国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2016年4月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第23号。今月も国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2016年4月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2016年4月1日から2016年4月30日までに変更のあったレコードは82,422件であった*1

3月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは350,801件であったが、4月30日までの更新を適用したデータにおいては350,917件となっており、116件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 3月末 4月末
インターネット公開(許諾) 7677 7724 +47
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 33929 33923 -6
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01; 2015/11/10 36 36 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 21 21 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 44986 44986 0
インターネット公開(保護期間満了) 264149 264224 +75
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 506706 506507 -199
館内公開 62973 63056 +83
(総計) 920480 920480 0
(内、インターネット公開分合計) 350801 350917 +116

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

4月末 総計
許諾 保護期間満了 館内公開
3月末 裁定
2012/03/01
2*4 4*5 6
保護期間満了 79*6 79
図書館送信 45*7 154*8 199
総計 47 154 83 284

この表は、例えば、3月末時点では図書館送信であった図書で、4月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが154件あると読んでほしい。

パブリックドメイン図書の増加

3月の公開範囲変更に引き続き、4月もパブリックドメイン図書の増加が見られた。

図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1965年に没し、2016年からパブリックドメインとなったものが含まれている。

ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)の中から、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。

小説家・詩人・翻訳家など

河井酔茗の著作については、保護期間満了に変更された上記の図書に加え、『日本立志物語』が許諾に基づく公開に変更されている*9

他に、小山勝清(小説家)などの著作物も公開された。

美術家

『ナカニシヤ日本一の画噺』シリーズは、全35冊のうち国立国会図書館で所蔵している8冊(明治44年)がインターネット公開されている*10

どの図書も、扉には岡野栄・小林鍾吉・杉浦非水の名前が挙げられており*11、デジタル化された画像からは誰がどの図書の挿絵を担当したのかは分からないものの*12、いずれの図書のデザインにも驚かされる。

上記の8冊の中から、試しに『ブンブクチヤガマ』を見てみよう。

まず表紙をめくると、これが

ナカニシヤ日本一の画噺. ブンブクチヤガマ

こうじゃ

ナカニシヤ日本一の画噺. ブンブクチヤガマ

カニシヤ日本一の画噺. ブンブクチヤガマ
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

『ブンブクチヤガマ』のような笑い話は別として、多くのお話は、子ども向けにマイルドにしてあったりは全くしないので、その点でもなかなか衝撃的である(『サルカニカッセン』の最終ページなど、ちょっとやり過ぎではと思わないでもないが、画像の引用はしないでおこう)。

楽家

東京市童謡』には、土川五郎による振り付けも。

東京市童謡

東京市童謡
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

学者・宗教家など

他に、伊藤康安(仏教学者)、高橋正雄金光教教監)などの著作物も公開された。

政治家・官僚・軍人・実業家など

近藤栄蔵の『プロレタリア政治学』『失業反対闘争「方針書」』『無産党出直すべし』は、発禁処分を受けており、内務省による禁止の印や「安寧禁止」の印、「禁安」の手書き文字(帝国図書館の書架番号)などが見られる。

その他

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 3月末 4月末
インターネット公開(保護期間満了) 70634 70634 0
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17792 17792 0
館内公開 4 4 0
(総計) 88430 88430 0
(内、インターネット公開分合計) 70634 70634 0

今月は変化なしであった。

資料デジタル化基本計画2016-2020

4月下旬、国立国会図書館ウェブサイトに「資料デジタル化基本計画2016-2020(平成28年3月29日策定)」が掲載された。

平成25年5月に策定された「資料デジタル化基本計画」と「国立国会図書館の資料デジタル化に係る基本方針」のうち、ウェブサイトに掲載されていた「国立国会図書館の資料デジタル化に係る基本方針(平成25年5月27日策定)」と比べると、大分踏み込んだ内容を知ることができる。

