国立国会図書館デジタルコレクションの公開範囲変動(2016年11月)

「月刊NDLデジコレメタデータWatch」第30号。「3号雑誌」ならぬ30号まで続けたかと思うと感慨深いが、今回特に企画があるわけでもない。今月も粛々と国立国会図書館デジタルコレクション(以下、NDLデジコレ)の変動を追ってみた。

国立国会図書館デジタルコレクション書誌メタデータ 2016年11月の変動

NDLデジコレのメタデータについて、2016年11月1日から2016年11月30日までに変更のあったレコードは21,954件であった*1

10月末時点のデータにおいては、「資料種別」*2が「図書」であるもののうち、「著作権に関する情報」*3に「インターネット公開」を含むものは352,442件であったが、11月30日までの更新を適用したデータにおいては352,543件となっており、101件増加している。

資料種別が「図書」であるものについて、資料数内訳は以下の通りであった。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 10月末 11月末
インターネット公開(許諾) 9619 9621 2
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01 32868 32867 -1
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2012/03/01; 2015/11/10 19 19 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09 21 21 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/02/09; 2015/11/10 3 3 0
インターネット公開(裁定)著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開裁定年月日: 2015/11/10 42271 42249 -22
インターネット公開(保護期間満了) 267641 267763 +122
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 503115 503014 -101
館内公開 124139 124139 0
(総計) 979696 979696 0
(内、インターネット公開分合計) 352442 352543 +101

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる(表示スペースの都合により、「著作権に関する情報」の設定値を略記した)。

11月末 総計
許諾 保護期間満了
10月末 裁定
2012/03/01
1*4 1
裁定
2015/11/10
22*5 22
図書館送信 2*6 99*7 101
総計 2 122 124
この表は、例えば、10月末時点では図書館送信であった図書で、11月末にはインターネット公開(保護期間満了)に変更されているものが99件あると読んでほしい。

少年文学 苐四編


北村紫山『維新三傑
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

博文館による「少年文学」シリーズの第4編

パブリックドメイン図書の増加

図書館送信からインターネット公開(保護期間満了)へと変更された図書には、著作者が1965年に没し、2016年からパブリックドメインとなったものが含まれている。

ここでは、図書館送信から保護期間満了に変更された図書(新たにインターネットで閲覧できるようになった資料)の中から、いくつか著名な著作者のものについて取り上げる。

小説家・詩人・翻訳家など

他に、志垣寛(教育評論家)、野辺地天馬(児童文学者)などの著作物も公開された。

美術家

他に、嶺田弘(挿絵画家)などの著作物も公開された。

楽家

学者・宗教家など

他に、佐山済(国文学者)、武政太郎(教育心理学者)などの著作物も公開された。

また、今回インターネット公開された戸次貞雄(1965年没)による下掲の発禁資料の表紙には、「安寧禁止可然哉」のスタンプと、検閲官の書き込みが見られる。請求記号が「特501」で始まる接収返還本の1冊である。

皇礼典経妙法華経三宝経の内


皇礼典経妙法華経三宝経の内
(Source: 国立国会図書館デジタルコレクション)

古典籍資料の公開範囲変更

資料種別が「和古書」であるものについて、今月も公開範囲に変動があったか調べてみた。

著作権に関する情報 (dcterms:rights) 10月末 11月末
インターネット公開(許諾) 8 8 0
インターネット公開(保護期間満了) 71173 71205 +32
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 17255 17223 -32
館内公開 4 4 0
(総計) 88440 88440 0
(内、インターネット公開分合計) 71181 71213 +32

さらに「著作権に関する情報」変動の内訳を見てみる。

著作権に関する情報」の変動 (10月末 → 11月末) 件数
国立国会図書館/図書館送信参加館内公開 → インターネット公開(保護期間満了) 32 *8

保護期間満了に変更された『田米知佳画集』は、岡田為恭(冷泉為恭)の襖絵をコロタイプ印刷で複製したもの*9。NDLデジコレで、出版者「便利堂」ないしは「便利堂コロタイプ印刷所」で検索すると、コロタイプ印刷による美しい複製を他にも閲覧できる。

