国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2017年9月)
「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第40号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。
国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2017年9月の変動
NDLデジコレのメタデータについて、2017年9月1日から2017年9月30日までに変更のあったレコードは13,404件であった*1。
8月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは353,817件であったが、9月30日までの更新を適用したデータにおいては353,812件となっており、5件減少している。
資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 8月末 | 9月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 10207 | 10180 | -27 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 | 1 | 1 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 | 19 | 19 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 | 3 | 3 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 | 41397 | 39833 | -1564 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10; 2017/02/06 | 19 | 19 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2017/02/06 | 32253 | 32182 | -71 |
インターネット公開(保護期間満了) | 269918 | 271575 | +1657 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 551773 | 551666 | -107 |
館内公開 | 86526 | 86640 | +114 |
(総計) | 992116 | 992118 | +2 |
(内、インターネット公開分合計) | 353817 | 353812 | -5 |
さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。
9月末 | 総計 | |||
---|---|---|---|---|
保護期間満了 | 館内公開 | |||
8月末 | 許諾 | 2*4 | 25*5 | 27 |
裁定 2015/11/10 |
1564*6 | 1564 | ||
裁定 2017/02/06 |
71*7 | 71 | ||
保護期間満了 | 89*8 | 89 | ||
図書館送信 | 107*9 | 107 | ||
館内公開 | 2*10 | 2 | ||
総計 | 1746 | 114 | 1860 |
この表は、例えば、8月末時点では図書館送信であった図書で、9月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが107件あると読んでほしい。
今月は公開範囲の変動が多かったので、便利のため、リストを作成して共有する。
- 2017年9月にインターネット公開(保護期間満了)に変更された図書1,746件の一覧(tsvファイル)
この表の他、8月末のメタデータには存在せず、9月に登録された図書が2件(館内公開*11)あった。
裁定から保護期間満了へ
今月は、文化庁長官裁定を受けてのインターネット公開から、保護期間満了によるインターネット公開へと切り替えられた資料が多く見られた。
和様二号活字の宝庫、千家尊福『教会撮要』(明治10年)もその一つであり、「インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10」*12から「インターネット公開(保護期間満了)」に変更されている。これにより、国立国会図書館への転載依頼なしに和様二号活字用例画像を二次利用できることとなった。
教会撮要(千家尊福)(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)
保護期間満了から館内公開へ
インターネット公開(保護期間満了)から館内公開に変更された図書89件には、観世流改訂本刊行会による「観世流新稽古本」13件が含まれていた。
謡本関係では、2014年9月に観世流謡本(大成版)166点のインターネット公開が停止されているほか、2015年8月には『[宝生流謡本]』18件が保護期間満了から館内公開へと変更、同9月には『[宝生流謡本]』19件が裁定から館内公開へと変更、また2017年4月には『[宝生流謡本]解説備考』40件が裁定から館内公開へと変更されている。
過去のケースでの、観世流謡本(大成版)の出版者(H書店)、宝生流謡本の出版者(W書店)、そして今回のケースでの観世流稽古本の出版者(N書林)と、出版者はそれぞれ別であるが、やはり「商業出版に対する何らかの考慮の必要性」*13からなされたインターネット公開停止措置であろうかと見てしまいがちだ。しかし、今回の「観世流新稽古本」については、「観世流改訂本刊行会編纂部」による団体名義の著作物として扱っていたものを、「観世流改訂本刊行会 編纂部代表 丸岡明」の著作物として扱うことに変更したものかもしれない(丸岡明は1968年没であり保護期間内)。
