国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2017年11月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第42号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2017年11月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2017年11月1日から2017年11月30日までに変更のあったレコードは10,249件であった*1

10月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは353,825件であったが、11月30日までの更新を適用したデータにおいては353,833件となっており、8件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 10月末 11月末
インターネット公開(許諾) 10183 10184 +1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 1 0 -1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 37358 37355 -3
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10; 2017/02/06 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2017/02/06 32157 32158 +1
インターネット公開(保護期間満了) 274085 274095 +10
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 551570 551463 -107
館内公開 86681 86780 +99
(総計) 992076 992076 0
(内、インターネット公開分合計) 353825 353833 +8

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

11月末 総計
許諾 裁定
2017/02/06
保護期間満了 館内公開
10月末 許諾 1*4 1
裁定
2012/03/01
1*5 1
裁定
2015/11/10
2*6 1*7 3
保護期間満了 98*8 98
図書館送信 2*9 105*10 107
館内公開 1*11 1
総計 2 1 108 100 211

この表は、例えば、10月末時点では図書館送信であった図書で、11月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが105件あると読んでほしい。

パブリックドメイン図書の増加

図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1966年に没し、2017年からパブリックドメインとなったものが含まれている。

ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)を中心として、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。

学者・宗教家など

他に、山崎靖純(経済評論家)などの著作物にも保護期間満了への変更が見られた。

政治家・官僚・軍人・実業家など

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 10月末 11月末
インターネット公開(許諾) 8 8 0
インターネット公開(保護期間満了) 72820 72869 +49
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17081 17032 -49
館内公開 3 3 0
(総計) 89912 89912 0
(内、インターネット公開分合計) 72828 72877 +49

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (10月末 → 11月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 49 *12
今月の蔵書印

今月は、図書館送信から保護期間満了に変更された『人事興信録 第12版上』より、「東京 満鉄総裁室」「15.10.24」の受入印。また、満鉄マーク入りの請求記号欄も見られるが、記入はない。

人事興信録. 第12版上
人事興信録. 第12版上
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

ここで「東京 満鉄総裁室」とあるのは、満鉄本社(大連)にある部屋としての総裁室ではなく、本社に置かれた部署としての総裁室のうち東京在勤のものを指しているのだろう。

社員録. 昭和15年7月1日現在
社員録. 昭和15年7月1日現在(南満州鉄道総裁室人事課)
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

なお、今回保護期間満了に変更された資料ではないが、例えば『上海入出港船舶』には、「満鉄 東京支社図書印」も見られる。

上海入出港船舶
上海入出港船舶
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

2017年11月のNDLデジコレ追加資料

12月1日現在、国立国会図書館からのアナウンスはないが、11月には以下の資料が追加されている。

  • 雑誌16件(図書館送信)*13

一方、2017年3月に新規追加された憲政資料(長崎省吾関係文書)(静止画資料扱い)のうち、保護期間満了としてインターネット公開されていた博文館『太陽』第8巻第3号明治35年3月5日)は、国立国会図書館デジタルコレクション上から削除された。

今後のデジタル化予定

11月22日付けで国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用休止について」が更新され、以下の古典籍資料がデジタル化作業対象に加わった。


利用を休止する資料(平成29年11月22日現在)

資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用休止期間(予定)
古典籍 (9) 請求記号が 特1001-5〜特1003-23 のものの一部等 114件(Excel: 11KB)
約420冊
平成29年12月22日〜平成30年3月末日(予定)
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.htmlより抜粋

デジタル化対象リストに挙げられた古典籍資料には、過去に電子展覧会「江戸時代の日蘭交流」で取り上げられた『装剣奇賞』や『日本風俗備考』、同「蔵書印の世界」で取り上げられた『[諸国産物絵図帳]』(「寶玲文庫」印あり)、企画展示「続・あの人の直筆」で紹介された『最近宇宙進化論梗概*14、ミニ電子展示「本の万華鏡」などで取り上げられた『江戸自慢』*15が含まれている。

他に、江戸庶民の見たハリスやヒュースケンの絵なども掲載されているという*16ゑひすのうわさ』や、東京湾要塞(東京湾海堡)に関する記録などを含む『現代本邦築城史』(陸軍築城部本部 編)、「光悦本や元和卯月本の実葉が惜し気も無く貼付されている」という*17謡本於裳佳介』などもデジタル化対象に挙げられており、公開が楽しみな内容となっている。

国立国会図書館デジタルコレクションでは、古典籍資料(インターネット公開分)を対象として、平成30年度半ばごろよりIIIF対応での公開を想定しているそうなので、今回デジタル化される資料が公開されるころには(今回のものも含めて)IIIF対応で閲覧できるようになっていることだろう。

国立国会図書館の電子展示会でも、IIIFの機能を活用した展示(例えば、『日本風俗備考』原書と翻訳の比較をIIIFビューワを用いて行うなど)も考えられるかもしれない。さまざまな研究や利活用が生まれるものと期待したい。

一般競争入札公告にみる電子化予定

国立国会図書館一般競争入札公告のうち、デジタル化に関わるものを見ると、11月には次の2件が新たに掲載されている。


一般競争入札の公告

通番 区分 件名 公告日 入札日
6 東京本館 古典籍資料(貴重書等)の原資料からの電子化 1式(PDF: 162KB) 2017年11月6日 2017年12月15日
9 東京本館 憲政資料(文書類)の原資料からの電子化 1式(PDF: 161KB) 2017年11月15日 2017年12月26日
http://www.ndl.go.jp/jp/supply/nyuusatsu/ippan/index.htmlより抜粋