「災害対応力強化のためのデジタルアーカイブ」の全文検索機能

先々月の記事で取り上げたとおり、9月28日付けの「お知らせ」にて、「図書または雑誌として収録している官公庁刊行の資料約2,300点を著作権者のご協力によりインターネット公開しました」とのアナウンスがあった。

同日、国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)のお知らせにて、ひなぎくの新システム公開により、NDLデジコレに収録されている一部資料について本文検索が可能となった旨、アナウンスがあった。この機能は「本文検索機能について」で詳しく紹介されている。

本文を検索できる資料は、国立国会図書館東日本大震災アーカイブから検索できる国立国会図書館デジタルコレクションのコンテンツのうち、著作権者からテキストデータの作成とそのテキストデータを検索に利用することについての許諾が得られたものです。具体的には、震災・防災関係の論文や国・自治体のパンフレット、1960〜1980年代の都道府県の消防計画等、約2,000タイトルです。一部の資料は、テキストデータのスニペット表示(検索キーワードを含む数行を表示したもの)があります。

http://kn.ndl.go.jp/static/textsearch

インターネット公開について著作権者から許諾を得られ、9月28日付けでインターネット公開に変更された旨アナウンスのあった約2,300点の資料に対し、約2,000タイトルについてテキストデータ作成と検索利用への許諾も得ることができたものと思われる(点数とタイトル数で数え方が異なっているため、全て一致しているのか一部分なのかは分からない)。

約2,000タイトルの具体的な内訳は公表されていないが、先月の記事で共有した非公式リスト(インターネット公開対象となった防災関係等資料2,309件)が参考になるだろう。

国立国会図書館によるデジタル化資料の全文検索機能については、長い年月をかけて多くの課題(テキスト化の技術的側面に加え、関係者協議による合意形成等)を乗り越え、ついに機能提供が実現したことを祝したい*10

災害対応力強化に資する資料の全文検索機能について、国立国会図書館はあまり大きく広報していないようだが、公益性の高い内容であり、注目と活用が進むことを願う。

今後のデジタル化予定

11月22日付けで国立国会図書館ウェブサイトの「デジタル化作業に伴う原資料の利用停止について」が更新され、以下の古典籍資料がデジタル化作業対象に加わった。


利用を停止する資料(平成28年11月22日現在)

資料区分 デジタル化対象 対象冊数 利用停止期間(予定)
古典籍 (7) 請求記号が特1000-1〜特1001-4で始まるものの一部等 39点(Excel: 31KB)
約420冊
平成28年12月22日〜平成29年3月末日(予定)
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/unavailable.htmlより抜粋

デジタル化対象リストに挙げられた古典籍資料には、大槻文彦著『東京須覧具』(須覧具=すらんぐ)が含まれている。公開が楽しみな資料の一つだ。

*1:国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMHを利用した。

*2:dcndl:materialType

*3:dcterms:rights

*4:日本大蔵経 第1巻

*5:音画漢語両引便覧』、『開化掌中早引』、『外史訳語』()、『懐中漢語字引大全』、『漢語作文字引大全 : 万民宝典』、『漢語字引集 : 附・諸証文雛形』、『漢語新画引大全』、『漢語新字引』、『漢語続貂』、『近時必携熟語便覧』、『御布告字引 : 傍訓註解 初編』、『御布令新聞漢語必用文明いろは字引』、『自由熟字在 : 画引早引』、『小学字典 : 熟字音訓』、『初学必携大全漢語字書』、『新撰いろは字引大全 : 漢語両通』、『増補漢語字解大全』、『大全数字引 : 以呂波分』、『必携熟字集』()、『布令必要普通漢語解 : 掌中両引

