国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2015年10月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第17号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2015年10月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2015年10月1日から2015年10月31日までに変更のあったレコードは27,525件であった*1

9月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは350,507件であったが、10月31日までの更新を適用したデータにおいては350,515件となっており、8件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 9月末 10月末
インターネット公開(許諾) 7952 7953 +1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 48904 48904 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 42 42 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2015/02/09 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 34895 34896 +1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 23 23 0
インターネット公開(保護期間満了) 258688 258694 +6
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 503148 503148 0
館内公開 65955 65941 -14
(総計) 919610 919604 -6
(内、インターネット公開分合計) 350507 350515 +8

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

10月末 総計
許諾 裁定
2012/03/01
保護期間満了 図書館送信 (書誌情報削除)
9月末 保護期間満了 1*4 6*5 7
図書館送信 1*6 1
館内公開 13*7 1*8 14
総計 1 1 13 1 6 22

この表は、例えば、9月末時点では館内公開であった図書で、10月末にはインターネット公開(保護期間満了)になっているものが13件あると読んでほしい。

館内公開から保護期間満了へ

館内公開から保護期間満了へと変更された図書は、1860年から1869年までの時期のものであった。

このうち、『大学 : 和字旁訓』(第1冊PART II.)は、J.J.ホフマン編による1864年の出版物で(出版者はオランダのE.J.ブリル社)、和文活字(漢字・片仮名)が興味深い。ホフマンによる“Chinesche drukletters vervaardigd in Nederland”(1864年)には、サンプルテキストとして、この『大学 : 和字旁訓』の一部版面と“Winkelgesprekken in het Hollandsch, Engelsch en Japansch”(1861年)の一部版面、および活字見本が掲載されている。

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 9月末 10月末
インターネット公開(許諾) 48 48 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 13 13 0
インターネット公開(保護期間満了) 69175 69247 +72
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17665 17665 0
館内公開 321 248 -73
(総計) 87222 87221 -1
(内、インターネット公開分合計) 69236 69308 +72

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (9月末 → 10月末) 件数
館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 73 *9
インターネット公開(保護期間満了) → 書誌情報削除 1 *10

1月22日付けで図書館送信から館内限定に変更されていた『天中記60卷』60件、『中西紀事24卷』12件、『太上感應篇1卷』1件が、10月12日付けでインターネット公開(保護期間満了)として返ってきている。

10月26日付けで書誌情報が削除された『名勝八景』については、削除前に記載されていたNDLBibIDに基づいてNDL-OPACで検索すると、この書誌情報がヒットし、7枚からなる錦絵であると分かる。それら7枚の錦絵は10月末時点のメタデータにも存在し、現に閲覧可能なので、資料公開が抹消されたわけではなさそうだ(『名勝八景』の「【全冊まとめ】」に相当する書誌情報が削除されたのかもしれない)。

今後のデジタル化予定

9月4日、国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用停止について」が更新され、以下のカセットテープ、ソノシート、脚本がデジタル化作業対象に加わった。


デジタル化作業対象資料一覧(平成27年9月4日現在)
資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用停止期間(予定)
カセットテープ (9)請求記号がYL31で始まるカセットテープ 約220件 平成27年9月16日〜平成28年4月末(予定)
ソノシート (10)請求記号がYMF、YMG、YMH等で始まるソノシート 約950件
脚本 (11)請求記号がY851で始まる脚本 約3,000冊
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.htmlより抜粋

これらは、以前の記事で取り上げた入札公告に対応する作業と思われる。

ソノシートについては、請求記号がYMF(フィルムレコード 音楽)*11、YMG(フィルムレコード 語学)、YMH(フィルムレコード その他)などで始まるものが対象となっている*12

上記のデジタル化作業対象資料一覧更新に先立ち、リサーチ・ナビの調べ方案内「ソノシート」が更新されており、今回の作業対象となる請求記号で始まる資料について解説されている。

国立国会図書館が所蔵するソノシート約2,700点(2013年12月末現在)*13のうち、デジタル化試行調査によって媒体変換が行われた50点を除くと、残りの資料は(非接触式レコードプレーヤーではなく)針式レコードプレーヤーによる再生で提供されているらしい*14

今回のデジタル化によって、その恐ろしい状況の改善が進むが、デジタル化完了率からすると、今後も継続したデジタル化が必要ということだろう。

一般競争入札公告にみる電子化予定

国立国会図書館一般競争入札公告を見ると、デジタル化に関わる次の2件が掲載されている。


通番2は、日本点字図書館「アクセシブルな電子書籍製作実験プロジェクト」に関するものだろうか*15

通番6からは、日本占領関係資料について、新たな資料群(国際検察局文書)の電子化が進められることが分かる。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:国民学校薙刀精義

*5:紀伊国名所図会』(後編 1之巻 若山補遺後編 2之巻 海部郡在田郡後編 3之巻 在田郡後編 4之巻 在田郡海部郡後編 5之巻 日高郡後編 6之巻 日高郡)。なお、同名の資料6件(後編(一之巻)後編(二之巻)後編(三之巻)後編(四之巻)後編(五之巻)後編(六之巻))は現在も閲覧できる。

*6:The mineral springs of Japan; with tables of analyses, radio activity, notes on prominent spas and list of seaside resorts and summer retreats

*7:喪祭式』、『増訂史記評林』(首巻目録他巻7)、『泰清公遺事』、『大学 : 和字旁訓』(第1冊PART II.)、『団欒集 乾』、『筑紫遺愛集』(3,45,67,89,1011,12

*8:[赤坂離宮写真集]〔1〕

*9:太上感應篇1卷』、『中西紀事24卷』([1][2][3][4][5][6])、『中西紀事24卷』([1][2][3][4][5][6])、『天中記60卷』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31][32][33][34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44][45][46][47][48][49][50][51][52][53][54][55][56][57][58][59][60]

*10:名勝八景

*11:請求記号がYMFで始まるソノシートとして、国立国会図書館には、tofubeats朝が来るまで終わる事の無いダンスを』(2013年)が所蔵されている。さすがにこれが電子化されることはないだろうと思うが、NDL-OPACで確認すると「利用上の注意」が「作業中」になっている。電子化しているのだろうか。

*12:カメラがシャッターを切るときの音をひたすら収録した「モードラ・オートワインダー音パレード」のソノシートが付いていたという雑誌『カメラレビュー』(第3号)は、機会があれば聴いてみたいものだが、請求記号Z11-904なので、今回の電子化では対象外だろう。

*13:国立国会図書館の録音・映像資料−提供と保存について−」p.3による。

*14:ソノシートはレーザーが透過してしまって非接触式では再生できないのだろうが、針式での再生とは恐ろしい。

*15:一般競争入札とはいえ、日本IBM以外が入る余地などあるのだろうかと思うが。