国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年2月)

国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を淡々と追い続ける「月刊NDLデジコレメタデータWatch」、今月は小ぶりな記事となった。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2015年2月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2015年2月1日から2015年2月28日までに変更のあったレコードは26,599件であった*1

1月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは349,801件であったが、2月28日までの更新を適用したデータにおいては349,820件となっており、19件増加している(後述するように、厳密にはこれより1件少ない)。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 1月末 2月末
インターネット公開(許諾) 6990 6995 +5
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 58 58 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18; 2010/12/27 10 10 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 48522 48521 -1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 28 28 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 32498 32493 -5
インターネット公開(保護期間満了) 261695 261714 +19
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 506812 506789 -23
館内公開 60106 60113 +7
info:ndljp/pid/1681530 0 1 +1
(総計) 916719 916722 +3
(内、インターネット公開分合計) 349801 349820 +19

ここで、著作権に関する情報が「info:ndljp/pid/1681530」と設定されている1件『Saito's idiomological English-Japanese dictionary = 熟語本位英和中辭典』は、著者である斎藤秀三郎(1929年没)の著作権保護期間が満了していること、同書の別版4件(後述)がいずれも2月16日付けで「国立国会図書館/図書館送信参加館内公開」から「インターネット公開(保護期間満了)」に変更されていること、別版4件に加え当該資料も国立国会図書館や図書館送信参加館に限らずインターネットで閲覧できていることから、本来「インターネット公開(保護期間満了)」とすべきところを誤って「info:ndljp/pid/1681530」としてしまったものと考え、インターネット公開分合計に計上した。

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。











2月末総計
許諾裁定
2012/03/01
保護
期間
満了
館内公開info:ndljp/pid/1681530
1月末許諾1*41
裁定
2010/12/27
1*51
裁定
2012/03/01
6*66
保護期間
満了
28*728
図書館
送信
21*81*91*1023
館内公開1*1122*1223
総計614430182

この表は、例えば、1月末時点では館内公開であった図書で、2月末にはインターネット公開(保護期間満了)になっているものが22件あると読んでほしい。

この表の他、2014年11月24日付けで書誌情報が削除されていた『北海道庁布令全書』3件が、2月2日付けで再び「インターネット公開(保護期間満了)」として公開された。

パブリックドメイン図書の増加

1月の公開範囲変更に引き続き、2月もパブリックドメイン図書の増加が見られた。

館内公開から保護期間満了に変更された図書の中には、著作者が1964年に没し、2015年にパブリックドメイン入りした次の図書が含まれている。

その他、館内公開から保護期間満了に変更された図書には次の辞書も含まれる。

  1. J.C. Hepburn
  2. W.H. Medhurst
  3. Noël, Chapsal

1.は、J.C.ヘボンによる和英・英和辞書。「『和英語林集成』各版解説」によれば、今回NDLデジコレでインターネット公開されたものは、『和英語林集成』初版(ロンドン版)であろうか。

2.は、W.H.メドハーストによる和英・英和辞書。同書は日本では『英語箋』(1857-1863年)として翻刻されている。原書では「Printed by Lithography. 1830.」となっているところ、『英語箋』では「PRINTED BY LITHOGRAPNY 1839」となっており、大文字小文字の変換はできているのに、hとnを間違える、0と9を間違えるなど、当時の苦労がしのばれる。

3.は、ノエル、シャプサル共著によるフランス語文法書を日本で翻刻したもの(『法朗西文典』『法朗西文典後編』)。「葵文庫に見る辞書辞典の系譜/法朗西文典」に同資料の解説がある。

また、1月22日付けで図書館送信対象から館内公開に変更されていた『[柱暦]』が、2月16日付けで保護期間満了資料として返ってきた。

図書館送信から保護期間満了に変更された図書の中には、先ほども述べた次の辞書が含まれる。

2月の公開範囲変更では、これまで見たようにいくつかの辞書がインターネット公開に変更されているが、なにか辞書や洋学に関係する企画展でも行われるのだろうか。

その他、図書館送信から保護期間満了に変更された図書には『日立電話』という資料もある。日立製作所による1941年の電話機の目録で、「HT-1 万能型携帯電話機」という製品などもあるが無線式ではない。