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:司法資料 第44号 (英国法律生活概要及国ノ刑事控訴制度)

*5:山梨初等教育者

*6:『園芸十二ケ月』(〔正〕

*7:護国のもとひ

*8:研究報告集、講演集等の集合著作物など。

*9:蒙古民間故事』、『蒙古語独習書 第2巻(単語及文の基礎)

*10:嵐を前に』、『阿波の尊徳 : 伝記小説』、『イエス・キリストの教会』、『一真実の世界』、『一真実の世界』、『上杉房定の人物』、『英国漁民講習会教案 : 英国リバプール臨海実験場編成』、『英国の海賊性を衝く』、『栄養の適応と体質改善』、『栄養の適応と体質改善』、『隠れていまし給ふ神』、『隠れてゐまし給ふ神』、『火成岩の石理及微細構造』、『黴の生えた貞操 : 武野藤介コント集』、『神の言としてのイエス・キリスト』、『感恩碑の由来』、『関西経済倶楽部講演 第1輯 (新税法の個人及法人に及ぼす利害、第二次満洲建設をめぐる諸問題)』、『完全営養と玄米食』、『共産党を吾等が排撃する五つの理由』、『キリスト者の生活』、『経済倶楽部講演 131』、『經濟の現地位と其の將來』、『決戦下産報人に愬ふ : 時局突破大講演会速記録』、『濠洲』、『国体信仰講座』(第2巻第4巻)、『産報の理念と実践 : 特に生産技術者諸君に対して』、『思想と時局問題 : 大義名分の昂揚』、『思想犯人の保護を中心として』、『時代の覚醒. 時勢と宗教』、『指導者民族の優生学的維新』、『暹羅の米作事業』、『純忠足助公を偲びて其の無幣祀を慨く』、『新エルサレムとその教説』、『人事興信録』(第12版上第12版下第13版上第13版下)、『神智と神愛』、『新日本同盟会報 昭和10年4月』、『新約聖書要解 第2巻』、『神慮論』、『スエデンボルグ』、『青年の宗教』、『聖霊』、『禅百題』、『禅と日本人の気質』、『禅とは何ぞや』、『禅の研究』、『禅の研究』、『禅の思想』、『禅の第一義』、『禅の見方と行ひ方』、『戦局の展望』、『戦費と貯蓄 : 石井総裁ラヂオ講演』、『禅問答と悟り』、『大日本仏教全書』(第151巻 十巻鈔 第1 諸仏部 上第152巻 十巻鈔 第2 諸仏部 下第153巻 十巻鈔 第3 経部第154巻 十巻鈔 第4 菩薩部 上第155巻 十巻鈔 第5 菩薩部 下第156巻 十巻鈔 第6 観音部 上第157巻 十巻鈔 第7 観音部 下第158巻 十巻鈔 第8 忿怒部第159巻 十巻鈔 第9 天部 上第160巻 十巻鈔 第10 天部 下)、『堆肥の新しい研究』、『高く尊き看護婦の使命』、『独逸戦勝の原動力』、『独逸の観光及び経済事情に就て : 長井亜歴山氏講演概要』、『東西女性發達史』、『燉煌出土少室逸書』、『内科學』、『内科的診斷學』、『なぜ玄米でなければならぬか : 栄養上経済上より見たる玄米白米等の比較優劣図表並に其の解説』、『ナチス独逸の外交』、『ナチス独逸の国勢と興隆史』、『南方問題と蘭領印度. 世界の新傾向と我が新體制. 世界新秩序の方向と日本經濟革新問題』、『新潟県史要』、『日本組合基督教会』、『非常時局読本』、『非常時局読本』、『仏果碧巌破関撃節 上』、『仏果碧巌破関撃節』(別冊)、『仏教の基本的諸概念』、『葡萄之枝文庫 第3』、『ふらんす語手ほどき : 四十時間分』、『芳香族性航空基ガソリンの研究 第5報 (綜説)』、『法華経に関する諸問題』、『本庄氏の興亡』、『前橋商業史と下村善太郎翁』、『瞼の奇蹟 : 帰還兵小説集』、『耳で物を喰べる話 : 附・新宗教を創るもの』、『有機製造工業化学』(上巻中巻下巻)、『優生運動』、『爆笑掌中小説 : 泣き笑ひの人生裏街道』、『吉野朝の越後勤王党』、『楞伽経』、『労働と栄養 : 農村の栄養状態改善について』、『六租壇経』([本編]解説

*11:東京府統計表 明治14年

*12:『舊唐書逸文12卷』([1][2][3][4])、『舊唐書校勘記』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31][32][33][34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44][45]

*13:『電気試験所彙報』、『電試ニュース』、『歴史地震

*14:企画展示「続・あの人の直筆」

*15:「本の万華鏡」(第21回 大豆 -粒よりマメ知識-)レファ協事例「文人番付(『江戸じまん』所収)の全頁複写を希望しております。…」

*16:港区立港郷土資料館『江戸の外国公使館 : 開国150周年記念資料集』、港区麻布地区総合支所『ザ・AZABU』第23号による。

*17:樹下文隆「稀本零葉集索引稿番外編『謡本於裳佳介』の零葉」による。