*6:國民常識吾等が普選』、『日本と其使命

*7:Catalogue of the Nanki Bunko』、『Catalogue of the Nanki Bunko』、『青葉の少女は唄ふ』、『天日の子ら : 詩集』、『一寸法師』、『英語第二読本講話 下』、『英語発達史』、『エドガア・アラン・ポウ』、『黄金假面』、『神の救ひ』、『神の救ひ』、『カラマーゾフの世界』、『鑑刀必携』、『紀藩士著述目録』、『吸血鬼』、『近世邦楽年表』(常磐津 富本清元之部(明治45)江戸長唄附大薩摩淨瑠璃の部常盤津・富本・清元の部義太夫節之部)、『近代日本文学大系』(第14巻第18巻第19巻第21巻第23巻第25巻)、『近代日本文学大系』(第13巻 (十返舎一九集)第16巻 (柳亭種彦集)第17巻 (狂文俳文集 再版))、『草に祈る』、『組曲六つの舞踊曲』、『蜘蛛男』、『原子物理学 昭和12年版』、『現代日本文学全集』(第14篇 (泉鏡花集)第15篇 (国木田独歩集)第16篇 (島崎藤村集)第17篇 (田山花袋集)第21篇 (正宗白鳥集)第24篇 (谷崎潤一郎集)第31篇 (菊池寛集)第42篇)、『交声曲海道東征 : 管絃楽総譜』、『高等物理学講話原子物理学』、『高等物理学講話力学』、『皇礼典経妙法華経三宝経の内』、『国姓爺 芝虎の巻』、『古文真宝後集詳解』、『最近の文学と綴り方教育』、『最新英語音声学』、『三十九号室の女 : 長篇探偵小説』、『三十九号室の女 : 長篇探偵小説』、『実習指導ペン画の描き方』、『支那革命外史』、『支那革命外史』、『支那革命外史』、『支那革命外史 : 普及版』、『銃後』、『少年文学 苐四編』、『証明 : 戯曲 [4]』、『女流日記』、『世界百傑伝』(巻1巻2巻4巻6巻8巻12)、『寂寥の眼 : 歌集』、『戦闘機 : 詩集』、『大学の留守 : 詩集』、『大砲の秋』、『為恭逸品集』、『田米知佳画集』、『低学年に於ける遊戯化教育』、『東京暮色』、『独楽吟』、『ナポレオン』、『南葵文庫附属御大礼奉祝紀念館大風琴』、『南山進流声明教典 音譜篇』、『日・英・馬来語会話辞典』、『俳句文芸遠近』、『白髮鬼』、『白髪鬼』、『働くものから見るものへ』、『母は強し』、『春の別れ』、『標準語研究』、『文芸的雑談』、『変態殺人篇』、『真賢木』、『魔術師』、『魔術師』、『ムーン女史小伝』、『盲獣』、『木版画集』、『山田耕作童謡百曲集 : 略符附 第1巻』、『闇の力』、『』、『ラテンの曲げ大意』、『乱歩傑作選集 第9巻 (盲獣)』、『レーニンを見た話 : 他四篇

*8:田米知佳画集』、『欽定四庫全書提要114卷補遺1卷附解題1卷書名索引1卷文溯閣四庫全書提要與總目異同表1卷聚珍版本提要與四庫提要異同表1卷』([1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31]

*9:一部「原色版」の図版があるが、そちらはコロタイプ印刷ではないだろう。

*10:なお、全文テキスト化については、平成21年の著作権法改正および附帯決議を踏まえ、アクセシビリティを確保するため、平成22年度の全文テキスト化実証実験や、平成25年度のOCRによるテキスト化データに基づく音声配信実験、平成27年度の日本点字図書館との共同実験(クラウドソーシングにより作成されたテキスト化データの視覚障害者等への提供)等、さまざまな取り組みがなされてきている。