パブリックドメイン図書の増加
図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1966年に没し、2017年からパブリックドメインとなったものが含まれている。
ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)を中心として、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。
学者・宗教家など
政治家・官僚・軍人・実業家など
- 荒木貞夫(陸軍軍人・政治家)
- 『荒木陸軍大臣閣下御講演要旨』
- 『非常時日本の同胞に愬ふ』
- 『非常時認識と青年の覚悟』、『非常時の認識と青年の覚悟』
- 『軍・青年に与ふ』
- 高瀬荘太郎(政治家・会計学者)
- 『会計読本』、『会計読本』
- 『物價對策としての利潤統制』
古典籍資料の公開範囲変更
資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 8月末 | 9月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 8 | 8 | 0 |
インターネット公開(保護期間満了) | 72713 | 72778 | +65 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 17146 | 17081 | -65 |
館内公開 | 3 | 3 | 0 |
(総計) | 89870 | 89870 | 0 |
(内、インターネット公開分合計) | 72721 | 72786 | +65 |
さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。
「著作権に関する情報」の変動 (8月末 → 9月末) | 件数 | 注 |
---|---|---|
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) | 65 | *14 |
2017年9月のNDLデジコレ追加資料
10月1日現在、国立国会図書館からのアナウンスはないが、9月には以下の資料が追加されている。
- 図書2件(館内公開)
- 雑誌62件(図書館送信32件、館内公開30件)*15
- 静止画資料1件(保護期間満了)
静止画資料については、『モージャー氏撮影写真資料』*16が追加され、インターネット公開されている。国立国会図書館リサーチ・ナビの資料説明によれば、1946年4月から1947年1月にかけて撮影された日本各地のカラー写真(304枚)とのこと*17。
今後のデジタル化予定
国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用休止について」は、「平成29年8月31日現在」のまま更新はなかった。
*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。
*2:dcndl:materialType
*3:dcterms:rights
*4:『愛国婦人会隣保館概要 第3輯』、『方面叢書 第18輯』
*5:『英文選解』、『教育年鑑 昭和10年版』、『行政一部補講 : 官吏法』、『原子物語』、『校外生活指導上より観たる健児教育概論』、『国文新選教授参考書 2』、『国法学 : 高文参考 1』、『国民健康保険法令と解説』、『国民健康保険法令と解説』、『堺市制施行五十年誌』、『産業組合調査資料 第1』、『司法資料 第8号』、『常会』、『青年学校教科書』、『鳥羽村誌』、『内閣印刷局七十年史』、『服部富造君 : 元イマン居留民会長』、『標準学芸会 4学年用』、『方面叢書』(第12輯、第13輯、第16輯、第17輯、第20輯)、『躍進日本の全貌 : 附・世界の驚異』、『分り易い産業報国運動の解説とその美談』
*6:tsvファイル参照。
*7:『愛知県史蹟名勝天然紀念物調査報告』(第4、第5 史蹟其三 天然紀念物其五、第6 史蹟其四 天然紀念物其六、第7 史蹟其五 天然紀念物其七、第8 史蹟其六 名勝其一 天然紀念物其八、第9 史蹟其七 名勝其三 天然紀念物其九、第10 史蹟其八 名勝其四 天然紀念物其十、第11 史蹟其九 名勝其二 名勝及天然紀念物其十一)、『赤穂義士』、『一泊旅行土曜から日曜』、『科学より見たる趣味の旅行』、『学理実験米麦増収栽培法』、『紀伊南竜公』、『義士の討入』、『教卓四十年史』、『禁酒美談』、『近世歯科全書 第4巻』、『近世歯科全書 第4巻』、『経済学の建設者』、『検察、裁判及行刑ノ目的ト司法保護 第1輯』、『現代軍部論』、『校長及視学のために』、『国語教育の根本問題』、『御朱印船 : 貿易史伝』、『作文新編 巻5』、『三都花街めぐり』、『自我に芽ぐむ綴方教授原理』、『四季収穫蔬菜栽培法』、『事業と人物』、『自然美之考察』、『自然論』、『児童ノ体質改良ヲ目的トセル避暑保養所成蹟』、『支那事変に関する意見』、『小学校に於ける化学教材の研究並に実験法』、『小学校に於ける化学教材の研究並に実験法』、『食物彙纂』、『恕軒遺稿』(上、下)、『新撰薬物名彙』、『聖書より見たる次の世界大戦争』、『大学中庸釈義 : 合本』、『大日本の国是と全世界の帝王』、『高島秋帆先生紀功碑建設報告』、『旅の科学』、『長夜の大灯』、『珍味を求めて舌が旅をする』、『東京近郊写真の一日』、『土曜から日曜』、『南洋の人』、『西成郡史』(第1編 第2編 第3編 第4編 第5編、第6編)、『人間味を根底としたる国語教育』、『芭蕉門古人真蹟』、『浜松市全図 附・接続部落』、『蛮国細菌会議』、『日がへりの旅 : 郊外探勝』、『人と酒』、『仏菩薩一斑』、『文章軌範詳説』、『文章入門』、『平家物語 : 縮刷』、『法華経の行者日蓮上人』、『明治実業読本詳釈』、『杢兵衛東京見物京都見物戦争見物』、『安くて便利な新しい海浜へ』、『四五日の旅 : 名所囘遊』、『四五日の旅 : 名所囘遊』、『療養本位温泉案内』、『療養遊覧新海浜案内』、『療養遊覧山へ海へ温泉へ』、『老子哲学大道教釈義』