これまでこのシリーズ記事で取り上げてきた内容と、その流れの延長線上にある内容などが、公式に整理されている。今後のデジタル化に興味をもって外野から眺めている方には押さえておくべき資料だろう。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:三池炭鉱と大牟田市写真帳』、『三井三池各事業所写真帖

*5:軍国の母の姿 第1輯』、『傑作鈔 : 明治より大正へ』、『女子経済のおもかげ : 女子経済専門学校要覧・同附属高等女学校要覧 昭和15年度版』、『創立二十周年記念論文集

*6:講演集、報告集等の集合著作物など。他に、「最後の忍者」こと藤田西湖(甲賀流忍術第14世)の『忍術とは?』も館内限定に変更された。以前の記事で、「著作者が1965年に没し、2016年からパブリックドメインとなったもの」を列挙した後、それらとは分けて「他に、以下の図書なども保護期間満了として公開されている」として『忍術とは?』を取り上げたので、勘の良い方なら気付かれたかもしれないが、藤田西湖は保護期間内(1966年1月4日没)である。

*7:赤穂不忠録』、『恵信尼公絵詞伝』、『外遊句稿』、『火中の書』、『彼女の運命 前編』、『観音巡礼』、『曲線設定便覧』、『古人を尋ねて』、『小夜子』(前編後編)、『しひのは集 : 俳句習作廿一篇』、『史学概論』、『耳舌[チョウ]談 : 随筆』、『新奇談クラブ 後編』、『新選井泉水句集』、『新編太平記 続』、『身辺の書』、『新約聖書註解 第6 (ロマ書)』、『鈴蘭の咲く頃』、『政治の理論』、『井泉水句集』、『井泉水随談』、『青天の書』、『第一の扉』、『第二の扉』、『旅人芭蕉』、『旅人芭蕉 続』、『知命の書』、『東西南北』、『日米問題』、『日本立志物語』、『人間道と句作道』、『俳句に入る道』、『ひぐらし集』、『雖為百姓不仕二君 : お百姓仁義』、『ファッシズムの社会観』、『遍路日記』、『放送芭蕉を語る』、『頬紅』、『梵行品 : 句集』、『舞扇 : 小説』、『枕の草紙 : 口訳新註』、『山ぎり集』、『霊光録』、『私の首

