国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動
先日、著作権調査漏れと思われる資料について国会図書館(以下、NDL)にメールでお知らせしたら速攻で公開停止になったという記事があった。
「近デジ資料が後日閲覧できなくなった」という話は以前から目にしていたが*1、人知れずインターネット公開から消えていく資料とは逆に、著作権保護期間が満了していることを指摘してインターネット公開になる資料はあるのだろうか。
公開範囲変更の具体的な理由は追えないが、ここ1か月ほどの国立国会図書館デジタルコレクション(以下、国デコ)公開範囲の変動を追ってみた。
国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2014年6月の変動
国デコのメタデータは日々更新されており、2014年6月1日から2014年6月30日までに変更のあったレコードは244,747件に上る*2。
今年5月下旬時点のデータにおいては、「著作権に関する情報」(dcterms:rights)に「インターネット公開」を含み、「資料種別」(dcndl:materialType)が「図書」であるものは349,969件であったが、6月30日までの更新を適用したデータにおいては349,930件となっており、39件減少している。
39件減少の内訳は以下の通りであった(41減2増)。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 5月下旬 | 6月末 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(許諾) | 6717 | 6717 | 0 |
インターネット公開(裁定)67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 | 1 | 1 | 0 |
インターネット公開(裁定)67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 | 3 | 3 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 | 1 | 1 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18; 2010/12/27 | 32 | 32 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 | 174 | 173 | -1 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/26 | 1 | 1 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27; 2012/03/01 | 29 | 29 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 | 50470 | 50456 | -14 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 | 33851 | 33848 | -3 |
インターネット公開(保護期間満了) | 1977 | 1979 | +2 |
インターネット公開(保護期間満了) | 2 | 2 | 0 |
インターネット公開(保護期間満了) | 256711 | 256688 | -23 |
インターネット公開でなくなった資料はどうなったのかなど、資料種別が「図書」であるものについて、さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。
著作権に関する情報 (dcterms:rights)の変動 (5月下旬 → 6月末) | 件数 | 注 |
---|---|---|
インターネット公開(保護期間満了) → 館内公開 | 38 | *3 |
インターネット公開(保護期間満了) → 書誌情報削除 | 3 | (後述) |
インターネット公開(許諾) → 館内公開 | 1 | *4 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 → 館内公開 | 1 | *5 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 → インターネット公開(保護期間満了) | 14 | *6 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 → インターネット公開(保護期間満了) | 2 | *7 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 → インターネット公開(許諾) | 1 | *8 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) | 1 | *9 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → 館内公開 | 8 | *10 |
館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) | 1 | *11 |
新規 インターネット公開(保護期間満了) | 2 | *12 |
新規 館内公開 | 5 | *13 |
裁定から館内公開や許諾に変化した資料もある。後日、著作権者と連絡が付いたケースだろうか。許諾から館内公開に変化した資料というものもある。
この表を、各「著作権に関する情報」状態からの転出/転入(5月下旬→6月末)としてまとめると次の表のようになる。
著作権に関する情報 (dcterms:rights) | 転出 | 転入 | 差 |
---|---|---|---|
インターネット公開(保護期間満了) | 0 | 2 | +2 |
インターネット公開(保護期間満了) | 41 | 18 | -23 |
インターネット公開(許諾) | 1 | 1 | 0 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2009/12/18 | 1 | 0 | -1 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2010/12/27 | 14 | 0 | -14 |
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 | 3 | 0 | -3 |
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 | 9 | 0 | -9 |
館内公開 | 1 | 53 | +52 |
インターネット公開(保護期間満了)に関して言えば、インターネット公開(保護期間満了)扱いでなくなった資料が41件あったものの、新たにインターネット公開(保護期間満了)扱いになった資料も20件あったことが分かる。
「インターネット公開(保護期間満了)だと思っていたら、いつの間にかそうではなくなっていた」という資料が41件あったわけで、インプレスR&Dの「NDL所蔵古書POD」など、NDLのコンテンツを二次利用する事業者は、独自に著作権確認をしているだろうか。
消えた書誌情報
奇妙なのは、以前は「インターネット公開(保護期間満了)」であったものの、現在は「館内公開」ですらなく、書誌情報が削除されている資料(同一タイトルの上中下巻で3件)である。その資料は昭和4年に発刊されたもので(著者の生没年は1875-1953年)、1970年および1980年に別の出版社から復刻版が刊行されている。そのあたりのごにょごにょがあったのだろうか。
落ち穂拾い
国会図書館サーチから取得したデータの二次利用について
前回の記事で、「NDLサーチが提供するOAI-PMHで国立国会図書館デジタルコレクションのメタデータ(書誌情報)を取得した場合、得られた書誌情報は自由に二次利用して良いのだろうか」との疑問を述べたところ、橋本さん([twitter:@yuta1984])がNDLに問い合わせをしてくださったので、以下に引用する。
OAI-PMHで刈り取ったメタデータを自前のOPACに投入して公開するケースを想定しての回答のような気がしないでもないが、どうなのだろう。
国デコメタデータの活用
国デコのメタデータを利用して、内田さん([twitter:@uakira2])のブログで6月25日以降さっそくいくつもの指摘が入っている。
「翻デジ」を利用した内田さんの「ゲタリスト・ポータル構想」と「ゲタリスト・ポータル」はもう走り始めている*14。
*1:『大正新脩大蔵経』や『南伝大蔵経』のように耳目を集めたケースもある。
*2:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。
*3:この中には冒頭に挙げた鏑木清方が口絵を描いている資料や、明治時代の某有名少女小説などが含まれる。
*6:『大阪五行新版絵入義太夫』10件、『日清戦争絵巻』2件、『徳川光圀』および『早繰辞書』。
*8:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1455131
*10:8件のうち7件は、江戸川乱歩の少年探偵団関係であった。
*11:『Treasure Island / by Robert Louis Stevenson ; with illustrations by Edmund Dulac』
*12:『江戸小本暦 明治2年』と『江戸小本暦 明治4年』
*13:プランゲ文庫の資料5件。資料種別が「静止画資料」から「静止画資料」「図書」に変更され、集計対象に含まれるようになったことによる増加。公開自体は、5月下旬時点で既に館内公開されており、「新規公開」ではない。
*14:「ゲタリスト」とは「〓のリスト」のこと。