*8:研究報告集、講演集、資料等の集合著作物など。他に、観世流改訂本刊行会による「観世流新稽古本」13件も館内限定に変更された。
*9:『新らしき宗教生活』、『荒木陸軍大臣閣下御講演要旨』、『ヴアレリイ詩抄』、『宇宙の秩序 : 無双原理世界観・永遠なるものゝ姿』、『ウナギの無双原理 : 新しい立身出世の秘訣』、『会計読本』、『会計読本』、『覚如上人の伝統』、『花実集』(1冊、2冊)、『家庭食療読本』、『寛永銭記』、『教行信証概説』、『軍・青年に与ふ』、『警官必携拳法図解』、『桂剣集』、『語彙 巻1』、『校正万葉集通解』([5]、[14]、[15]、[18])、『皇太子聖徳奉讃概説』、『國語學』、『自修露西亜語文法・会話』、『自然医学 : 食物療法総覧』、『自然医学としての神道 : 祝詞の生理学』、『宗教の現実性』、『朱子書節要』(巻之1,2、巻之3,4、巻之5,6、巻之7,8、巻之9,10、巻之11,12 、巻之13,14、巻之15,16、巻之17,18、巻之19,20 )、『正信念仏偈講讃』、『正信偈十講』、『浄土真宗の認識と実践』、『食物と人生 : 『食』断章・真生活運動の指針』、『食養人生読本』、『人事興信録』(第15版 上、第15版 下)、『真宗小観』、『真宗相承の系譜』、『真宗提要』、『真宗提要』、『真宗の教旨と実践』、『真宗の教旨とその実践』、『人生と宗教』、『身土不二の原則 : 神ながらの食しものゝ道』、『親鸞聖人の三経観』、『聖恩』、『聖恩』、『聖教講讚』、『靖献遺言訓蒙疏義 巻之1-3』、『聖容』、『聖容』、『青嵐 : 詩集』、『大経五悪段講話』、『大信讚嘆』、『泰西勸善訓蒙』(前編上、前編中、前編下)、『泰西農學 : 官版』(初篇上、初篇下、二篇上、二篇下、三篇上、三篇下、附錄乾、附錄坤)、『大戦学理 上巻』、『大道の顕示』、『大日本仏教全書』(141、142、143、144、145、146、147、148)、『正しい食物について』、『歎異鈔の意訳と解説』、『智慧の悲しみ』、『日本精神の生理学 : 分冊 第1編』、『人間 : この未知なるもの』、『人間 : この未知なるもの』、『俳諧三千題早引略解 : 明治詩歌発句集』、『パストゥールの審判 : 人類の大恩人の犯罪』、『非常時日本の同胞に愬ふ』、『非常時認識と青年の覚悟』、『非常時の認識と青年の覚悟』、『豹 : 詩集』、『不思議な世界 : 科学は無双原理世界観に近づきつゝあり』、『物價對策としての利潤統制』、『弁述名体鈔とその解説』、『報恩講式講話』、『夕日岡月次集』、『類題新竹集』(上、中、下)、『蓮如上人』、『露語発音講話』、『ロシヤ語発音五時間』、『ロシヤ語発音学』
*11:『馬術競技』、『碧玲瓏句集』。提供者は「国立国会図書館電子図書館課_201」となっている。
*12:跋を寄せている長谷川龍衛を「著作者等の氏名」とする裁定を受けている(裁定データベースでの通番250-002116)。今回、保護期間満了に変更されたということは、国立国会図書館は長谷川龍衛の没年を把握したのだろうが、国立国会図書館典拠データ検索・提供サービスでは、長谷川龍衛の没年情報は提供されていない(10月1日現在)。
*13:国立国会図書館による報告書「インターネット提供に対する出版社の申出への対応について」 p.17より
*14:『校正万葉集通解』([5]、[14]、[15]、[18])、『三國志65卷』([1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、[13]、[14])、『前漢書 100卷 附考證』([1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]、[13]、[14]、[15]、[16]、[17]、[18]、[19]、[20]、[21]、[22]、[23]、[24]、[25]、[26]、[27]、[28]、[29]、[30]、[31]、[32])、『平定粤匪紀略18卷附記4卷』([1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8])、『平定粤匪紀略18卷附記4卷』([1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7])
*15:『1年の学習』、『5年の科学』、『5年の学習』、『ぎんのすず』、『銀の鈴』、『ぎんのすず. 三年の教育誌』、『月刊のらくろ』、『高校コース』、『高二時代』、『こどものとも』、『小学一年』、『小学一年生』、『小学二年』、『小学二年生』、『小学三年』、『小学三年の学習』、『小学三年生』、『小学五年』、『小学五年の学習』、『小学五年生』、『小学館の絵本』、『小学館の幼稚園』の22誌。
*16:提供者は「デジタル化資料(モージャー氏撮影写真資料)」となっている。
*17:リサーチ・ナビの資料説明(更新日:2017年9月5日)では「モージャー(Rovert V. Mosier)氏」とあるが、「Robert V. Mosier」氏であろうか。ツイート。