化学要義 : 受験参考』、『鯉魚集』、『立秋 : 歌集』、『旅雁 : 歌集』、『和英通語』、『鷲 : 歌集』
*11:『漱石全集』(第1巻、第3巻、第4巻)、『馬術競技 昭和8年度 第4輯』、『改定律例 合巻』、『憲法類編』(第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、第九、第十、第十一、第十二、第十三、第十四、第十五、第十六、第十七、第十八、第十九、第二十、第二十一、第二十二、第二十三、第二十四、第二十五、第二十六、第二十七、第二十八)、『香港巡邏章程 全』、『合衆国政治小学』(一、二、三)、『国法汎論』(上帙 第一冊、下帙 第二冊、下帙 第三冊、下帙 第四冊、下帙 第五冊、下帙 第六冊、下帙 第七冊、下帙 第八冊、下帙 第九冊、下帙 第十冊、下帙 第一冊)、『仏国政典』(二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二)、『邏卒勤方問答 全』
*12:『東京府統計表 明治14年』。提供者は「国立国会図書館電子図書館課_201」となっている。
*13:『射學雜纂』(第1冊 一、第1冊 二、第1冊 三、第1冊 四、第2冊 乾、第2冊 坤、第3冊 1-2、第3冊 3-5、第4冊、第5冊、第6冊、第7冊、第8冊、第9冊、第10冊、第11冊、第12冊、第13冊、第14冊、第15冊 上、第15冊 中、第15冊 下、第16冊-第19冊、第20冊、第21冊、第22冊、第23冊、第24冊、第25冊、第26冊、第27冊、第28冊、第29冊 天、第29冊 地、第29冊 人)、『論衡 30卷』(巻1−3、巻4−7、巻8−11、巻12−16、巻17−20、巻21−25、巻26−30)
*14:『エカフェ資料 = Japan ECAFE bulletin』
*15:今回公開範囲変更されたもの以外では、文化庁長官による裁定を受けて『孛仏交兵記』(元、享)が公開されている。
*16:『漱石全集』(第2卷(短篇小説集)、第3卷(虞美人艸・坑夫)、第5卷(彼岸過迄・行人)、第1巻、第2巻、第3巻、第4巻、第7巻、第10巻、第11巻、第12巻、第13巻、第14巻、第15巻、第16巻、第17巻、第19巻)。第1巻、第3巻、第4巻は、館内公開から保護期間満了への変更。
*17:他に、山根菊子『光りは東方より』、『光りは東方より』(キリストの巻、釈迦の巻)も保護期間満了に変更されている。NDLデジコレでは、昨年1月には、酒井勝軍『三千年間日本に秘蔵せられたるモーセの裏十誡』や、仲木貞一『キリストは何故日本に来たか? : その遺跡を探る』)、今年1月には、鳥谷幡山『十和田湖を中心に神代史蹟たる霊山聖地之発見と竹内古文献実証踏査に就て併せて猶太聖者イエスキリストの王国(アマツクニ)たる吾邦に渡来隠棲の事蹟を述ぶ』が保護期間満了に変更されている。「と」の当たり年か。
*18:『射學雜纂』(第1冊 一、第1冊 二、第1冊 三、第1冊 四、第2冊 乾、第2冊 坤、第3冊 1-2、第3冊 3-5、第4冊、第5冊、第6冊、第7冊、第8冊、第9冊、第10冊、第11冊、第12冊、第13冊、第14冊、第15冊 上、第15冊 中、第15冊 下、第16冊-第19冊、第20冊、第21冊、第22冊、第23冊、第24冊、第25冊、第26冊、第27冊、第28冊、第29冊 天、第29冊 地、第29冊 人)、『論衡 30卷』(巻1−3、巻4−7、巻8−11、巻12−16、巻17−20、巻21−25、巻26−30)
*19:「文部省書庫」(「書庫引継之証」)「文部省普通学務局図書之章」「文部省学務課」など。
*20:『赤い鳥』、『旺文社大学受験ラジオ講座テキスト』、『キンダーブック』、『コドモアサヒ』、『コドモノクニ』、『子供のテキスト : ラヂオ』、『子供之友』、『小学二年の学習』、『小学四年生』、『小学四年の学習』、『小学六年』、『小学六年生』、『小学六年の学習』、『少国民の友』、『少女画報』、『少女倶楽部』、『少女の友』、『少年倶樂部』、『少年少女譚海』、『たのしい四年生』、『譚海 : 科學と國防』、『チャイルドブック』、『チャイルドブック・ゴールド : みんなともだち』、『中学一年コース』、『中学コース』、『中学時代三年生』、『ツバメノオウチ』、『童話』、『2年のかがく』、『2年の学習』、『ひかりのくに』、『漫画王』、『ミクニノコドモ』、『よいこのくに』、『幼女の友』、『幼稚園ブック』、『幼年園』、『幼年畫報』、『幼年倶樂部』、『幼年クラブ』、『幼年雑誌』、『幼年の友』、『幼年ブック』、『6年の学習』、『ワンダーブック』