国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年12月)
「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第19号。2016年になったが、今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)公開範囲の変動を追ってみた。
国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2015年12月の変動
NDLデジコレのメタデータについて、2015年12月1日から2015年12月31日*1までに変更のあったレコードは8,825件であった*2。
11月末時点のデータにおいては、「資料種別」*3が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*4に「インターネット公開」を含むものは350,487件であったが、12月31日までの更新を適用したデータにおいては350,547件となっており、60件増加している。
資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 11月末 | 12月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 7952 | 7988 | +36 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 | 48903 | 48902 | -1 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 | 42 | 42 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2015/02/09 | 3 | 3 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 | 34894 | 34896 | +2 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 | 23 | 23 | 0 |
インターネット公開(保護期間満了) | 258670 | 258693 | +23 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 503141 | 503093 | -48 |
館内公開 | 65976 | 65964 | -12 |
(総計) | 919604 | 919604 | 0 |
(内、インターネット公開分合計) | 350487 | 350547 | +60 |
さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。
12月末 | 総計 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
許諾 | 裁定 2012/03/01 | 保護期間満了 | 館内公開 | |||
11月末 | 裁定 2010/12/27 |
1*5 | 1 | |||
裁定 2012/03/01 |
2*6 | 1*7 | 3 | |||
保護期間満了 | 13*8 | 13 | ||||
図書館送信 | 30*9 | 4*10 | 14*11 | 48 | ||
館内公開 | 4*12 | 1*13 | 20*14 | 25 | ||
総計 | 36 | 5 | 36 | 13 | 90 | |
図書館送信から保護期間満了へ
2015年1月から5月にかけては、2015年にパブリックドメイン入りした図書について、インターネット公開(保護期間満了)へ変更されるものが多数見られた。その後は、著作権保護期間が2014年末で満了した図書について、まとまってインターネット公開(保護期間満了)に変更される動きは見られなかったが*15、12月には次の複数の図書が図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された。
2016年からパブリックドメインとなった図書(谷崎潤一郎や江戸川乱歩などの作品)が今後インターネット公開されていくかについては、来月以降の記事で確認する*16。
また、11月は名取春仙の役者絵版画集3件が保護期間満了へと変更されたが、12月は月岡耕漁の能楽画集3件が保護期間満了へと変更された。
国立国会図書館では『能樂圖繪』の前編 上、前編 下、後編 上、後編 下のみを所蔵しているようだが(このうち、後編 下はマイクロからの白黒デジタル化)、ピッツバーグ大学図書館デジタルコレクションでは続編を含む5帖がカラーで閲覧できる。
文化庁長官裁定による公開資料の利用期限
佐藤久美子「資料デジタル化・公開に伴う権利処理」によると、国立国会図書館の過去の裁定申請は、時期により3つのグループに分かれるそうだ。
同資料(p.70)に記載されたグループ分け(および裁定有効期間)と、文化庁の「過去の裁定実績(平成27年3月4日現在)」に掲載された裁定年月日を対応させると、次のようになるだろう*17。
グループ① | グループ② | グループ③ | ||
---|---|---|---|---|