*8:紫羅欄花 : 詩集』、『或る集団』、『海の王国』、『音楽講座 第1回第4輯 (声楽の訓練)』、『改正税法並に関係命令に就て』、『改正税法に就て』、『改正税法の解説 : 法人関係』、『解放群書 第19編』、『科学戦争』、『科学と文化』、『科学と民族』、『華術』(規矩之巻中級之巻養法之巻)、『間花集 : 詩集』、『漢籍国字解全書 : 先哲遺著 第5巻』、『漢籍国字解全書 : 先哲遺著』(第1巻第2巻第3巻第4巻第5巻第六巻第七巻第八巻第九巻第十巻第十一巻第十二巻第十三巻第十四巻第15巻 春秋左氏伝国字解 下巻第17巻 楚辞師説第18巻 管子国字解 上巻第19巻 管子国字解 下巻第20巻 墨子国字解 上巻第21巻 墨子国字解 下巻第22巻 荀子国字解 上巻第23巻 荀子国字解 下巻第24巻 韓非子国字解 上巻第25巻 韓非子国字解 下巻)、『漢籍國字解全書 : 先哲遺著 第11巻』、『漢籍國字解全書 : 先哲遺著』(第1巻第2巻第3巻第4巻第5巻第6巻第7巻第8巻第9巻第10巻第11巻第12巻)、『漢籍國字解全書 : 先哲遺著追補』(第13巻第14巻第15巻第16巻第17巻第18巻第19巻第20巻第21巻第22巻第23巻第24巻第25巻第26巻第27巻第30巻)、『喫茶去』、『教案兼用手工科教授細目』、『教育行政撮要』、『教育行政撮要』、『近世日本生理学思想史論』、『現代紀行文抄 : 中等教育補充小読本』、『寂しき夜の歌』、『塹壕のある顔』、『死後のために』、『市町村立小学校教育費問題精義』、『失業反対闘争「方針書」』、『しぼりの図案』、『社会教化と宗教』、『社会保険概論』、『社会保険概論』、『宗教法案に就て』、『銃剣は耕す』、『手工学習原論と新設備』、『春草譜』、『小学生の歌』(1234)、『小学校に於ける手工設備の実際』、『将軍乃木』、『少年科学未来戦』、『新支那読本』、『尋一の手工』、『尋二の手工』、『尋三の図画』、『尋四の図画』、『尋五私の手工教育指導』、『尋六私の手工教育指導』、『新釈沢庵和尚法語』、『尋常小学教案兼用手工科教授細目』(第1学年用第2学年用第3学年用)、『信心とおかげ』、『新戦場』、『新日本と思想問題』、『新編将軍乃木』、『図画学習原論』、『禅と社会』、『禅庵閑語』、『沢庵和尚の人と思想』、『戦はこれからだ』、『旅・土・人』、『茶会漫録』(第9集第11集第12集附録帰郷雑記)、『東京市童謡』、『ナカニシヤ日本一の画噺』(イッスンボウシカチカチヤマコブトリシタキリズズメブンブクチヤガマモモタラウハナサカヂヂイサルカニカッセン)、『南窓』、『南窗集』、『肉弾終篇流血の丘』、『日本古史典の再吟味』、『熱球三十年』、『巴里の憂鬱』、『人・乃木将軍』、『プロレタリア政治学』、『ベースボール』(攻撃篇内野篇外野及び練習篇)、『ペートル』、『北辺行 : 樺太北海道めぐり』、『保護随想』、『無産党出直すべし』、『村に帰る』、『木喰五行上人略伝』、『野球清談』、『やさしくかける学校と家庭略画集』、『流血の丘』、『労働問題早わかり』、『我が日・我が夢 : 一名…戀と夢と』、『私の手工教育指導』(尋1尋3尋4

*9:口絵挿画の高畠華宵(1966年没)が著作権保護期間内であるため。

*10:明治45年8月発行の『いろはスケッチ子供四十八景』に掲載されている広告では、「ナカニシヤ 日本一の画噺 ささなみ作 二十五冊 出来ました」とあり、大正2年9月発行の『子供の対話』掲載の広告時点でも「全二十五冊」「二十五冊一揃」だったようだ。25冊のリストのうち、昔話を題材とした「(8)もゝたらう」から「(15)ぶんぶくちやがま」までの8冊が、出版元の中西屋書店より帝国図書館に寄贈されたようだ。全35冊の中には、昔話として他に『ウラシマ』があるが、こちらは刊行時期が異なったため寄贈されなかったのだろうか。

*11:このシリーズでは、明治26年出版法で「文書図画ノ末尾ニ」記載することとされた発行者の氏名、住所、発行の年月日、印刷者の氏名、住所、印刷の年月日が、扉に記載されている。

*12:『ナカニシヤ日本一の画噺』の背には、担当した画家の名前が記されていたようだが、背はデジタル画像化されていない。全35冊を所蔵している大阪府立中央図書館国際児童文学館OPACによれば、『イッスンボウシ』(巌谷小波 著、杉浦非水 画)、『カチカチヤマ』(巌谷小波 著、岡野栄 画、小林鍾吉 画、杉浦非水 画)、『コブトリ』(巌谷小波 著、小林鍾吉 画)、『シタキリズズメ』(巌谷小波 著、小林鍾吉 画)、『ブンブクチヤガマ』(巌谷小波 著、岡野栄 画)、『モモタラウ』(巌谷小波 著、小林鍾吉 画)、『ハナサカヂヂイ』(巌谷小波 著、杉浦非水 画)、『サルカニカッセン』(巌谷小波 著、小林鍾吉 画)であるとのこと。ただし、『カチカチヤマ』については、他の書誌情報によれば、巌谷小波 著、岡野栄 画となっている。