裁定から許諾へ

インターネット公開(裁定)からインターネット公開(許諾)に変化した図書には、次の図書が含まれる。

宇野千代の他の著作は図書館送信もしくは館内公開であり、なぜこの4件が許諾になったのか(そもそもなぜ裁定になっていたのか)分からないが、そうしたケースは枚挙に暇がないのでここではおいておく。

保護期間満了から館内公開へ

インターネット公開(保護期間満了)から館内公開に変更された図書28件のうち多くは、いつものように集合著作物であったが、その他に三津木春影による探偵小説『呉田博士 : 探偵奇譚』5件(第1編〜第4編、第6編)が含まれていた。これは2008年に復刻版が出版されているようだが、その点と館内公開への変更は関係があるのだろうか。

古典籍資料の公開範囲変更

1月の公開範囲変更の記事で、古典籍資料の一部が館内限定に変更されたことを取り上げた。

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 1月末 2月末
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 13 13 0
インターネット公開(保護期間満了) 67403 67410 +7
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17702 17700 -2
館内公開 452 447 -5
(総計) 85570 85570 0
(内、インターネット公開分合計) 67416 67423 +7

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報 (dcterms:rights)の変動 (1月末 → 2月末) 件数
館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 5 *14
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 2 *15

1月22日付けで図書館送信から館内限定に変更されていた『一切經音義25卷附補訂新譯大方廣佛華嚴經音義2卷校勘記1卷』4件が、2月16日付けでインターネット公開(保護期間満了)として返ってきている。

また、『敦煌等經文』は、全43件のうち41件は既に保護期間満了に変更されていたが、残る2件は図書館送信のままとなっていた。今回、2月2日付けで残りの2件も保護期間満了に変更された。

館内限定に変更されたままの古典籍資料はまだ多く存在するが、著作権状態の確認が完了し、『一切經音義25卷附補訂新譯大方廣佛華嚴經音義2卷校勘記1卷』のようにインターネット公開資料として返ってくることを期待したい。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:水彩画初歩

*5:鯨海酔侯』(坂本龍馬を主人公とした小説『汗血千里駒』の著者としても知られる坂崎紫瀾による山内容堂伝)

*6:幸福』、『脂粉の顔』、『現代短篇小説選集』、『白い家と罪 : 他四篇』、『産婆看護婦必携』など。

*7:郷土史稿や展覧会図録、論文集などの集合著作物や合綴されている資料の著作権保護期間が満了していないもの。その他、三津木春影の『呉田博士 : 探偵奇譚』5件やアコーディオン楽譜1件など。

*8:尾張名所図会』13件(前編巻1-7、後編巻1-6)、『日本之名勝』、『宗家と朝鮮』、『日立電話』、『宮廷写真帖』、『Saito's idiomological English-Japanese dictionary = 熟語本位英和中辭典』および別版3件(その1その2その3

*9:一筋の道

*10:Saito's idiomological English-Japanese dictionary = 熟語本位英和中辭典

*11:印度と南洋

*12:現代重役論』、『川村多実二洋画集』、『池大雅』、『夫婦者と独身者』、『好人物』、『仏蘭西文芸閑談』、『人形の家』、『悲しき遍路・復讐・霧』、『詩歌の道』、『想華 : 名作選集』、『小鳥の友』、『修道院詩集』、『修道院雑筆』、『トラピスト歌集』、『A Japanese and English dictionary : with an English and Japanese index』、『An English and Japanese,and Japanese and English vocabulary,compiled from native works』、『Abrégé de la grammaire française』(前編後編)、『[柱暦]』、『日比谷公園音楽堂演奏曲目解説集』、『今宮町志』、『タルタラン・ド・タラスコン

*13:メタデータ著作権に関する情報は記載ミスと思われる。

*14:『一切經音義25卷附補訂新譯大方廣佛華嚴經音義2卷校勘記1卷』([1][2][3][4])、『[柱暦]

*15:敦煌等經文』([24][32]