裁定 | 有効期間 | 2005/04/18 - 2010/04/17 | 2006/01/23 - 2011/01/22 | 2012/05/01 - 2017/04/30 |
裁定年月日 | 2005/04/18 | 2006/01/23 | 2012/03/01 | |
再裁定 | 有効期間 | 2010/04/18 - 2015/04/17 | 2011/01/23 - 2016/01/22 | |
裁定年月日 | 2009/12/18 | 2010/12/27 | ||
再々裁定 | 有効期間 | 2015/04/18 - 2024/04/17 | 2016/01/23 - 2018/01/22 | |
裁定年月日 | 2015/02/09 | 未掲載 |
以前の記事で、「裁定年月日: 2009/12/18」の資料(グループ①の再裁定に相当)の利用期間は2015年1月の時点で満了しているのではないかと述べていたが、これは勘違いであった。
「裁定年月日: 2010/12/27」の資料(グループ②の再裁定に相当)については、2016年1月22日の有効期間満了に向けて、再々裁定の手続きが取られているようだ。利用期間は2年となっているが、なぜ今回は短めにしたのだろうか*18。
古典籍資料の公開範囲変更
資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 11月末 | 12月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 48 | 48 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 | 13 | 13 | 0 |
インターネット公開(保護期間満了) | 69332 | 69356 | +24 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 17663 | 17662 | -1 |
館内公開 | 165 | 142 | -23 |
(総計) | 87221 | 87221 | 0 |
(内、インターネット公開分合計) | 69393 | 69417 | +24 |
さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。
「著作権に関する情報」の変動 (11月末 → 12月末) | 件数 | 注 |
---|---|---|
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) | 1 | *19 |
館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) | 23 | *20 |
2015年1月22日付けで図書館送信から館内限定に変更されていた『資治通鑑目録30卷』10件、『重刊救荒補遺書2卷』2件、『春暉堂叢書』11件が、12月7日付けでインターネット公開(保護期間満了)として返ってきている。
「災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ」に全文検索機能
12月7日に公開された『国立国会図書館年報 平成26年度』によると、「平成26年度補正予算(第1号)において、災害対応力強化の観点から当館所蔵資料のデジタル化及びテキスト化機能・全文検索機能の開発に係る経費が計上され、デジタル化作業等を進めています。」(p.122、強調は引用者)とのことである。
実際、「随意契約に係る情報の公表(物品役務等)」には以下の役務が掲載されていた。
物品役務等の名称及び数量 | 契約を締結した日 | 契約の相手方の商号又は名称及び住所 | 契約金額 |
---|---|---|---|
国立国会図書館全文検索システムのアーキテクチャ設計支援作業 | 平成27年9月17日 | 株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング 東京都港区麻布台2-3-5 |
69,984,000円 |
以前の記事で取り上げた際には、「知的財産推進計画2015」の工程表にいう「平成26年度補正予算(第1号)による、災害対応力強化に資する資料のデジタル化を実施する。また、デジタル化データを活用した検索機能の拡張を進める。」(項目番号114)の後段は、NDLデジコレの書籍等デジタル化データ全般を対象とするものと捉えていたが、実際には前段で述べている災害対応力強化に資する資料のデジタル化データを対象とした記述であったようだ。
今後のデジタル化予定
12月18日付けで国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用停止について」が更新された。
デジタル化作業対象資料一覧(平成27年12月18日現在)
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.htmlより抜粋
資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用停止期間(予定) 和図書 (1)東京本館所蔵の昭和62年末までに整理されたものの一部
- 請求記号が以下で始まるものの一部 026〜921、AZ-1311〜AZ-1792、DT8〜DT161、EG77、GC、M91、M93、ME
- 請求記号がUL又はUPで始まる当館刊行物の一部
約45,000冊 平成27年7月中旬〜平成28年4月末(予定) (3)請求記号がY95、Y111、Y991で始まる原子炉設置(変更)許可申請書の一部 約260冊 更新前(平成27年9月4日現在)の内容と比較すると、「災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ」に関する以下の点が変化している。
- 和図書
- 和雑誌及び洋雑誌
- (4)国内刊行学会誌・紀要類の一部
- 関西館所管の洋雑誌が、7タイトルから8タイトルに変更された。対象タイトルリストは変更なし(→訂正:2015年5月22日時点のリストと比較すると、『学術講演会論文集』(東京 : 日本リモートセンシング学会)がリストから外れ、洋雜誌『Geophysical Magazine』(Tokyo : Japan Meteorological Agency)がリストに加わっていた)。
国立国会図書館分類表(NDLC)によると、請求記号:DT8〜DT161で始まるものは、統計資料解説書、統計組織と統計機構、総合的統計資料に分類される資料のようだ。
*1:国立国会図書館サーチのメンテナンスに伴うデータ更新停止により、2015年12月26日までの更新データとなっている。
*2:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。
*3:dcndl:materialType
*4:dcterms:rights
*6:『現代庭園図説』、『文化講演撰集 大正15年3月29日号』
*8:論文集、図集、講演集、報告集などの集合著作物。
*9:『神に聴く時』、『教育上の常識』、『財界恐慌論』、『支那視察談/滿蒙視察談 : 昭和二年十一月十五日於貴族院議長官舎』、『財界恐慌論』、『大阪心学の開祖中井利安の事蹟』、『桃源遺事 : 水戸光圀正伝』、『義公行実 : 水戸光圀正伝』、『恋の手紙 : 他12篇』、『純粋小説全集 第10巻』、『罌粟はなぜ紅い』、『雌雄』、『オペラ館サクラ座』、『新進傑作小説全集 第15巻 (中条百合子集・宇野千代集)』、『ひとの男 : 外三篇』、『宗教教育研究叢書 第1編』、『バーバンクと植物品種の創造』、『耶蘇の社会訓』、『朝祷』、『中央卸売市場当面の問題と対策』、『還暦に誌す』、『A handbook of English grammar; : Specially prepared for use in the preparatory college of Doshisha university』、『オクスフオード・グループ運動』、『らてん・あめりか叢談』、『新南米 : 世界之大宝庫』、『ラテン・アメリカの全貌』、『ブラジル事情』、『春葉集』、『小学読本を基調とせる国語綜説』、『明魂 : 感銘録』。宇野千代(1996年没)の図書7件が含まれている。
*10:『お山の爺さん : 日曜学校童話集』、『救はれた人 日曜学校童話集』、『助けた小鳩 日曜学校童話集』、『聖戦の陣頭に立ちて : 修養団講習会要義』
*11:『Coins of Japan, by Neil Gordon Munro』、『Y夫人の死』、『衣・食・住 : 朝倉文夫随筆集』、『活動写真劇の創作と撮影法』、『荒歳流民救恤圖』、『笑ひの天地 : 佐々木邦集』、『茶会漫録』(第6集、第7集、第8集、第10集)、『日本文学史 第4巻』、『能樂圖繪』(前編 上、前編 下、後編 上)
*12:『絵と標語作業教本』(工業一般篇、旋盤篇、塗装篇、鋳物篇)
*14:『山崎大合戰』(上、中、下)、『周礼』(1、2、3、4、5、6、7)、『春秋左氏伝校本 : 30巻』(一、二、三、四、五、六)、『殉難遺草』、『順正書院記并詩 順正書院記并詩』、『小山画譜』(上、下)
*15:2015年7月に図書館送信から保護期間満了へと変更された、柘植あい『安産と育児のしをり』などのように、散発的は変更は見られた。
*16:NDLデジコレでは、例えば2013年からパブリックドメインとなった吉川英治の作品でも、『三国志』などは今もインターネット公開されていない。谷崎や乱歩などについても、現在も商業的に入手可能な有名作品については、「商業出版への影響に対する考慮」から今後もインターネット公開されないかもしれない(もちろん、表紙や挿絵の著作権状態が不明もしくは保護期間内であってインターネット公開にならないものもあるだろう)。とは言え、著作権保護期間が満了した資料で、街の書店や図書館では見ることができないようなものについては、インターネット公開が進められるのではないかと期待している。
*17:文化庁の「過去の裁定実績」で利用方法が「ネット配信」とのみ記載されているものも、利用者は国立国会図書館であることが分かった。
*18:著作者等の人数は26,899名となっており、それだけ大人数の著作権保護期間が2年で満了する見込みと判明しているとも考えにくい。仮にそうだとしても著作権保護期間自体が延長されてしまうと……。
*20:『資治通鑑目録30卷』([1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10])、『重刊救荒補遺書2卷』([1]、[2])、『春暉堂叢書』(第1册、第2册、第3册、第4册、第5册、第6册、第7册、第8册、第9册、第10册、第11册)
*21:大場利康「国立国会図書館におけるデジタルアーカイブ事業のこれまでとこれから」では、「防災関連の学術・官庁出版物を中心に全文検索のためのテキスト化に取り組む」(p.26)としている。